「範子と文子の驚異の高校生活(ギャグ掌編小説シリーズ・完結)」
範子と文子の三十分一本勝負(ギャグ掌編小説シリーズ・完結)
範子と文子の三十分一本勝負:FIGHT・63
「ねえ文子」
「なあに、範ちゃん?」
いつもの紅恵高校の放課後の教室。
「ニュース見てる?」
「人並みには見てるよ」
「じゃあさ、聞くけど……」
範子は声をひそめた。
「賭博って面白いのかしら」
「賭博……ああ、例の大相撲のニュースか」
「そうよ」
範子はうなずいた。
「大の大人が、子供みたいに夢中になっちゃって。ほんとに面白いのかなって」
「それは、賭ける金額によっても違ってくるんじゃないかな」
「金額?」
「ほら、フランス革命前夜、マリー・アントワネットは、賭博に夢中になって、国家財政を揺るがすほどの額を負けたよね。それと同じく、賭けるお金が多くなれば多くなるほどのめりこむんじゃないのかな」
「なるほど、そうかもね」
「範ちゃんの場合は?」
「わたし……。ああ、思い出したわ。小学一年生のころ、お正月に、兄とババ抜きをやって、三百万円を取られたことがあった」
「なっ!」
文子は絶句した。
「範ちゃん、小学一年生がなんてバクチをやっているのよ! 三百万円っていったら……いったら……うちの年収の六割以上あるよ!」
「そんなにないわよ。こども銀行券だったもの」
「こども銀行券……ああ、そうだね。そうだよね。びっくりした。心臓が止まるかと思っちゃった」
「文子。わたしたち家族の日常生活を、妙な色眼鏡で見てない?」
「見てない……つもりだったけど、今は自信がない」
「正直でいいわ」
範子は椅子に座りなおした。
「でも、ゲームにお金を賭けるっていうのは、そんなにゲームを面白くすることなのかしら。一円もお金を賭けなくても、麻雀って面白いじゃない」
「そうだね。前にみんなでやったのは、楽しかったよね。……あれ? 誰とやったんだっけ? 記憶が……」
「そのうち思い出すわよ」
「そうだね。じゃあ、ちょっと、今度、みんなも誘って、なにか簡単なゲームでもやってみようか。お金じゃまずいから、チョコレートでも賭けて」
「そうね。あまり面白くなるとも思わないけど……あら、携帯に着信があったわ。文子、ちょっとごめんね」
範子は携帯を開いて耳に当てた。
「わたし。……うん。暴動? 鉱山は大丈夫なんでしょうね? うん。うん。いや、反政府運動はその線では動かないと思うわ。たぶん冬までは大丈夫。夏に持ち直すはずだから、八月に上がり始めたら、採掘権を。そう。お願いね」
範子は唖然としている文子の前で携帯を閉じた。
「の、範ちゃん? その投資話、いくらのお金が動いているの?」
「うちが出しているのは五十億くらいかしら。優秀だけど小さい鉱山だし」
「範ちゃん……」
「え?」
「範ちゃん、とっくの昔に範ちゃんはすごいギャンブラーになってるよ。尊敬するよ。ほんとだよ」
何度も繰り返す文子に、範子はとまどいながら首をかしげた。
「なあに、範ちゃん?」
いつもの紅恵高校の放課後の教室。
「ニュース見てる?」
「人並みには見てるよ」
「じゃあさ、聞くけど……」
範子は声をひそめた。
「賭博って面白いのかしら」
「賭博……ああ、例の大相撲のニュースか」
「そうよ」
範子はうなずいた。
「大の大人が、子供みたいに夢中になっちゃって。ほんとに面白いのかなって」
「それは、賭ける金額によっても違ってくるんじゃないかな」
「金額?」
「ほら、フランス革命前夜、マリー・アントワネットは、賭博に夢中になって、国家財政を揺るがすほどの額を負けたよね。それと同じく、賭けるお金が多くなれば多くなるほどのめりこむんじゃないのかな」
「なるほど、そうかもね」
「範ちゃんの場合は?」
「わたし……。ああ、思い出したわ。小学一年生のころ、お正月に、兄とババ抜きをやって、三百万円を取られたことがあった」
「なっ!」
文子は絶句した。
「範ちゃん、小学一年生がなんてバクチをやっているのよ! 三百万円っていったら……いったら……うちの年収の六割以上あるよ!」
「そんなにないわよ。こども銀行券だったもの」
「こども銀行券……ああ、そうだね。そうだよね。びっくりした。心臓が止まるかと思っちゃった」
「文子。わたしたち家族の日常生活を、妙な色眼鏡で見てない?」
「見てない……つもりだったけど、今は自信がない」
「正直でいいわ」
範子は椅子に座りなおした。
