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    「範子と文子の驚異の高校生活(ギャグ掌編小説シリーズ・完結)」
    範子と文子の三十分一本勝負(ギャグ掌編小説シリーズ・完結)

    範子と文子の三十分一本勝負:FIGHT・73

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     文子は空腹だった。
    「範ちゃん、おなかがすいたよお。ひもじいよお。なにか食べさせてよお」
     範子は悲痛な表情をしていた。
    「がんばって、がんばって。今はがまんして。すぐにうちの研究室のものが来るから、それまで待っていて」
    「でも……おなかがすいて、おなかがすいて、たまらないのよ。お願い、範ちゃん、このロープを解いて。自分でコンビニに行っておにぎりでもなんでも買ってくるから」
    「ごめんなさい、文子。でも今はがまんして」
     ロープで椅子ごと窓枠にくくりつけられた文子に、範子は涙を流しながら詫びた。
    「だって、今、このロープを解いたら、文子、あなた、わたしや教室はおろか地球全体まで食べつくしてしまうわ。それだけは避けたいのよ」

     三十分前。
     文子は学校の自販機で買ってきた牛乳を手に、複雑な表情をしていた。
    「どうしたの?」
     範子はなにか小さな立方体のようなものが入ったビニールの小袋を手に尋ねた。
    「ああ、範ちゃん、聞いてよ。甘いヨーグルトドリンクを買おうとしたら、ボタンを押し間違えちゃって」
    「よくやるわよね、そういうこと。でも、牛乳は、身体と健康にいいから、飲んだほうがいいわよ」
    「そうだけどさあ」
    「じゃ、わたしはヨーグルトドリンクを買ってくるから、見せびらかして飲むことにするわね」
    「範ちゃんのいじわる!」
     範子は笑うと教室を出て行った。
    「まったく、範ちゃんって、やっぱりどこかSの血が流れてるよ。なにか、甘いものは……」
     文子の目が小袋に止まった。
    「なんだろこれ? ……うわ、角砂糖だ。五個入ってる。ちょうどいいから、もらっちゃおうっと」
     文子は牛乳のパックの口を開くと、中に角砂糖を二つ入れた。ストローで溶けるまでよくかき混ぜる。
    「……うん、甘いミルクは、おいしいわけよ。罪悪感がスパイスになって……うん」
     そこへ、範子が戻ってきた。手にはヨーグルトドリンクを持っている。
    「ねえ、文子、わたし机に忘れ物を……ちょっ! ちょっと! あなた、なにをしたの!」
    「え? ああ、角砂糖を二つもらったよ」
    「文子! あれは、角砂糖じゃなくって、わたしのやせ薬……文子! あれを二個も飲んだの!」
    「あ……ごめん。ダイエットの健康食品だったのね」
     文子は牛乳を飲み干した。
    「健康食品どころじゃなくて……」
     駆け寄ってきた範子は、文子の手からパックをひったくった。
    「あれは、砕いて使うものなのよ。細かいかけら一粒でも抜群の消化能力が……消化能力は体積の三十乗に比例するから……」
    「そういえば、なんかおなかがすいてきたよ、範ちゃん」
     範子の顔は真っ青になった。
    「洗濯ロープ!」
     範子は文子を無理やり廊下側の壁まで引っ張っていくと、窓枠に文子をくくりつけた。

    「そして……」
     そう語る範子はどこか淋しそうだった。
    「文子はロープと椅子を噛み千切って食べてしまうと、なにもできないでいるわたしを横目に、床を食べ始め、そのまま地下に潜っていきました。文子の食欲がどこまでひどいものかはわかりませんが、地球をどんどん食べていることは間違いないでしょう。『チャイナ・シンドローム』ではありませんが、リンゴをかじる虫のように、もしかしたら今ごろはブラジルにでも……」
     範子のそばの床が、いきなりぼこっと口を開けた。
    「ただいま、範ちゃん」
    「わっ!」
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    ~ Comment ~

    Re: 茶倶楽さん

    暗く終わる回もいくつか書いたのですが、そういう回はいまいち書き終わってすっきりしないですね。

    それなので、「バカ」な終わり方にしたほうが精神衛生上も読んでいる人にとってもいいだろうと、そういう終わり方を心がけています。

    でも難しいですね。新聞の4コマを毎日書く漫画家の先生って、まさに鉄人でありプロであり才能のかたまりなんだなあ、と思います。

    NoTitle

    ギャグ小説と言うお言葉が最後の部分ですごくわかりました。
    ギャップが良いですね。変に暗くならないのが良い感じです。

    Re: れもんさん

    自販機の最大の弱点は、「取り消し」ボタンがないことでしょうなあ。

    たまにやりますね(^^)


    面白がっていただけてなにより(^^)

    NoTitle

    ボタン押し間違いあるある・・。あれ気づいた時にはもう出てきてるんですよね・・。

    面白かったです(人´∀`*)☆

    Re: limeさん

    なんだかんだいってもギャグ小説なんですからそこまで悩むこともないですよ(^^)

    ギャグとホラーとは紙一重、といいますが、書いているとたしかにどんどんホラーに接近していくのを感じますね。バランスをとるのがたいへん。

    明日のFIGHT・74ももろにホラーしてますのでよろしく(^^)

    NoTitle

    最後はまるでホラー映画のワンシーンのようで。 (^^ゞ

    昨日の作品は、コメントを書こうと20分悩みましたが、
    哲学的で奥が深くて断念しました。
    無念です。
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