「範子と文子の驚異の高校生活(ギャグ掌編小説シリーズ・完結)」
範子と文子の三十分一本勝負(ギャグ掌編小説シリーズ・完結)
範子と文子の三十分一本勝負:FIGHT・62
文子は持ってきた水筒から、付属のコップに水を注ぎ、静かに飲んだ。
ほっと息をつく。
水が自由に飲めるって、よく考えたら素敵なことね……。
なんの関連もなく、そんなことを考えてしまう文子であった。
しかし、それにしても、範子はどこへ行ったんだろう。トイレかな。
教室のドアががらりと開いた。
「あやこー、帰りましょうー」
「あ、範ちゃん、そうだね」
なにげなくドアのほうに顔を向けた文子は、思わずコップを取り落とした。中の水を飲み干していなければひどいことになるところだった。
「の、範ちゃん、なにやっているの!」
そう。範子は、逆立ちをしていたのである!
つつしみを忘れないせいか、範子は普通のスカートではなく、スラックスを着用していた。
「え? なに、文子、わたしは普通に歩いているだけだよ」
範子はそのまま席まで逆立ちのまま歩いてくると、よっこらせ、と、椅子に腰、というか、背中、を下ろした。
文子は呆然として声も出なかった。
「で、どうして、文子はそんな変な格好してるわけ?」
「変な格好って……」
文子は信じられない思いのまま範子の問いに機械的に答えた。
「わたしは椅子に座っているだけだよ、範ちゃん」
「変よ、文子、逆立ちして椅子に座るのは」
「逆立ちしているのは範ちゃんのほうだよ!」
目の前に範子の足がある状態で、平静を保つのは難しかった。
「どうなっているの、範ちゃん?」
「どうなっているって……」
範子は困惑を隠せないようだった。
「わたしも自然に椅子に座っているだけだけど」
「ううう~」
文子は頭を抱えた。
「そもそも、人間、こういうふうにするのが自然なのよ、文子。文子、あなたも自然に帰りなさい」
「帰れないよ範ちゃん! だいいち、うちの学校の制服は、スカートだったでしょう!」
「だめよあんなはしたないもの履いちゃ」
「はしたなくないよ!」
「でも、こういう格好をしなくては、人間として間違っているわよ」
「間違っているって……」
文子は頭痛を隠すことができなかった。
「文子も、こうして普通に立たなくちゃ、ね。大丈夫。こういうふうに立って、椅子に座ればすぐにわかるから」
「範ちゃん……」
「さて、ほんとうに帰らなくちゃね」
範子に続いて、文子も、足で鞄を取った。文子はスカートをジャージに履き替えていた。
ふたりは逆立ちをしたままで教室を出て行った。
そう、文子もまた、人間としてのあるべき形を、理解してしまったのである。
ほっと息をつく。
水が自由に飲めるって、よく考えたら素敵なことね……。
なんの関連もなく、そんなことを考えてしまう文子であった。
しかし、それにしても、範子はどこへ行ったんだろう。トイレかな。
教室のドアががらりと開いた。
「あやこー、帰りましょうー」
「あ、範ちゃん、そうだね」
なにげなくドアのほうに顔を向けた文子は、思わずコップを取り落とした。中の水を飲み干していなければひどいことになるところだった。
「の、範ちゃん、なにやっているの!」
そう。範子は、逆立ちをしていたのである!
つつしみを忘れないせいか、範子は普通のスカートではなく、スラックスを着用していた。
「え? なに、文子、わたしは普通に歩いているだけだよ」
範子はそのまま席まで逆立ちのまま歩いてくると、よっこらせ、と、椅子に腰、というか、背中、を下ろした。
文子は呆然として声も出なかった。
「で、どうして、文子はそんな変な格好してるわけ?」
「変な格好って……」
文子は信じられない思いのまま範子の問いに機械的に答えた。
「わたしは椅子に座っているだけだよ、範ちゃん」
「変よ、文子、逆立ちして椅子に座るのは」
「逆立ちしているのは範ちゃんのほうだよ!」
目の前に範子の足がある状態で、平静を保つのは難しかった。
「どうなっているの、範ちゃん?」
「どうなっているって……」
範子は困惑を隠せないようだった。
「わたしも自然に椅子に座っているだけだけど」
「ううう~」
文子は頭を抱えた。
「そもそも、人間、こういうふうにするのが自然なのよ、文子。文子、あなたも自然に帰りなさい」
「帰れないよ範ちゃん! だいいち、うちの学校の制服は、スカートだったでしょう!」
「だめよあんなはしたないもの履いちゃ」
「はしたなくないよ!」
「でも、こういう格好をしなくては、人間として間違っているわよ」
「間違っているって……」
文子は頭痛を隠すことができなかった。
「文子も、こうして普通に立たなくちゃ、ね。大丈夫。こういうふうに立って、椅子に座ればすぐにわかるから」
「範ちゃん……」
「さて、ほんとうに帰らなくちゃね」
範子に続いて、文子も、足で鞄を取った。文子はスカートをジャージに履き替えていた。
ふたりは逆立ちをしたままで教室を出て行った。
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