「でも、ゲームにお金を賭けるっていうのは、そんなにゲームを面白くすることなのかしら。一円もお金を賭けなくても、麻雀って面白いじゃない」
「そうだね。前にみんなでやったのは、楽しかったよね。……あれ? 誰とやったんだっけ? 記憶が……」
「そのうち思い出すわよ」
「そうだね。じゃあ、ちょっと、今度、みんなも誘って、なにか簡単なゲームでもやってみようか。お金じゃまずいから、チョコレートでも賭けて」
「そうね。あまり面白くなるとも思わないけど……あら、携帯に着信があったわ。文子、ちょっとごめんね」
範子は携帯を開いて耳に当てた。
「わたし。……うん。暴動? 鉱山は大丈夫なんでしょうね? うん。うん。いや、反政府運動はその線では動かないと思うわ。たぶん冬までは大丈夫。夏に持ち直すはずだから、八月に上がり始めたら、採掘権を。そう。お願いね」
範子は唖然としている文子の前で携帯を閉じた。
「の、範ちゃん? その投資話、いくらのお金が動いているの?」
「うちが出しているのは五十億くらいかしら。優秀だけど小さい鉱山だし」
「範ちゃん……」
「え?」
「範ちゃん、とっくの昔に範ちゃんはすごいギャンブラーになってるよ。尊敬するよ。ほんとだよ」
何度も繰り返す文子に、範子はとまどいながら首をかしげた。
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~ Comment ~
Re: トゥデイさん
範子ちゃんは能天気な娘ですが(笑)、金の恐ろしさと力とは幼いころから叩き込まれているんでしょうね。一種の帝王学というか。
文子ちゃんとのいつもの庶民的(^^;)なやりとりも、財産に自我を飲み込まれないための防衛線みたいなものなのかもしれません。
などということをはじめから設定していたらかっこいいのですが、あいにくと毎日出たとこ勝負で……(^^;)
文子ちゃんとのいつもの庶民的(^^;)なやりとりも、財産に自我を飲み込まれないための防衛線みたいなものなのかもしれません。
などということをはじめから設定していたらかっこいいのですが、あいにくと毎日出たとこ勝負で……(^^;)
NoTitle
金に祝福される…という言葉がありますけどね。
投資も同じようなことが言えますね。賭博はゲームですけど、投資は駆け引き…ですかね。少なくとも投資よりも生産性はありますよね。絵師の依頼は出しておきました。また、ラフが出来上がったら見せますね。
投資も同じようなことが言えますね。賭博はゲームですけど、投資は駆け引き…ですかね。少なくとも投資よりも生産性はありますよね。絵師の依頼は出しておきました。また、ラフが出来上がったら見せますね。
そーいや投資もそうか。大富豪ってキャラ設定が久々に使われましたね。避難訓練以来ですかね。
そして麻雀は友人がよくやってました。大好きみたいです。
恐るべし範子。お金のある所にお金は集まる。叶姉妹が賞金のあるバラエティに出ると何故か必ず勝つように。
誰かが言ってましたが、お金の動きそのものが楽しい人には楽しいそうです。子供がアリの行列を眺めてる感覚だとか。
そして麻雀は友人がよくやってました。大好きみたいです。
恐るべし範子。お金のある所にお金は集まる。叶姉妹が賞金のあるバラエティに出ると何故か必ず勝つように。
誰かが言ってましたが、お金の動きそのものが楽しい人には楽しいそうです。子供がアリの行列を眺めてる感覚だとか。
- #1544 トゥデイ
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- 2010.07/06 21:54
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Re: LandMさん
五十億のほとんどは、会社のカネ、というか見せ金みたいなものですが、それでも五十億ですから、範子ちゃんにかかるプレッシャーは並大抵ではないと思います。
だからああいう性格になっちゃったのか(ウソです(笑))
絵師さんにはよろしくいっておいてください。プロレスラーかと思うような典型的な力持ちの豪傑タイプの戦士のつもり(とはいえ精巧に動く脳味噌もついておりますが)で書いたので、万一スリムなやせぎすの美青年なんかにされてしまったらえらいことになるところでした……ってそういうのもまた面白いかもしれませんが。