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    「範子と文子の驚異の高校生活(ギャグ掌編小説シリーズ・完結)」
    範子と文子の三十分一本勝負(ギャグ掌編小説シリーズ・完結)

    範子と文子の三十分一本勝負:FIGHT・80

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     放課後の紅恵高校の教室。
    「あ、かわいい!」
     文子は写真を見て、声を上げた。
    「かわいいでしょ。これを見られるなんて、文子はついているわよ。なにせ、これ、まだ発表されていないものだから」
    「発表されていない?」
     文子は、写真を見て首をかしげた。
     写っていたのは、なにか白い石に刻まれた、生物と思えるものの像だった。ふわふわでもこもこした毛皮に、大きな丸い目と、ちんまりした手足がついている。
     バイキンをモチーフにした有名なファンシーキャラクターを、さらにもう一段かわいくさせたようなもので、文子ならずとも母性本能を刺激させられるものだった。
    「これ、なんなの?」
    「木星軌道上からこの前戻ってきた、探査機の『はなぶさ』については知ってるわね?」
    「うん。木星の輪に接近して、サンプルを集めて帰ってきたやつでしょう? 帰るまでに三十年かかったとかっていってたよね。国連の事務総長までが大騒ぎしてたね」
    「あれが絵文字の刻まれたディスクとともに拾ってきた、地球外生命体の作ったものと確実に推定できる、初めてのレリックなのよ」
    「レリック……?」
    「遺物のことね」
     範子は文子から写真を受け取ると、大事そうに自分のノートにしまった。
    「今日にでも全世界に発表されることになってるわ。わたしのところには、つてというやつで、ちょっぴり早く回ってきたの。こういうときは、財閥の娘も、いいわよね」
     そうしゃべっていると、範子の携帯が鳴った。
    「はい。わたしです。……え? はい。はい。わかりました」
     携帯を閉じた範子は、ちょっと疲れた顔をしていた。
    「どうしたの、範ちゃん?」
    「あの像を、ロケットで宇宙へ放り出すことが決まったんだって」
    「どうして?」
    「付属のディスクの文字が、量子推論コンピュータのフル活動でうっすらとながら解読されたのよ。それによれば、この像は、『置いてあるだけでも危険』な、『邪悪の象徴』だから、宇宙へ放り出した、と書いてあるらしいのよね。危険を冒すことはないというので、写真を撮れるだけ撮り、3Dモデルのデータを取ってから廃棄だって」
    「ほんとなの?」
    「そうみたいよ」
     ふたりは、黙った。
    「ねえ、範ちゃん?」
    「なあに?」
    「思うんだけどさ、あの像を作った人たちにとっては、あれが邪悪の象徴に見えるわけだよね」
    「そうよね」
    「もしだよ、もし仮にだよ、あの像を作った人たちの美的感覚が、わたしたちとまるで違うものだったらどうなるかなあ?」
    「なにがいいたいの?」
    「誰か天才的な芸術家が、『邪悪』そのものを具象化させたような、見るだけでその人たちを発狂させてしまうようなものすごい像を作ったとしてもさ、その像を地球に運んできたら、みんながかわいいって思うこともあるかもしれないわけだよね」
    「そうなるわね」
    「だとしたら、その像を捨てるのは間違ってるよね。ただの像だもん」
    「そうね」
    「もしかしたらさ、わたしたちが悪だとか化け物だとかっていってるものは、みんなそんなものなのかもしれないよ。宗教においても、思想においても……」
    「そうかもね」
     二人は、お互いに、どこか淋しい笑みを漏らした。
     だが……。
     範子は思う。
     もし、宇宙人が、この地球にあふれる「かわいいグッズ」を、悪魔かその化身のような忌まわしいものとして、宗教的正義のために襲撃してきたら、どうすればいいのだろうか?
     避ける手段はあるのだろうか?
     そして、もしわたしたち地球人類が侵略者としてそのような行為に出たら……。
     ファースト・コンタクトの日は、もうぶっつけ本番で行くしかないだろう。
     われわれは発見してしまったのだから。無知のゆりかごは、もうない……。
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    ~ Comment ~

    Re: ネミエルさん

    そうもいかないのが人間のどうしようもないところで。

    国境も宗教も人種さえもなくなってしまっても、

    「お前は巨人ファンだ」「阪神ファンだ」で殺し合いを始めかねないのが人間であります。

    それがいやなら某エヴァの「人類補完計画」にいくことになるのですが、あれってどう考えても「人間」の目指すべきところじゃないだろ、というのがまた難しいところで……。

    NoTitle

    宗教とは常に難しいものですよね。
    キリストしかり、イスラムしかり。

    宗教がなければ紛争なんてないと考えてしまいます。
    国境、宗教。
    これがなければ世界平和じゃないかな
    • #1662 ねみ(Why did you do?) 
    • URL 
    • 2010.07/24 00:42 
    •  ▲EntryTop 

    Re: れもんさん

    「ド○えもん」や「ア○パン○ン」や「キ○ィちゃん」が悪魔の化身に見えるエイリアンとコンタクトしたら、どうなるか考えたくもないですな(笑)

    あ、そうそう。わたしが大好きな「バ○キンくん」も(^^)

    Re: LandMさん

    宗教や価値観の対立がどれほど悲惨な結果をもたらすかを描ききった作品として最初に思いつくのが、富野監督の「伝説巨神イデオン」ですね。

    しかし、実際は、あそこまでいく前の段階でのっぴきならない泥沼にはまるものである、ということをこれ以上ないほど明らかに描いたのが、筒井康隆先生の傑作短編SF「最悪の接触(ワースト・コンタクト)」ですね。友好的な宇宙人でさえこれですからねえ……異文化交流は難しい。

    NoTitle

    ああ、確かに!
    ――って、ちょっと納得・・・

    これは怖いですね。。w
    か、かわいいグッズ・・(lll゚Д゚)

    NoTitle

    宗教や価値観の相違はぶっちけ本番しかあり得ないような気がしますけどね。本当に。まさに『触らぬ神に祟りなし』とはいったものですね。今回はそういうキャッチフレーズなお話でしたね。

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