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    「範子と文子の驚異の高校生活(ギャグ掌編小説シリーズ・完結)」
    範子と文子の三十分一本勝負(ギャグ掌編小説シリーズ・完結)

    範子と文子の三十分一本勝負:FIGHT・59

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    「きのこ」
    「は?」
     突如、自分が嫌いなものの話をされて、文子は口をへの字に曲げた。
    「範ちゃん、わたしがしいたけとか、きのこの類は大嫌いなことを知っていて、そういう話をするのはちょっとひどいと思うな」
    「あっ、ごめん、文子」
     範子はばつの悪い顔をしたが、それでも話をやめようとしなかった。
    「いやさ、きのう、うちの夕食で、傘下の会社が送ってきた、太平洋のなんとかいう島から採ってきた珍しいきのこを使った煮物が出てね。それがもう、おいしかったのなんの。わたしなんか、ついつい体重のことも考えもせずに二杯もおかわりを」
    「ふーん」
     文子は、マイナス200度くらいの、浴びせればバナナで釘が打てるような冷たい視線を範子に向けた。
     範子は気にしなかった。
    「まだ、家にあるから、いつものお礼ということで文子の家族におすそわけをしたいと思ってね」
     範子は、朝から鞄の横に吊り下げていたビニール袋を取り出した。
    「いいよ、範ちゃん。わたし……」
    「でも、ご家族はきのこが大好きって聞いたけど」
    「う……そりゃ、そうだけど……。で、でも、料理法とかわからないし」
    「大丈夫よ」
     範子は、ビニール袋から出したタッパーを開けた。
    「ほら、すでに煮てあるから、大丈夫。そりゃあ、あまり日持ちはしないけど、今日中に食べれば、多分おいしく食べられると思うわ」
     文子は、タッパーの中にある「きのこ」というやつの、きのこにしてはちょっとグロテスクな姿にみじろぎをした。
    「い、いや……やっぱり、遠慮しておくわ。ちょっと、わたし……」
    「いいからいいから、ほら、食べて食べて」
    「え、ちょっと、わたし、むぐむぐむぐ」
     つまようじできのこのひとかけらを無理やり口の中に押し込まれた文子は、目を白黒させた。
    「範ちゃん……やっぱりこれ、おいしくないよ。しいたけの味がするよ」
    「そう? これは……うっ!」
     突如、範子は口を押さえてうずくまった。
    「の、範ちゃん?」
     範子の身体には、見るもおぞましい変容が始まろうとしていた。
     肌の色が、ものすごい勢いで、肌色から虹のような七色に変わっていく。
     肌自体も、次から次へと膨らんで、どんどんこぶのようなものができていた。
     そして顔! 範子の形相は、一変していた。
     その顔は……その顔は……ただれ、醜く変容し……。
     それでもなお、範子は、その醜い顔でつぶやき続けていた。
    「気持ちいいわよ。とても気持ちいい……天国にいるみたいな味よ……」
     範子はその、粘液を染み出させてぬらぬらした手で文子の手をつかんだ。
    「どうしたの? どうしたの、文子? どうおしいたのおおおおおお?」
     文子は悲鳴を上げた。

    「どうしたの、どうしたの、文子? 悲鳴を上げたりして」
     文子ははっと我に返った。
    「の、範ちゃん?」
     範子はいつもの顔で、心配そうに机に突っ伏した文子を見ていた。
    「大丈夫? こんなはずじゃなかったんだけどな」
    「え?」
    「このきのこには、食べた人間を幸福な気分にさせる、精神安定剤のような成分が含まれていて、食べると夢のような気分を味わうことができるんだけど」
    「範ちゃん。それって、マジック・マッシュルーム! 毒きのこ! そんなもの、食べさせないでよね!」
     文子は腹の底から怒っていた。
    「じゃ、じゃあ、文子、このきのこは……?」
    「焼却処分して!」
    「おいしいのにもったいない……」
    「いま、なんて?」
    「い、いえ、文子さま、すぐに持ち帰って焼却処分します」
    「そうしてよ」
     文子は、ぷりぷりしながら、自分の身体を確認した。
     でも……と、今の文子は思うのだ。
     わたしに今の範ちゃんが普通の身体の普通の女の子として見えるのは、あのきのこが身体に効いて、視神経と脳細胞が冒されているからかもしれない、と……。
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