「範子と文子の驚異の高校生活(ギャグ掌編小説シリーズ・完結)」
範子と文子の三十分一本勝負(ギャグ掌編小説シリーズ・完結)
範子と文子の三十分一本勝負:FIGHT・64
「へあっ」
「範ちゃん、範ちゃん!」
「であっ」
範子は無表情な顔をしていた。文子はその肩をぎゅっとつかんで、激しく揺すぶった。
「範ちゃん、範ちゃん、しっかりして! しっかりしてよお!」
どこからこういうことになったのか……。
……………………
十分前。
「文子、異星人っていると思う?」
範子から聞かれて、文子は首をひねった。
「いると思うけど……でも、わたしたちが出会うのは、もっとずっと先の話だろうね、範ちゃん」
「そうよね」
範子は自分の席に座った。
「いたとして、異星人は、友好的かしら?」
「そうだね、無理すれば、コミュニケーションは取れるんじゃないかなあ」
「地球人に理解できると思う?」
「絶対に理解はできないけど、交流はできるんじゃないか、って思うな、わたし。だってそのほうが楽しいもん」
文子はいたずらっぽく笑った。
「もしかしたら、もしかしたらだよ、範ちゃん。すでに地球に異星人はやってきているかもしれないよ」
「わたしたちみたいなのが?」
「わたしたちみたいなのが。名前も範子とか文子とか」
「そうだったら面白いわね」
「あはは。そうだよね。……でも、どうしてそんなことを聞くの?」
「いえ……わたし、自分がなにか、異星人とコンタクトしたような気がするのよ」
「範ちゃん」
文子は真顔になった。
「『ム○』なんて読むのは知性の墓場に足を突っ込むのと同じだよ」
「『○ー』なんて読んでないわよ」
範子は憮然とした。
「ただ、わたしの中に、なにか奇妙な感覚が……」
「夏だし、暑いから、疲れているだけだよ。帰って、寄り道して、マクドナルドでコーラかオレンジジュースでも飲んだら、すぐにすっきりするよ」
「そうよね……だけどわたし、これはなにか、違うように思え……」
そういいかけたとき、範子はなにかに打たれたかのように硬直した。
「範ちゃん?」
あわてて文子は範子の手を取った。
目を覗き込む。
範子は口を開いた。
「じゅわっ」
……………………
「おねがい、範ちゃん! 正気に戻って! 戻ってよ、範ちゃん!」
文子は範子に対し叫び続けたが、範子の耳には届いていなかったようだった。
相変わらず、日本語ではない叫びをしながらあちらこちらに視線をさまよわせている。
その視線の動きが、止まった。文子の真後ろを見ている。
「え?」
文子が後ろを振り向こうとしたとき、急に範子は文子を引っ張った。範子とは思えない強い力だった。
呆然とする文子の前で、範子は立ち上がった。
腕を十字に組む。
文子は見た。範子の組まれた腕から、シャワーのような『光』が放たれるのを!
椅子の前、先ほど文子が座っていた空間が、急に歪んだ。
文子は不気味な叫びを聴いた気がした。それは、断末魔の叫びだった。
範子を見ることしかできない文子の前で、範子はひとつ大きくうなずいた。
「しゅわっ」
憑き物が落ちたかのように、範子はくたくたと崩折れた。
文子は大急ぎで範子を保健室に運んだ。
文子が、いったいなにが起こったのかのヒントらしいものをつかんだのは、家に帰って、家族が借りてきた特撮番組のDVDを見たときであったそうである。
「範ちゃん、範ちゃん!」
「であっ」
範子は無表情な顔をしていた。文子はその肩をぎゅっとつかんで、激しく揺すぶった。
「範ちゃん、範ちゃん、しっかりして! しっかりしてよお!」
どこからこういうことになったのか……。
……………………
十分前。
「文子、異星人っていると思う?」
範子から聞かれて、文子は首をひねった。
「いると思うけど……でも、わたしたちが出会うのは、もっとずっと先の話だろうね、範ちゃん」
「そうよね」
範子は自分の席に座った。
「いたとして、異星人は、友好的かしら?」
「そうだね、無理すれば、コミュニケーションは取れるんじゃないかなあ」
「地球人に理解できると思う?」
「絶対に理解はできないけど、交流はできるんじゃないか、って思うな、わたし。だってそのほうが楽しいもん」
文子はいたずらっぽく笑った。
