「範子と文子の驚異の高校生活(ギャグ掌編小説シリーズ・完結)」
範子と文子の三十分一本勝負(ギャグ掌編小説シリーズ・完結)
範子と文子の三十分一本勝負:FIGHT・54
「勝っちゃったわね」
「そうだね、範ちゃん。ワールドカップ予選リーグ……」
放課後の紅恵高校の教室。範子の言葉に、文子はうなずいた。
「で、それなんだけど」
範子は机から身を乗り出した。
「サッカーってどんなルールだったんだっけ?」
文子は椅子から転げ落ちそうになった。
「範ちゃん、知らないの?」
「そ、そりゃあ、知ってるわよ。単に聞いただけじゃない」
「じゃあ、サッカーに関するルールをちょっといってみて」
「え……」
範子は考えるモードに入った。
ぽくぽくぽくぽくちーん、と、昔のアニメ「一休さん」に出てきた効果音が聞こえたような感じを文子は覚えた。
「わかった!」
「ほんと、範ちゃん? というか、普通、サッカーの基本的なルールで悩むなんてこと、ありえないよ、範ちゃん」
「いいじゃない、そんなこと」
「じゃ、サッカーに必要な道具は?」
「ボール!」
「ほかには?」
「……いるの?」
文子は頭を抱えた。
「まったくもう、範ちゃんってば……あれ? そういえば、範ちゃんって、『キャプテン翼』のコミックスを持っていたはずだよね」
「ぎくっ」
文子は、なんともいえぬ目で、範子を見た。
「範ちゃん、それじゃ、サッカーのルールがわからないはずないじゃない。まったくひどいよ。わたしを笑わせようとしたんだろうけど、ちょっと、それはないんじゃないかなあ」
「……ごめん、文子。でも、世の中に、知ってそうで知らないスポーツのルールって、けっこうあるわよね」
「そうだね」
「わたし、『オフサイド』のルールっていうのが、何回聞いてもちょっとよくわからないんだけど。敵陣に伏兵として味方を入れておくのは、戦法の常道のような気がするし」
「常道なのは戦争のときの話でしょう、範ちゃん。たぶん、その作戦が有効すぎて試合がつまらなくなるから入れられたルールじゃないかと思うんだ、わたし」
「そういうものなの?」
「わからないよ。でもそうじゃないかなあ」
範子はちょっと不服そうだった。
「だったら、フェアかどうかでは、PK戦のルールはどうなわけ? たしか、なんとかいう偉い作家が、『PK戦などというアンフェアの極みみたいなルールがあるからサッカーはもっとルールを抜本的に変えるべきだ』といっていたような記憶があるんだけど」
「うろ覚えの記憶による孫引きは避けたほうがいいよ。PK戦がそんなにアンフェアなルールだとは思えないけれど、じゃあ、フェアにするためにどうすればいいと思う?」
「まず、ゴールに入れたら得点、というシステムをきれいさっぱり忘れる」
「え……?」
範ちゃん、またなにか突拍子もないことをいい出した、と文子は思った。
「審判を三人にして、旗を持たせる」
「……………………」
「ゲームは二本先取で、それぞれ、『一本』『技あり』『有効』『効果』を……」
「範ちゃん?」
「こういうシステムにすれば、日本ももっと勝てるように……」
「なるわけ、ないでしょっ! そっちのほうがアンフェアだよ。イエローカードを『教育的指導』とかいうわけ?」
「あっ、それも面白いわね」
「面白くないっ! 範ちゃん、このところギャグが低調だよ。このままでは、また読者が離れていっちゃうよ」
「それはいやね」
「だから、サッカーで勝ったときくらい、サッカーヨイショの発言をして、読者を呼び込むべきなのよ!」
「…………だめ。文子、わたし調子が出ない」
「なんで?」
「日本対デンマーク戦を早起きして見ていたので、ふらふらなのよ。お願い。寝かせて。ZZZ……」
「ピピー! レッドカード! 早く教室から退場なさい!」
「そうだね、範ちゃん。ワールドカップ予選リーグ……」
放課後の紅恵高校の教室。範子の言葉に、文子はうなずいた。
「で、それなんだけど」
範子は机から身を乗り出した。
「サッカーってどんなルールだったんだっけ?」
文子は椅子から転げ落ちそうになった。
「範ちゃん、知らないの?」
「そ、そりゃあ、知ってるわよ。単に聞いただけじゃない」
「じゃあ、サッカーに関するルールをちょっといってみて」
