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    ホラー

    ぼくの大すきな先生

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       ぼくの大すきな先生

     ぼくのクラスのたんにんの先生はすごい人です。
     ぼくはそんな先生が大すきです。
     先生は、理科がとてもとくいです。まい朝、ぼくたちに、生物のしん化の話をしてくれます。カンブリアきから、今になるまで、どうやって生物がしん化してきたかの先生の話はテレビなんかよりもずっとおもしろくて、ぼくはついむ中になってしまいます。
    「三よう虫も、アンモナイトも、きょうりゅうも、みんなさかえたあとには死んで行った。なぜだかわかるかい」
     先生は、いつもぼくたちにそうしつ問します。さいしょにそう聞かれたとき、ぼくは答えられませんでした。
     答えられないぼくたちを見て、先生はにっこりわらいました。
    「それはね。あとにつづくよりよい物に、生きる場所をよういしておくためなんだ。あとから出てくるものに負けてほろぼされたように見えても、それは自分からせきをゆずる、とてもとうといおこないなんだよ。君」
     先生はぼくをさしました。
    「君が新しい自てん車を買ってもらったとする。古い自てん車はどうする?」
    「すてます。……つらいけど」
     先生はうなずきました。
    「そうだ。その、つらいと思う気持ちが大事なんだ。つらいことを、自分からおこなうことは、とてもとうといことだ。……わかるね」
    「はい!」
     ぼくは大きな声でそう答えました。
     また、こんなこともありました。
     アサガオをそだてていた時です。
     秋がきて、花も実も落ちて、アサガオはかれてしまいました。
     ぼくは悲しくなって、うえ木ばちの前で泣いていました。
     すると、いつの間にか先生がやってきました。
     先生は、ぼくのかたに手を置きました。
    「かなしいのかい」
     ぼくは、涙をふきながら、
    「そうです」
     と答えました。
     先生は、やさしい声で、
    「先生は、君にいったいなんていったかな」
     といいました。
     ぼくには、先生のいいたいことがよくわかりました。
    「死ぬというのは、あとにつづくよりよい物のために、場所をゆずることだっていいました」
     先生は、ぼくの頭をぐしゃぐしゃとなでました。
    「そうだ。よくおぼえていたね。それはとてもとうといことだということも、わすれないでおくんだよ」
     ぼくはそのことばをしっかりむねにきざみこみました。
     先生がすばらしいのは、それだけではありません。
     先生は、この町のおじいさんやおばあさんがこまっていると、すぐにかけつけて助けてあげているのです。
     先生が、おじいさんやおばあさんのいる家へと入っていくのを、ぼくは何回も見ています。家ぞくの人が、先生に、ていねいに何度もおれいをいっているすがたを、ぼくはわすれることができません。
     そして、そんな家では、必ずといっていいほど、すぐあとにおそう式があるのです。元気なように見えたおじいさんも、長いこと寝たきりのおばあさんも、みんなすぐに死んでしまうのです。
     そんなおじいさんたちをたずね続けることをかかさない先生は、やっぱりすごいと思います。
     先生がいつも読んでいる、昔のドイツのえらい先生が書いた『「生きるに値しない命」とは誰のことか』とかいうむずかしい本を読めば、いつかはぼくにもできるようになるのかな。
     ぼくは先生が大すきです。大人になったら、ぜったい先生のような大人の人になるつもりです。
     それがぼくのゆめです。
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    ~ Comment ~

    Re: レバニラさん

    こちらでははじめまして。

    いや我ながらお恥ずかしい小説群で(^^;)

    ハートキャッチが落ち着いたらプリキュア話で盛り上がりたいですね(^^)

    その先生、大胆なことをおっしゃられましたねえ。

    わたしが子供だったら、トラウマになっていたかもしれません(^^;)

    でも、それくらいの根性がないと、世の中を渡っていけないのかもしれませんね。

    いろいろと考えさせられました。

    また来てくださいね~♪

    NoTitle

    こちらには初めてコメントいたします、
    凄いですねポールさんって、ほぼ毎日こうしたバラエティー豊かな小説を書いてらっしゃるんですから。

    特に今回、拝読しました「ぼくの大すきな先生」には、ちょっと郷愁めいた感情が呼び起されました。
    昔、自分が住んでいた所は山深い農村で、人里離れた村でしたので病人が出ても、すぐに救急車が来てくれずに死んでしまう人も多かったのですが、
    自分が小学生の時、同級生が急な腹痛の末に死んでしまって、みんながショックを隠せないでいる中、
    その日、先生はみんなの前でこう言ったんです。

