「範子と文子の驚異の高校生活(ギャグ掌編小説シリーズ・完結)」
範子と文子の三十分一本勝負(ギャグ掌編小説シリーズ・完結)
範子と文子の三十分一本勝負:FIGHT・88
『みなさんこんにちは。スーパー・スペース・プロレスリングの時間です、今、熱気渦巻く紅恵高校2‐A教室からお届けしております。アナウンサーを勤めさせていただきますわたくしは、ポポイラ星ヒレレバ工業大学地球文明研究同好会の宇奈月範子であります。わたくしの隣にいるのは、解説をしていただく、ポポイラ星ヒレレバ工業大学地球文明研究同好会の下川文子さんです。下川さん、今回の試合の見所はどこでしょうか?』
『闘志をみなぎらせた二人の選手ですね。いずれも地球の紅恵高校ではそれと聞こえた猛者、アヤコ・ザ・ジャイアントとアントニオ・ノリコ、これは名勝負が期待できますよ』
『そうですか。さあ、いよいよゴングが鳴ろうとしています』
「範ちゃん、わたしがここに置いといたフルーツ牛乳のパック知らない?」
「ごめん文子、喉が渇いたので飲んじゃった」
「な……範ちゃん!」
かぁん!
『さあ、ゴングが鳴りました! アヤコ・ザ・ジャイアント、猛烈な勢いで相手に向かって突撃していきます!』
「範ちゃん、なんてことするのよ! あのフルーツ牛乳は、わたしが飲もうと楽しみにしていたのに!」
「ごめん、ごめん、後で必ず返すから」
『どう見ますか、下川さん』
『これは、アントニオ・ノリコ選手、さすがベテランですね。アヤコ・ザ・ジャイアント選手のやり場のない怒りを、うまくかわしました』
『なるほど。アヤコ・ザ・ジャイアント選手の怒りは、これからどこに向かうでしょうか?』
『そうですね。金銭面について攻撃すると思います』
「範ちゃん、じゃ、飲んだぶんの百円ちょうだい。もう一度下へ行って、買ってくるから」
「ごめん……今、手持ちの小銭がないのよ」
『見事な切り返し! これは痛い! ノリコ選手の痛烈な反撃に、アヤコ選手は多大なダメージを受けて倒れました! ノリコ選手、すかさずフォールに入る!』
「だからさ、明日にでも自販機で……」
「わたしは暑くてたまらないからあのジュース買ったの!」
「じゃ、わたしの借りということにしておいて」
「それじゃわたしの喉の渇きはおさまらないよお! あたしだって、ジュースを買ったあれが最後の百円玉だったのに!」
『アヤコ・ザ・ジャイアント選手、二秒で返しました! さすがにこちらもただものではないですね』
『いや、わたしが特に見事だと感じたのは、アヤコ選手の、フォールから立ち直るとすぐに相手に対する攻撃に転じたところです。このあたりの呼吸と勝負勘は、アヤコ選手のうまいところですからね』
「困ったわ。学校ではカードは使えないし」
「当たり前だよ範ちゃん!」
「店から持ってきてもらうわけにもいかないし」
「当たり前だったら範ちゃん!」
「職員室で当直の先生と交渉しても貸してくれるわけがないし」
「そりゃそうだよ範ちゃん!」
「困ったわね」
「困った顔をしてないよ範ちゃん!」
『ノリコ選手の強烈な連続攻撃を、アヤコ選手よく受けた!』
『そうですね。相手の攻撃を受けきる、これがプロレスの醍醐味ですからね』
「もう! 範ちゃんのバカ! バカバカバカ!」
「文子! そんなに怒ることもないでしょう!」
『さあ、両者がっちりと組み合った! 力は互角! おーっと、しかしここで、放送時間がなくなってしまいました! それでは、興奮冷めやらぬ紅恵高校からお別れいたします。解説は、下川文子さんでした。下川さん、ありがとうございました』
『こちらこそ』
※ ※ ※ ※ ※
『……範ちゃん、ほんとにこれ、大学の学園祭で発表するの? 尻切れトンボだって、見ている人が暴れると思うんだけど』
『地球文明の象徴、プロレスって、たいていそんなものよ』
『そうかなあ……違うと思うんだけどなあ……』
『闘志をみなぎらせた二人の選手ですね。いずれも地球の紅恵高校ではそれと聞こえた猛者、アヤコ・ザ・ジャイアントとアントニオ・ノリコ、これは名勝負が期待できますよ』
『そうですか。さあ、いよいよゴングが鳴ろうとしています』
「範ちゃん、わたしがここに置いといたフルーツ牛乳のパック知らない?」
「ごめん文子、喉が渇いたので飲んじゃった」
「な……範ちゃん!」
かぁん!
