「範子と文子の驚異の高校生活(ギャグ掌編小説シリーズ・完結)」
範子と文子の三十分一本勝負(ギャグ掌編小説シリーズ・完結)
範子と文子の三十分一本勝負:FIGHT・77
「漢方薬ってどう思う?」
範子がそう聞いてきた。文子は言葉に詰まった。
「漢方薬……って、あの中国の、薬草とか使うやつ? わたしは、よく知らないなあ。だって、漢方って、高いじゃない。値段が。むしろ、範ちゃんのようなお家のほうが向いていると思うよ」
「そうかしら。だって、家では、ねえ。効率と即効性優先だから、家訓が」
「家訓って、そんなもの、普通の家にはないよ。やっぱり、範ちゃんちって、お金持ちなんだね」
「そうかしら。……って、漢方のことだけど」
「漢方にこだわるね」
「だってさ」
範子は、腕を曲げると、二の腕のところをぷにぷにと握った。
「最近、どうも力が入らないし」
肩をこきこき動かす。
「身体も思うように動かないし」
腕をぐるんぐるん回す。
「なんとなく、身体全体に疲労感が残っているし」
文子にはちっともそんなふうには見えなかった。
「やっぱり、これは、身体を漢方でもとのところから改善しなくちゃいけないかなあ、って」
「気のせいだよ、範ちゃん。なんかいっていることが、更年期障害の主婦みたいになってるよ。更年期障害になるには、わたしたち、まだまだ早いよ。早すぎるよ」
「でもねえ、身体が重いのは確かだし」
範子は遠い目をした。
「もしかしたらわたし、成人病かも……」
「違うと思うけどなあ」
でも、範ちゃんって、ああ見えても、世が世なら深窓の令嬢を地で行く生活をやっていたわけだし、もしかしたらわたしみたいな平民の貧乏人よりも、肉体的にダメージを受けやすいのかな、と思う文子だった。
もしそうならば、わたしが、範ちゃんの役に立たないと。
「漢方っていうけど、やっぱり、薬草を煮出したりして、煎じ薬を作るんだよね。わたし、ハーブティーならやったことあるけど、漢方の煎じ薬って、臭いがきつくて飲みにくいんじゃないの」
「あ、それなら大丈夫。最近の漢方薬って、すでに煮出したり処理したりしてエキス状になったものが普通に使われているから」
「へええ、そうなんだ。よく売っている、なんとか漢方胃腸薬っていうものは、漢方薬っていうのはウソ八百の合成薬かと思っていたけど、それだけでもないんだね」
「なんとか漢方胃腸薬については知らないけど、病院で使われていたりするのはそうみたい」
「勉強になるなあ」
真面目にそう考えてしまう文子であった。
「……だから、お金さえ出せばたいていの薬は手に入るんだけど、それでも、ああいうのって、薬よりもお医者さんというところもあるから」
「わかるような気もするよ」
文子は、うんうんとうなずいた。
「とはいえ、電車や車を使ってわざわざ遠くの大学へ行くっていうのは、ちょっと違う気がするのよ。お金の問題じゃなくて、体力の問題で」
「法改正で漢方薬の通信販売も認められなくなったってニュースで見たよ」
「だから、難しいのよね」
範子はため息をついた。
「肩はこるし、背中は重いし、なんとかしたいんだけどもねえ」
「でも、範ちゃん、わたしが見ている限り、範ちゃんは健康なような気がするよ。病は気からっていうけど、今の範ちゃんは、まさに病は気からそのものだよ」
「そうかしら」
「そうだよ。きちんと栄養を取っていれば、病気や不調なんて向こうのほうから逃げていくよ。だから、わたしとこってりしたラーメンを食べて」
「あれはパス」
「パスか……まあいいや。栄養をつけて、生活をしっかりやれば、大丈夫だよ。ねえ範ちゃん、いつも何時に寝てるの?」
「三時かな」
「へ? さ……三時? そんなになるまで勉強しているの?」
「いえ」
範子はちょっともじもじした。
「ラジオとテレビを。それとネットも」
「……範ちゃん?」
「な、なに?」
「それで、起きる時間は?」
「六時ころ」
二人の間に、沈黙が落ちた。
「範ちゃん」
「なあに?」
「まずは、寝ることだよ範ちゃん。それのほうが早いと思うよ」
「そう?」
「漢方よりも早寝早起きだよ、範ちゃん。要するに……」