「もしかしたら、もしかしたらだよ、範ちゃん。すでに地球に異星人はやってきているかもしれないよ」
「わたしたちみたいなのが?」
「わたしたちみたいなのが。名前も範子とか文子とか」
「そうだったら面白いわね」
「あはは。そうだよね。……でも、どうしてそんなことを聞くの?」
「いえ……わたし、自分がなにか、異星人とコンタクトしたような気がするのよ」
「範ちゃん」
文子は真顔になった。
「『ム○』なんて読むのは知性の墓場に足を突っ込むのと同じだよ」
「『○ー』なんて読んでないわよ」
範子は憮然とした。
「ただ、わたしの中に、なにか奇妙な感覚が……」
「夏だし、暑いから、疲れているだけだよ。帰って、寄り道して、マクドナルドでコーラかオレンジジュースでも飲んだら、すぐにすっきりするよ」
「そうよね……だけどわたし、これはなにか、違うように思え……」
そういいかけたとき、範子はなにかに打たれたかのように硬直した。
「範ちゃん?」
あわてて文子は範子の手を取った。
目を覗き込む。
範子は口を開いた。
「じゅわっ」
……………………
「おねがい、範ちゃん! 正気に戻って! 戻ってよ、範ちゃん!」
文子は範子に対し叫び続けたが、範子の耳には届いていなかったようだった。
相変わらず、日本語ではない叫びをしながらあちらこちらに視線をさまよわせている。
その視線の動きが、止まった。文子の真後ろを見ている。
「え?」
文子が後ろを振り向こうとしたとき、急に範子は文子を引っ張った。範子とは思えない強い力だった。
呆然とする文子の前で、範子は立ち上がった。
腕を十字に組む。
文子は見た。範子の組まれた腕から、シャワーのような『光』が放たれるのを!
椅子の前、先ほど文子が座っていた空間が、急に歪んだ。
文子は不気味な叫びを聴いた気がした。それは、断末魔の叫びだった。
範子を見ることしかできない文子の前で、範子はひとつ大きくうなずいた。
「しゅわっ」
憑き物が落ちたかのように、範子はくたくたと崩折れた。
文子は大急ぎで範子を保健室に運んだ。
文子が、いったいなにが起こったのかのヒントらしいものをつかんだのは、家に帰って、家族が借りてきた特撮番組のDVDを見たときであったそうである。
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NoTitle
ウルトラマンですか!
ウルトラマンですよね、わかります!
あれ、空気よんでな・・・い?
ここでウルトラマンって言っちゃ駄目な空気・・・
ウルトラマンですよね、わかります!
あれ、空気よんでな・・・い?
ここでウルトラマンって言っちゃ駄目な空気・・・
- #1555 ねぇーみっ☆
- URL
- 2010.07/07 23:40
- ▲EntryTop
Re: ミズマ。さん
おひさです。
もう明日書くためのネタさえもないので、アニパロだろうが特撮パロだろうがなんだってやってしまうぞ!(笑)
たぶん例のカプセルを使ってないから帰ってきたのほうでしょう(笑)
もう明日書くためのネタさえもないので、アニパロだろうが特撮パロだろうがなんだってやってしまうぞ!(笑)
たぶん例のカプセルを使ってないから帰ってきたのほうでしょう(笑)
NoTitle
どもです。
文子さんには見えなかった、銀色の異性人の姿が脳裏に浮かびました^^; あ、あと両手がハサミの宇宙忍者もいたような気がしないでもありません。
割とこんなノリは好きです。
文子さんには見えなかった、銀色の異性人の姿が脳裏に浮かびました^^; あ、あと両手がハサミの宇宙忍者もいたような気がしないでもありません。
割とこんなノリは好きです。
- #1549 ミズマ。
- URL
- 2010.07/07 12:30
- ▲EntryTop
さーて
これから図書館で借りてきた小林泰三「ΑΩ」と山本弘「MM9」を読むとするか。やはりあれはロマンだのう(笑)
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Re: ネミエルさん
というか平成ウルトラマンがみんな初代とセブンのパロディに見えてしまうのであります。
それだけ偉大だということですが。