    「○○君は、きっとみんなに命の尊さを知らせたかったんだよ、命懸けで・・・」

    ・・・若い先生だったけど、今でもちゃんと教師続けてるかな・・・?
    なんて事をポールさんの小説読みながら思ったりしてました。

    Re: ヒロハルさん

    すみません心温まらなくて(^^;)

    これを書いたときは、たしか優生学がどうこう、とかニュースで取り上げられていたような記憶があります。

    書いてからしばらくして、何気なく読んだ新刊紹介記事に、『「若者奴隷」時代 “若肉老食(パラサイトシルバー)”社会の到来』なるものがあって慄然としました。こんな暴論がコンセンサスを得たら、そのうち藤子F先生の傑作「定年退食」みたいなディストピア社会が来るかもしれません。

    世の中どうなることやら……。

    素晴らしかったです

    書き出しの部分から察するに
    とても心温まるお話なんだろうと思っていたのですが、
    そういう結末ですか・・・・・・。

    子供の視線で書かれているので、
    怖いというわけではないのですが、本質的な恐ろしさがじわりと滲んでくる感じで素晴らしかったです。

    Re: トゥデイさん

    「言うことを聞く子」はぐぐってみたらあらすじがわかりましたが、「けんた君」は調べがつきませんでした。

    怖い話なんですか?

    Re: ネミエルさん

    わたしは今のところ常にいつものわたしですが……(^^)

    ふむむ?

    来ましたよ久々の短編。最近物足りなかったので嬉しい。
    「ホラー」なんてジャンル分けあったか?と思ったら分け直したのですか。
    しかももう一つがあの「スキンシップ」どっちも子供絡み…
    そういや「けんた君」「言うことを聞く子」なんかも子供出てくるゾッとする話でした。
    うむ、今のテレビには怖い子供が足らん。

    NoTitle

    よかった
    いつものポールさんだ

    よかった
    いつもの(ry

    安心しました
    • #1710 ねみ(Why did you do?) 
    • URL 
    • 2010.07/29 23:49 
    •  ▲EntryTop 

    Re: 茶倶楽さん

    老害を一掃するといったらたしかに一見いいアイデアに思えますが、

    与野党問わず、

    「今どきの若い議員」

    に政治を任せたらどうなるか、考えただけでも恐ろしいでありますガクガクブルブル。

    NoTitle

    相変わらずの落ちで安心? しましたw
    証拠が残らなければ罪には問われませんし、こうやって立派な後継者もできたし……。
    先生を永田町あたりに派遣しておいて下さい。

    Re: limeさん

    序盤に書いていることは、いかにも「哲学」らしい擬似哲学というやつでして、権力者に都合のいい世迷言に過ぎません。

    ホラーが似合うって……わたしどういう顔をすれば(^^;)

    短編をいっぺん書いてみたいって……。
    limeさんがいつも書いているのは、てっきり「連作短編」というやつだとばっかり思っておりました。でもたしかに、長編と連作短編の違いはあいまいですよね。

    ノン・シリーズの単発作品も、これはこれで書くのは面白いですよ。
    limeさんの単発短編、わたしも読んでみたいです♪

    Re: ミズマ。さん

    うわーってなってくれてありがとうございます。

    ああいう人が英才教育を始めたら、ナチスみたいな輩が増えるんでしょうなあ……。

    まあ昨日おとといに比べればすごしやすいですけど、今日も今日で蒸し暑いと思うんですけど……(^^;)

    NoTitle

    哲学だ!と、思ったら、やっぱりホラーでした・笑
    やっぱりポールさん、ホラーが似合う。
    こういう、明るい感じで始まったら、危険ですね?

    でも、短編って面白そうですね。
    一度書いてみたいな・・・。

    うわー!
    いい話かと思ったら、うわーッ!

    「ある意味英才教育じゃないか」
    とか思ったりしました。

    今日は十分涼しいですよ!
    猛暑のときに読みたかったなぁ。

    納涼ホラー特集第一弾です

    このところ暑くて頭も身体も煮えるようなので、発表作品のうちからとりあえず涼しくなりそうなものを選びました。

    どうかな?

    mixiのアプリ「本格小説」のわたしの作品からの再録です。
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