「範子と文子の驚異の高校生活(ギャグ掌編小説シリーズ・完結)」
範子と文子の三十分一本勝負(ギャグ掌編小説シリーズ・完結)
範子と文子の三十分一本勝負:FIGHT・78
放課後の紅恵高校の教室であった。
「範ちゃん、それが?」
「そうよ」
範子は胸を張った。
「最新鋭のブルーレイ対応、モニタつき超小型DVDプレイヤー」
ふたりの目の前には、そのプレイヤーとやらが鎮座ましましていた。
範子の講釈が続く。
「このモニタつきプレイヤーのすごいところは、画面やDVDの差込口まで二つ折りにできることで、これにより小型化を」
「でもさ、最近のはやりって、インターネットからソフトをダウンロード購入することじゃないの?」
文子のツッコミに、範子はぐっと詰まった。
「インターネットでは、高画質高音質のソフトは手に入りにくいわ。だから」
「ふーん。でも高いんでしょう? 値段」
「まあぼちぼち。安いバイクが買えるくらいだってお父様がいっていたわ」
「ふーん」
文子は疑わしそうな声を出した。
「範ちゃん、これって、高画質のソフトを見るための機械なの?」
「そうよ」
「だったら、大きなテレビで、大画面で見たほうがいいんじゃないの? この画面サイズだと、たぶん画面がつぶれて画像もなにもわからなくなってるんじゃないかと思うよ」
「文子」
範子は声を震わせた。反論できずに口惜しい、と顔には大書されていた。
「……世の中のどんなものにでも、それを生み出した人たちの、汗と涙と血の刻印が押されているものなのよ」
「……ごめん、範ちゃん」
文子は答えた。範子の自慢話につきあってあげるのも、友達として当然の話だからである。
「さて、で、これからブルーレイを見ることにしましょう」
「わー」
文子はとりあえず拍手をした。
「考えてみれば、文子とこうして映画見るの、はじめてね」
「で、なにを見るの?」
「ふふふ。これよ」
範子は鞄からディスクを取り出した。
「『空飛ぶゆうれい船』」
文子はバランスを崩し、机に頭をぶっつけた。
「な、なんなのそれ! いつの作品なの範ちゃん!」
「今を去ること四十年近く前……」
「……………………」
「あ、でも、テーマは普遍的で物語は面白いから、大丈夫よ、文子」
「アニメでも、せめてジブリとかガンダムとかはできなかったの、範ちゃん?」
「文子、石森章太郎先生をバカにしてるでしょ」
「石ノ森じゃなかったっけ?」
「昔は石森っていってたのよ」
範子は机を平手で叩いた。
「とにかく、面白いんだから見る! ゲルマンの不屈の意志で戦え! 撤退は許さん!」
「ヒトラーみたいなことをいうんだね範ちゃん」
文子は観念した。
「じゃ、さっそく見ようよ、『空飛ぶゆうれい船』」
「ディスクを入れるわね」
プレイヤーが回り出した。
……………………
「あっ! ゴーレムが街を破壊している! やっちゃえやっちゃえ!」
「文子、髪を引っ張るのはやめて」
……………………
「うぬぬぬぬなんて悪辣な敵なんだろう。こんなやつら、こうしてこうして」
「文子、わたしを叩いてもしかたないってば」
……………………
「がんばれゆうれい船! そこだ! いいぞ! 撃て! そこそこ! やれ!」
「ちょ、ちょっと、文子、痛い痛い痛い」
……………………
「面白かった! いい映画教えてくれてありがとう、範ちゃん!」
「文子……」
制服がぼろぼろになった範子は、息も絶え絶えにいった。
「あなたと映画とか見るの、しばらくよすわ、わたし……」
「範ちゃん、それが?」
「そうよ」
範子は胸を張った。
「最新鋭のブルーレイ対応、モニタつき超小型DVDプレイヤー」
ふたりの目の前には、そのプレイヤーとやらが鎮座ましましていた。
範子の講釈が続く。
「このモニタつきプレイヤーのすごいところは、画面やDVDの差込口まで二つ折りにできることで、これにより小型化を」
「でもさ、最近のはやりって、インターネットからソフトをダウンロード購入することじゃないの?」
文子のツッコミに、範子はぐっと詰まった。
「インターネットでは、高画質高音質のソフトは手に入りにくいわ。だから」
「ふーん。でも高いんでしょう? 値段」
「まあぼちぼち。安いバイクが買えるくらいだってお父様がいっていたわ」
「ふーん」
文子は疑わしそうな声を出した。
「範ちゃん、これって、高画質のソフトを見るための機械なの?」
「そうよ」
「だったら、大きなテレビで、大画面で見たほうがいいんじゃないの? この画面サイズだと、たぶん画面がつぶれて画像もなにもわからなくなってるんじゃないかと思うよ」
「文子」
範子は声を震わせた。反論できずに口惜しい、と顔には大書されていた。
