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    「範子と文子の驚異の高校生活(ギャグ掌編小説シリーズ・完結)」
    範子と文子の三十分一本勝負(ギャグ掌編小説シリーズ・完結)

    範子と文子の三十分一本勝負:FIGHT・61

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    「わたしは、だんぜん氷イチゴね」
    「えー、あずきのほうがおいしいよ」
     放課後の紅恵高校の教室。二人の娘は、えんえんと論争を繰り広げていた。
    「いや、氷イチゴのほうがおいしいわ。こうやって練乳をかけて、ざくざくとかきまわして、全体が淡いピンクに染まったところで、おもむろにいただくの。夏の風物詩といえば、これしかないわ」
    「あずきだよ、範ちゃん。誰がなんといおうと、氷あずき。あんこがかかったのをかき混ぜて、豆とあんこといっしょに食べると、そりゃあおいしいんだから」
    「イチゴ」
    「あずき」
     二人の会話は平行線をたどっていた。
     やがて、話題を変えることにしたのは範子のほうだった。
    「かき氷については、お互いの意見がわかったわね。じゃ、ソフトドリンクはどう?」
    「コーラ」
    「オレンジジュース」
     ふたたび、文子と範子の瞳の間に火花が散ったように思えた。
    「コーラだよ。グラスに、氷をぎちぎちに詰めて、そこに缶を開けたばかりのコーラを注意深く注ぐ。そうすると泡が立ってくるから、そこをちょっとこらえて、落ち着いたところでさらに注ぐ。コップになみなみとなったところで、ぐいっと。ストローを使うよりは、そのままコップに口をつけて飲んだほうがおいしさはアップするよ。昔の人はよくやったそうだけど、レモンの香りと果汁がアクセントになるから、レモンスライスをひとかけら浮かべてもいいよね。ペプシツイストみたいに」
    「絶対オレンジジュース」
     範子も頑固だった。
    「たっぷりのバレンシアオレンジを、苦味が出る薄皮を全部剥いだ上でジューサーへ。汁をよく濾してから、氷の入ったグラスに注ぐ。砂糖もなんにもいらない。それだけで、無上の味のする天然百パーセントオレンジジュースのできあがりよ。その馥郁たる味と香りの前では、コーラなんて……あっち行け、しっしっね」
     文子はむくれた。
    「あー、範ちゃん、コーラを馬鹿にした。そりゃあ、範ちゃんちはお金持ちだから、バレンシアオレンジをほしいだけ買えるだろうけれど、普通の家は無理だよ。やっぱり、コーラのほうがおいしくてリーズナブルだよ」
    「そんなこといったっておいしいものはおいしいの」
    「コーラ!」
    「オレンジジュース!」
     ひとしきりにらみ合った後、文子は視線をそらせた。
    「こっちも、平行線みたいだね。じゃあ、次は、なんの話をしようか?」
    「夏にぴったりな食べ物……ね。そうめん」
    「冷やし中華……あ~あ、目の前に浮かぶようだよ。こんな寒い日なのに」
    「そうね。これじゃあね」
     範子は外を見た。七月だというのに肌寒かった。外は梅雨の雨が延々と、しとしと降り続いていた。
    「今年の夏が冷夏だっていうのはある意味救いかもね。これで暑かったら、みんな死んでるわよ、のどを渇かせて」
    「そうだよね。……範ちゃん、例の化学物質だけど、世界各国の研究者たちは特定できたのかなあ?」
    「わからないわね。大体のことはつかめたらしいけれど、なにぶん、水に溶け込んでいるのは未知のそれらしいから、よくわからないんじゃないかしら」
    「浄水プラントはほんとにわずかの飲み水しか供給してくれないし。あ~あ、この雨水が、全部飲めたらなあ」
    「わかっているでしょ、文子。全世界の水という水は、例の化学物質に汚染されて、ひと口も飲めなくなっているんだから」
    「範ちゃん……喉が渇いたね」
    「そうね。わたしたちの涙くらいなら、まだ飲めると思うけど……」
     二人の少女は絶望的な瞳で降りしきる雨を見ていた。
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    ~ Comment ~

    Re: 蘭さん

    パラレルワールドですから(便利な言葉だ)

    しろくまは、テレビやネットでよく画像を見ます。いっぺん食べてみたいかき氷です。この関東では、出してくれるいい喫茶店がないんだよなあ。

    そういやあ、しろくまといったら、スーパーのアイスのコーナーに「しろくま」というカップのアイスがあったので、おおっこれはきっとフルーツがいっぱい入った氷アイスに違いない、と思って喜んで買ったところ、ふつうのバニラアイスに、申し訳程度にみかんとさくらんぼがちょこんと入っただけのものでした。くそう金返せ、と思ったであります。

    例の化学物質はもうなんでもいいですよ(^^)
    「ケミカルX」でも「トヒデルアルデヒド」でも「T-Virus」でも、お好きなものを……(笑)。

    Re: トゥデイさん

    「雨に唄えば」はわたしも大好きな映画です(^^)

    でも、裏話で、雨中のタップダンスのシーンの音が録れなくて、名もない女優にバケツに足を突っ込ませて音を録ったというエピソードが一番好き。その後その女優が有名になったというエピソードも好き。「アシモフの雑学コレクション」でアイザック・アシモフがいってるんだからまず間違いはないでしょうけど。

    うーむ、最近、「作者の日記」になってしまっているきらいがあるからなあ。普通の笑えるショートショートに軌道修正しなければ。うむむ。

    Re: れもんさん

    うむ。

    氷イチゴはうまい。

    練乳は最高(^^)


    書き始めたときはまさか破滅ものになるとは思いも(笑)

    こんにちは~~^^

    ぷぷぷぷ(^m^*)
    相変らず、現代とも未来とも、地球内とも地球外とも取れないような内容なんですね~~^^;
    しかも、二人の論議の焦点がまた・・・(笑)。

    私は、「しろくま」が大好きです♪
    「しろくま」・・・ご存知ですか?
    あとはババ臭く、「宇治金時」。
    飲み物は、夏だろうが冬だろうが「珈琲」ですv-290

    ところで。
    >「例の化学物質」
    とは何なのか教えて下さいv-345(←・・・)

    「雨に唄えば」の撮影でスタジオに降らせた雨には、見えやすいよう牛乳が混ぜてあったという。

    久々にショートショートらしい話だったような。
    コロッと想像してた状況やジャンルが変化するのは好き。
    あと水絡みのSF設定も好き。

    NoTitle

    氷イチゴがいいです★
    絶対氷イチゴがいいです←
    練乳は最高だと思いますb

    最後にまさか汚染物質とか出てくるとは思いませんでしたw

    NoTitle

    いやあ、だべり話だけでもそれはそれで好きなんですがね。

    でも、ラストシーンでなにか変わったことをしたいという色気がでまして(^^;)

    業ですかなあ。

    NoTitle

    だへり話だけではまずいと思ったのか・・・
    最後に取ってつけたような難しい話。
    まったく、面白い。
    ポールの頭が沸点に行ってそう。
    無理しないでねv-410
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