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    「範子と文子の驚異の高校生活(ギャグ掌編小説シリーズ・完結)」
    範子と文子の三十分一本勝負(ギャグ掌編小説シリーズ・完結)

    範子と文子の三十分一本勝負:FIGHT・87

     ←範子と文子の三十分一本勝負:FIGHT・86 →ご自由にお持ちください
    「範ちゃあん、この棒、どこに置いとけばいい?」
    「どこでもいいわよ」
     誰もいない、夏休みの紅恵高校の教室。範子は不機嫌な声で文子に答えた。
    「でも、邪魔だよ、これ」
    「邪魔なのはわかってるわよ。それに、それは『棒』じゃなくて、『杖』。ほら、しっかりした作りになっているでしょ?」
     それに、と続ける。
    「それに、この杖をなくしたりすると、また怒られかねないのよね。うちには、けっこうな価値のあるものが、妙にごろんと置いてあったりするから。家族全員、どこかちゃらんぽらんなのよ、まったく」
     文子は、範子のいうところの「杖」を、しげしげと見た。
    「そういえば、古びていて、とてもその、なんか……味があるね」
    「味じゃなくて、たんにボロいだけよ」
     範子はぶつぶつといった。
    「たぶん、誰かがうっかりして、傘たてに突っ込んだのね、きっと」
    「で、今朝がた寝坊した範ちゃんが、うっかり傘と間違えて持ってきたと。サ〇エさんみたいだね、範ちゃん」
    「伏字になるようなことはいわないの。さ、今日も早くできる限り宿題を終わらせてしまいましょ。文子、入院していたから、問題集がろくに進んでいないんでしょ?」
    「でも、この杖が」
    「貸しなさいよ」
     範子は文子から杖をひったくった。
    「まったく、このわたしが、傘と間違えてこんなボロい杖を持って来るからいけなかったのよ……えい腹が立つ」
     範子は杖でどん、と教室の床を突いた。
     こんこんと泉が湧き出てきた。
    「え……」
     二人は顔を見合わせた。
    「な、なにこれ? 水道管の破裂? ……じゃあないわよね」
    「たぶん、違うと思うよ、範ちゃん」
     二人は杖をまじまじと見た。
     どん、と床を突く。
     ふたたびこんこんと湧き出る清らかな水。
    「範ちゃん……」
    「文子……」
     二人は、異口同音に叫んだ。
    「これって、もしかして、弘法大師の杖?」
    「ど、どうしよう、範ちゃん、こんな貴重な物、国宝クラスだよ」
    「国宝……たしかに、国宝ね。サハラやタクラマカンやオーストラリアの砂漠地帯とか旱魃地帯とかに送ったら、たぶんすごく喜ばれると思うけど……」
     今は。
    「この水を止めないと、教室中が水浸しになっちゃう!」
     すでに事態はそうなりつつあった。破滅への道を止めるには、なんとかしてこのあふれる水を止めなければならない。
    「どうしよう。範ちゃん、マニュアルとか持ってない? この杖の」
    「あるわけないでしょ、文子。それに、当時はまだカタカナができていないから、マニュアルがあったとしてもものすごい漢文で、たぶんわたしたちには辞書があってもちんぷんかんぷんよ」
    「じゃ、じゃあ、逆向きで突いてみたらどうかなあ」
    「それ、いいかも、貸してみて。じゃ、行くよ」
     範子は杖の持ち手で湧き出る泉を突いた。
     二人の見守る前で、変化はあった。
    「……………………」
    「……………………」
    「お湯になってどうするのよ!」
     泣きそうな顔で範子は叫んだ。
    「範ちゃん、温泉宿を開けば、たぶんもうかるよ」
    「そんな話をしてるんじゃないわよ! なにかいいアイデアは……」
    「携帯」
     範子ははっとした。
    「そうよ、うちの家族に聞けばよかったんだわ」
     範子はポケットから携帯を取り出すと、家にかけた。
    「三太夫? わたし。範子。実は家に置いてあった、泉の湧き出る杖をかくかくしかじか……うん。うん」
    「なにかわかった?」
    「だめね。この泉をもとに戻すには、儀式をやってありがたいお経を唱えなくちゃいけないみたい」
    「それじゃ……」
    「でも、これ以上水があふれない方法は教えてもらったわ」
    「どうするの?」
    「こうするのよ」
     範子は、泉に顔を近づけた。
    「弘法大師様……なんか、くうかい?」
     冷たい風が吹き抜けるのを二人は感じた。
     気がつくと、泉はものの見事に凍りついていた。
    「範ちゃん、これがほんとの、冷えい山だね」
     文子はいった。
     その後二人の間で繰り広げられたしょうもないダジャレの応酬に関しては省略する。
     ああ、夏だけど涼しいなあ。
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    ~ Comment ~

    Re: ネミエルさん

    寒いダジャレの中でも横綱級ですからな、「空海さん、くうかい?」は……。

    これからシリーズにはさらに寒いダジャレとギャグが(ぇ)

    NoTitle

    駄洒落やられました

    空海でも食うかいというのは結構クラスでもはやってましてねb
    弁当のときとかでもそう・・・

    いやーな寒い空気が・・・
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