「……世の中のどんなものにでも、それを生み出した人たちの、汗と涙と血の刻印が押されているものなのよ」
「……ごめん、範ちゃん」
文子は答えた。範子の自慢話につきあってあげるのも、友達として当然の話だからである。
「さて、で、これからブルーレイを見ることにしましょう」
「わー」
文子はとりあえず拍手をした。
「考えてみれば、文子とこうして映画見るの、はじめてね」
「で、なにを見るの?」
「ふふふ。これよ」
範子は鞄からディスクを取り出した。
「『空飛ぶゆうれい船』」
文子はバランスを崩し、机に頭をぶっつけた。
「な、なんなのそれ! いつの作品なの範ちゃん!」
「今を去ること四十年近く前……」
「……………………」
「あ、でも、テーマは普遍的で物語は面白いから、大丈夫よ、文子」
「アニメでも、せめてジブリとかガンダムとかはできなかったの、範ちゃん?」
「文子、石森章太郎先生をバカにしてるでしょ」
「石ノ森じゃなかったっけ?」
「昔は石森っていってたのよ」
範子は机を平手で叩いた。
「とにかく、面白いんだから見る! ゲルマンの不屈の意志で戦え! 撤退は許さん!」
「ヒトラーみたいなことをいうんだね範ちゃん」
文子は観念した。
「じゃ、さっそく見ようよ、『空飛ぶゆうれい船』」
「ディスクを入れるわね」
プレイヤーが回り出した。
……………………
「あっ! ゴーレムが街を破壊している! やっちゃえやっちゃえ!」
「文子、髪を引っ張るのはやめて」
……………………
「うぬぬぬぬなんて悪辣な敵なんだろう。こんなやつら、こうしてこうして」
「文子、わたしを叩いてもしかたないってば」
……………………
「がんばれゆうれい船! そこだ! いいぞ! 撃て! そこそこ! やれ!」
「ちょ、ちょっと、文子、痛い痛い痛い」
……………………
「面白かった! いい映画教えてくれてありがとう、範ちゃん!」
「文子……」
制服がぼろぼろになった範子は、息も絶え絶えにいった。
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逆襲ですな。
こんな風にするのはアメリカ人らへんだけかと思っていたのですが
そうでもなかったんですねww
こんな風にするのはアメリカ人らへんだけかと思っていたのですが
そうでもなかったんですねww
- #1646 ねみ(Why did you do?)
- URL
- 2010.07/22 01:21
- ▲EntryTop
Re: トゥデイさん
ブルーレイ化は無理でしょう。これまでのVHSのときもLDのときもDVDのときも、必ず、網からもれて入手不能になる作品はありましたからねえ。
「燃えろ! ロボコン」は見ていません。だって、リメイク作品の大半って、「つまらない」んだもん。
家で昔の映画を見るんだったら、ブルーレイでなくてもいいような気がしますがねえ。DVDで……。
「燃えろ! ロボコン」は見ていません。だって、リメイク作品の大半って、「つまらない」んだもん。
家で昔の映画を見るんだったら、ブルーレイでなくてもいいような気がしますがねえ。DVDで……。
この前、特撮雑誌にゴジラブルーレイ化計画の記事がありましたね。
果たして昔の名画みんなブルーレイ化できるか。
石ノ森先生と言えば仮面ライダーですが、一応ロボコンも観てました。ポワトリンは知らない。
旧版と新版の採点方法の違いに凄いジェネレーションギャップ感じました。
果たして昔の名画みんなブルーレイ化できるか。
石ノ森先生と言えば仮面ライダーですが、一応ロボコンも観てました。ポワトリンは知らない。
旧版と新版の採点方法の違いに凄いジェネレーションギャップ感じました。
- #1644 トゥデイ
- URL
- 2010.07/21 10:21
- ▲EntryTop
覚え書き
「空飛ぶゆうれい船」は、ある程度の年齢の人間だったら、幼少期に見て精神形成に大きな影響を与えているはずの作品である。
わたしは封切り時には生まれておらず見られなかったが、テレビ放映で見ておびえた覚えがある。
レンタルDVDで見直して、そのストーリーを堪能したのが数年前。うーむやっぱりすごい作品だ。
ちなみに2010年7月現在ブルーレイソフトは出ていません。
わたしは封切り時には生まれておらず見られなかったが、テレビ放映で見ておびえた覚えがある。
レンタルDVDで見直して、そのストーリーを堪能したのが数年前。うーむやっぱりすごい作品だ。
ちなみに2010年7月現在ブルーレイソフトは出ていません。
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Re: ネミエルさん
世の中にはエキサイトする人がいるものであります。