文子は言葉を切った。
「範ちゃんが悪い」
範子がそう聞いてきた。文子は言葉に詰まった。
「漢方薬……って、あの中国の、薬草とか使うやつ? わたしは、よく知らないなあ。だって、漢方って、高いじゃない。値段が。むしろ、範ちゃんのようなお家のほうが向いていると思うよ」
「そうかしら。だって、家では、ねえ。効率と即効性優先だから、家訓が」
「家訓って、そんなもの、普通の家にはないよ。やっぱり、範ちゃんちって、お金持ちなんだね」
「そうかしら。……って、漢方のことだけど」
「漢方にこだわるね」
「だってさ」
範子は、腕を曲げると、二の腕のところをぷにぷにと握った。
「最近、どうも力が入らないし」
肩をこきこき動かす。
「身体も思うように動かないし」
腕をぐるんぐるん回す。
「なんとなく、身体全体に疲労感が残っているし」
文子にはちっともそんなふうには見えなかった。
「やっぱり、これは、身体を漢方でもとのところから改善しなくちゃいけないかなあ、って」
「気のせいだよ、範ちゃん。なんかいっていることが、更年期障害の主婦みたいになってるよ。更年期障害になるには、わたしたち、まだまだ早いよ。早すぎるよ」
「でもねえ、身体が重いのは確かだし」
範子は遠い目をした。
「もしかしたらわたし、成人病かも……」
「違うと思うけどなあ」
でも、範ちゃんって、ああ見えても、世が世なら深窓の令嬢を地で行く生活をやっていたわけだし、もしかしたらわたしみたいな平民の貧乏人よりも、肉体的にダメージを受けやすいのかな、と思う文子だった。
もしそうならば、わたしが、範ちゃんの役に立たないと。
「漢方っていうけど、やっぱり、薬草を煮出したりして、煎じ薬を作るんだよね。わたし、ハーブティーならやったことあるけど、漢方の煎じ薬って、臭いがきつくて飲みにくいんじゃないの」
「あ、それなら大丈夫。最近の漢方薬って、すでに煮出したり処理したりしてエキス状になったものが普通に使われているから」
「へええ、そうなんだ。よく売っている、なんとか漢方胃腸薬っていうものは、漢方薬っていうのはウソ八百の合成薬かと思っていたけど、それだけでもないんだね」
「なんとか漢方胃腸薬については知らないけど、病院で使われていたりするのはそうみたい」
「勉強になるなあ」
真面目にそう考えてしまう文子であった。
「……だから、お金さえ出せばたいていの薬は手に入るんだけど、それでも、ああいうのって、薬よりもお医者さんというところもあるから」
「わかるような気もするよ」
文子は、うんうんとうなずいた。
「とはいえ、電車や車を使ってわざわざ遠くの大学へ行くっていうのは、ちょっと違う気がするのよ。お金の問題じゃなくて、体力の問題で」
「法改正で漢方薬の通信販売も認められなくなったってニュースで見たよ」
「だから、難しいのよね」
範子はため息をついた。
「肩はこるし、背中は重いし、なんとかしたいんだけどもねえ」
「でも、範ちゃん、わたしが見ている限り、範ちゃんは健康なような気がするよ。病は気からっていうけど、今の範ちゃんは、まさに病は気からそのものだよ」
「そうかしら」
「そうだよ。きちんと栄養を取っていれば、病気や不調なんて向こうのほうから逃げていくよ。だから、わたしとこってりしたラーメンを食べて」
「あれはパス」
「パスか……まあいいや。栄養をつけて、生活をしっかりやれば、大丈夫だよ。ねえ範ちゃん、いつも何時に寝てるの?」
「三時かな」
「へ? さ……三時? そんなになるまで勉強しているの?」
「いえ」
範子はちょっともじもじした。
「ラジオとテレビを。それとネットも」
「……範ちゃん?」
「な、なに?」
「それで、起きる時間は?」
「六時ころ」
二人の間に、沈黙が落ちた。
「範ちゃん」
「なあに?」
「まずは、寝ることだよ範ちゃん。それのほうが早いと思うよ」
「そう?」
「漢方よりも早寝早起きだよ、範ちゃん。要するに……」
文子は言葉を切った。
「範ちゃんが悪い」
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