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    「範子と文子の驚異の高校生活(ギャグ掌編小説シリーズ・完結)」
    範子と文子の三十分一本勝負(ギャグ掌編小説シリーズ・完結)

    範子と文子の三十分一本勝負:FIGHT・84

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     夏期講習はさらに続く。山のような問題集を明日までに解いてこなければならなくなった範子と文子であった。
     講習後も教室に居残り、二人で知恵を合わせて、なんとか問題集の解答欄を埋めようとしたのではあるが……。
    「暑いね」
    「暑いわ」
     範子は問題集をぱたりと閉じた。シャープペンシルを投げ出す。
    「もう、やめたやめた! こんな暑苦しいところで宿題したって、問題が解けるわけがないわ。もっと、涼しいところで勉強しましょう」
    「ってことは?」
    「うちよ、うち。うちでクーラーがきいている中でやったほうが絶対にはかどるから。じいやが氷砂糖と、しそのほかに秘伝のハーブを加えて漬けた梅ドリンクもあるし」
    「そうだね。帰ろうか!」
    「そうしましょう」
     二人は教室を出て家路に着いた。第八十四回終わり。

     ……と、ここで終わらせてしまったら暴動が起こるので、二人にはちょっとした試練を……。

    「文子」
    「なあに、範ちゃん?」
    「うちの学校って、四階建てだったっけ?」
    「三階に決まっているよ、範ちゃん。昔から三階建てだよ」
    「そうよね……でも、わたしたち、教室を出てから、階段を三回分降りているのに……」
     文子は暑さに煮えそうな頭で廊下を見、悲鳴を上げた。
    「二年生の階、二階じゃない!」
    「そうよ」
     範子は硬い表情でいった。
    「何者かが、邪悪な意図を持った何者かが、わたしたちを帰らせまいとしているのよ」
     文子はきょろきょろと周囲を見た。
    「窓から出たらどうかな」
     範子はかぶりを振った。
    「危険すぎるわ。落ちたらまず間違いなく足をくじくし、悪ければ骨折ね。あくまでも最後の手段にしておきましょう」
    「じゃ、緊急避難用の避難袋を」
    「あんな片付けるのに苦労するものを出したら、わたしたち、責任問題で謹慎三日は食らわなくてはならないわ。それも最後の手段ね」
    「じゃ、どうするの?」
    「決まってるわ」
     範子はポケットから携帯を取り出した。
    「まずは外部に連絡するのよ」
    「そうだね、そうだよね範ちゃん。やっぱり範ちゃんは冷静だなあ」
     文子が見守る中、範子は携帯のボタンを押した。
     その顔がしかめられた。
    「反応がないわ」
     あわてて、文子も自分の携帯を取り出した。
    「範ちゃん、たいへんだよ、時計が動いてない!」
     範子も自分の携帯を確認した。ついでに腕時計も確かめる。
    「おそらく……」
     範子はぽつりといった。
    「相手は、わたしたちを本気で帰らせたくないみたいね」
    「どうしよう、範ちゃん」
    「ここで立っていてもしかたがないわ。どこか、座れるところへ行きましょう」
     二人は、廊下のすぐそばにある、「2‐A」と書かれた教室に目をやった。

    「どうしよう」
     とりあえず2‐Aには戻ってきたものの、なにをするという当てもない。文子は頭を抱えた。
     範子は腕時計を外して、机に置いた。
    「秒針も分針もぴくりとも動かないわ」
     範子は問題集を取り出した。
    「動き出すまで、なにかで暇を潰すほかないわね」
    「てことは……」
    「問題集を解いて解いて解きまくるわよ。もうやけくそよ」
     二人は、問題集を開き、ああでもない、こうでもない、あつい、しぬ、とつぶやきながらシャープペンシルを走らせた。

    「終わったね」
    「全部片付けちゃったわね。やろうと思えばやれるものね、わたしたち」
     二人の目の前には、最後の空欄まで埋められた問題集があった。
     ふと、文子は窓の外を見た。
     きれいな夕焼け空になっていた。
     はっと文子は友人の時計を見た。
    「範ちゃん、動いてる、動いてるよ、この時計!」
    「ということは……」
    「出られる!」
     二人は急いで荷物をまとめた。
    「ねえ、文子、もしかしたらわたしたちをここに引きとめた存在って……わたしたちに溜まった問題集を全部さっさと終わらせることで、夏休みをエンジョイさせてくれようとしたのかな?」
    「きっとそうだよ、範ちゃん!」
     とはいえ。この問題集が全部終わったからといって、明日以降も夏期講習に参加しなくてはいけないのは変わらない。
     それに、問題集は二人の家にまだまだどっさりあるのだ。
     しかも、暑い中、疲弊した頭で解いた問題は間違いだらけで、二人は先生とクラスメートの前で大恥をかくことになる。
     世の中そううまい話ばかりではないのだ。ふっふっふっ。
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    ~ Comment ~

    Re: LandMさん

    わたしは宿題は8月末に徹夜でやるタイプでした(^^;)

    そちらのほうが人間らしいと思います。(←そうか?)

    Re: ネミエルさん

    みんなそう思うんだよ……。

    ふう……(遠い目)

    NoTitle

    夏休みの宿題はいつも7月にすべて終わらせていましたけどね。それで思う存分遊んでいましたね。その方が楽なので。直前にやるより、早めにやった方が気が楽ですしね。
    …とほのぼの思っておりました。LandMです。
    またメール送っておいたので、よろしくです。

    NoTitle

    宿題・・・?((((ノ≧▽≦)ノキャッキャ

    しらんなぁーふぅーはははっ!

    とりあえず夏の初めに終わらせよう

    そうしよう
    • #1689 ねみ(Why did you do?) 
    • URL 
    • 2010.07/27 23:28 
    •  ▲EntryTop 

    Re: 茶倶楽さん

    時間が止まるのは(というより、時間の流れの外へ出るのは)エキサイティングなことだと思います。

    ……いつかは動き出す確信が持てればですが。

    時間が止まるショートショートで好きなのは、眉村卓先生の「一分間だけ」ですね。あの最後のオチはなかなか皮肉で怖くてペーソスを感じていいと思うのですが……読んだことはないですか?


    大丈夫といえるようになられてよかったです(^^)

    NoTitle

    仕事が忙しい時に時間が止まったら少し嬉しいかも等と思ってしまう私は既に穢れてしまったのでしょうか。
    その節はご心配お掛けしました。もう大丈夫です。色々とありがとうございました!

    Re: トゥデイさん

    沖縄とか九州とかの話ですか。

    そこまでしてもらっていて成績が落ちたらもうなにをかいわんやですねえ。

    昔は冷房がついているというだけで予備校なんていいところだと思っておりましたが……時代やなあ。

    暑さの中やった作業には後から見るとなんでこんな事したと思うような間違いがあったりしますよね。
    我が母校にも今年エアコンがついたらしい。羨ましいぞ後輩。
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