「え……」
範子は考えるモードに入った。
ぽくぽくぽくぽくちーん、と、昔のアニメ「一休さん」に出てきた効果音が聞こえたような感じを文子は覚えた。
「わかった!」
「ほんと、範ちゃん? というか、普通、サッカーの基本的なルールで悩むなんてこと、ありえないよ、範ちゃん」
「いいじゃない、そんなこと」
「じゃ、サッカーに必要な道具は?」
「ボール!」
「ほかには?」
「……いるの?」
文子は頭を抱えた。
「まったくもう、範ちゃんってば……あれ? そういえば、範ちゃんって、『キャプテン翼』のコミックスを持っていたはずだよね」
「ぎくっ」
文子は、なんともいえぬ目で、範子を見た。
「範ちゃん、それじゃ、サッカーのルールがわからないはずないじゃない。まったくひどいよ。わたしを笑わせようとしたんだろうけど、ちょっと、それはないんじゃないかなあ」
「……ごめん、文子。でも、世の中に、知ってそうで知らないスポーツのルールって、けっこうあるわよね」
「そうだね」
「わたし、『オフサイド』のルールっていうのが、何回聞いてもちょっとよくわからないんだけど。敵陣に伏兵として味方を入れておくのは、戦法の常道のような気がするし」
「常道なのは戦争のときの話でしょう、範ちゃん。たぶん、その作戦が有効すぎて試合がつまらなくなるから入れられたルールじゃないかと思うんだ、わたし」
「そういうものなの?」
「わからないよ。でもそうじゃないかなあ」
範子はちょっと不服そうだった。
「だったら、フェアかどうかでは、PK戦のルールはどうなわけ? たしか、なんとかいう偉い作家が、『PK戦などというアンフェアの極みみたいなルールがあるからサッカーはもっとルールを抜本的に変えるべきだ』といっていたような記憶があるんだけど」
「うろ覚えの記憶による孫引きは避けたほうがいいよ。PK戦がそんなにアンフェアなルールだとは思えないけれど、じゃあ、フェアにするためにどうすればいいと思う?」
「まず、ゴールに入れたら得点、というシステムをきれいさっぱり忘れる」
「え……?」
範ちゃん、またなにか突拍子もないことをいい出した、と文子は思った。
「審判を三人にして、旗を持たせる」
「……………………」
「ゲームは二本先取で、それぞれ、『一本』『技あり』『有効』『効果』を……」
「範ちゃん?」
「こういうシステムにすれば、日本ももっと勝てるように……」
「なるわけ、ないでしょっ! そっちのほうがアンフェアだよ。イエローカードを『教育的指導』とかいうわけ?」
「あっ、それも面白いわね」
「面白くないっ! 範ちゃん、このところギャグが低調だよ。このままでは、また読者が離れていっちゃうよ」
「それはいやね」
「だから、サッカーで勝ったときくらい、サッカーヨイショの発言をして、読者を呼び込むべきなのよ!」
「…………だめ。文子、わたし調子が出ない」
「なんで?」
「日本対デンマーク戦を早起きして見ていたので、ふらふらなのよ。お願い。寝かせて。ZZZ……」
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~ Comment ~
Re: ネミエルさん
要するに、岡田監督も、プロのサッカーの監督だったということですよね。
それにしても、交流戦4連敗のときの「岡田降ろせ」コールにもめげずにここまでやってのけた岡田監督は、ものすごくタフな人だったんですね。
あの肝っ玉の一部でも今の政治家たちにあれば……うむむ。
それにしても、交流戦4連敗のときの「岡田降ろせ」コールにもめげずにここまでやってのけた岡田監督は、ものすごくタフな人だったんですね。
あの肝っ玉の一部でも今の政治家たちにあれば……うむむ。
NoTitle
サッカー勝ちましたねぇ。
びっくりですよ。
なんでしょうか。
不思議ですよね。
岡田さん馬鹿にしてすいませんでした。
びっくりですよ。
なんでしょうか。
不思議ですよね。
岡田さん馬鹿にしてすいませんでした。
- #1510 ねみ
- URL
- 2010.06/26 22:37
- ▲EntryTop
Re: ぴゆうさん
逆に言えば、
時事ネタはすぐに風化する、
ということでもあるんですよね……。
時事ネタ政治ネタ大好きなので特にそう思います。
時事ネタマンガで風化しないのはいしいひさいち先生くらいだ。
時事ネタはすぐに風化する、
ということでもあるんですよね……。
時事ネタ政治ネタ大好きなので特にそう思います。
時事ネタマンガで風化しないのはいしいひさいち先生くらいだ。
Re: あめふらしさん
ワールドカップの勝利はめでたかったですが、マスコミやファンの、岡田監督に対する手のひらを返したような対応には腹が立ってならないであります。わたしがW杯からはある程度距離をおいていたからかも知れませんが。
「ウォーロック」誌には、単行本になっていないゲームブックがけっこう訳載されたり日本人作家の新作を載ったりしていました。
山本先生の未単行本化作品では、名作とわたしは思っているのですが、南米のジャングルで半裸の女の子と探検をする「ロスト・ワールドからの脱出」という痛快な作品も持っているので、またなにかあったらお送りしますね~♪
イラストは、ぜひうちの看板娘、宇奈月範子と下川文子をお願いします……! というところなのですが、
外見の設定については、
範子「(髪が)つややかに輝き、どこか金色がかって見える」
文子「すらりとした黒髪の少女」
「範子に、肩がこっているんじゃないかといわれながら胸元を見られることがよくある」
という以外なにも決まっていない、という罠が。
これじゃ無理ですか……?(汗)
「アニマルタイフーン」はやはり日本ゲームブック界の黒歴史です(笑)。
「ウォーロック」誌には、単行本になっていないゲームブックがけっこう訳載されたり日本人作家の新作を載ったりしていました。
山本先生の未単行本化作品では、名作とわたしは思っているのですが、南米のジャングルで半裸の女の子と探検をする「ロスト・ワールドからの脱出」という痛快な作品も持っているので、またなにかあったらお送りしますね~♪
イラストは、ぜひうちの看板娘、宇奈月範子と下川文子をお願いします……! というところなのですが、
外見の設定については、
範子「(髪が)つややかに輝き、どこか金色がかって見える」
文子「すらりとした黒髪の少女」
「範子に、肩がこっているんじゃないかといわれながら胸元を見られることがよくある」
という以外なにも決まっていない、という罠が。
これじゃ無理ですか……?(汗)
「アニマルタイフーン」はやはり日本ゲームブック界の黒歴史です(笑)。
NoTitle
この文を何年か経って、読み返すと、
時事を思い出す、よすがとなりそうな。
そんな側面もあるショートだよね
時事を思い出す、よすがとなりそうな。
そんな側面もあるショートだよね

- #1507 ぴゆう
- URL
- 2010.06/26 18:26
- ▲EntryTop
NoTitle
どうもです、お久しぶりです(^◇^;)
ワールドカップ、予選突破しちゃいましたね!めでたい笑
ところで、送って頂いた例のブツが、今日、出版社より私の手元に届きましたのでご報告させて頂きます!
本当にありがとうございました!!
頂いた贈り物もやはり見たことのないレアものでしたのでとても嬉しかったです♪
お返事、少し遅くなってしまうかもしれませんが、必ずさせて頂きますね!
よかったらイラストリクエストをどうぞ(笑。
取り急ぎ、お礼まで!
では、お互い頑張りましょう!!
ワールドカップ、予選突破しちゃいましたね!めでたい笑
ところで、送って頂いた例のブツが、今日、出版社より私の手元に届きましたのでご報告させて頂きます!
本当にありがとうございました!!
頂いた贈り物もやはり見たことのないレアものでしたのでとても嬉しかったです♪
お返事、少し遅くなってしまうかもしれませんが、必ずさせて頂きますね!
よかったらイラストリクエストをどうぞ(笑。
取り急ぎ、お礼まで!
では、お互い頑張りましょう!!
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Re: ひゃくさん
「選手が似合わない」方が大きいんじゃ……(^^;)
オリンピックの衣装は毎回カッコ悪いけど。昭和の東京オリンピックの時からして、紋付羽織袴でよかったんじゃないのかなあ、と思うぞわたしは。