『さあ、ゴングが鳴りました! アヤコ・ザ・ジャイアント、猛烈な勢いで相手に向かって突撃していきます!』
「範ちゃん、なんてことするのよ! あのフルーツ牛乳は、わたしが飲もうと楽しみにしていたのに!」
「ごめん、ごめん、後で必ず返すから」
『どう見ますか、下川さん』
『これは、アントニオ・ノリコ選手、さすがベテランですね。アヤコ・ザ・ジャイアント選手のやり場のない怒りを、うまくかわしました』
『なるほど。アヤコ・ザ・ジャイアント選手の怒りは、これからどこに向かうでしょうか?』
『そうですね。金銭面について攻撃すると思います』
「範ちゃん、じゃ、飲んだぶんの百円ちょうだい。もう一度下へ行って、買ってくるから」
「ごめん……今、手持ちの小銭がないのよ」
『見事な切り返し! これは痛い! ノリコ選手の痛烈な反撃に、アヤコ選手は多大なダメージを受けて倒れました! ノリコ選手、すかさずフォールに入る!』
「だからさ、明日にでも自販機で……」
「わたしは暑くてたまらないからあのジュース買ったの!」
「じゃ、わたしの借りということにしておいて」
「それじゃわたしの喉の渇きはおさまらないよお! あたしだって、ジュースを買ったあれが最後の百円玉だったのに!」
『アヤコ・ザ・ジャイアント選手、二秒で返しました! さすがにこちらもただものではないですね』
『いや、わたしが特に見事だと感じたのは、アヤコ選手の、フォールから立ち直るとすぐに相手に対する攻撃に転じたところです。このあたりの呼吸と勝負勘は、アヤコ選手のうまいところですからね』
「困ったわ。学校ではカードは使えないし」
「当たり前だよ範ちゃん!」
「店から持ってきてもらうわけにもいかないし」
「当たり前だったら範ちゃん!」
「職員室で当直の先生と交渉しても貸してくれるわけがないし」
「そりゃそうだよ範ちゃん!」
「困ったわね」
「困った顔をしてないよ範ちゃん!」
『ノリコ選手の強烈な連続攻撃を、アヤコ選手よく受けた!』
『そうですね。相手の攻撃を受けきる、これがプロレスの醍醐味ですからね』
「もう! 範ちゃんのバカ! バカバカバカ!」
「文子! そんなに怒ることもないでしょう!」
『さあ、両者がっちりと組み合った! 力は互角! おーっと、しかしここで、放送時間がなくなってしまいました! それでは、興奮冷めやらぬ紅恵高校からお別れいたします。解説は、下川文子さんでした。下川さん、ありがとうございました』
『こちらこそ』
※ ※ ※ ※ ※
『……範ちゃん、ほんとにこれ、大学の学園祭で発表するの? 尻切れトンボだって、見ている人が暴れると思うんだけど』
『地球文明の象徴、プロレスって、たいていそんなものよ』
『そうかなあ……違うと思うんだけどなあ……』
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Re: ネミエルさん
兄弟は毎日がプロレスみたいなものなのですか……(^^;)
油断もすきもない今日この頃ですからがんばって弟のプリンを食ってください(えええー)
油断もすきもない今日この頃ですからがんばって弟のプリンを食ってください(えええー)
NoTitle
あぁ・・・範子はいかにも飲んじゃいそうなタイプですよね(^ω^;)
文子、どんまい。
喉が渇いているなら喧嘩より水道だ水道!!←
文子、どんまい。
喉が渇いているなら喧嘩より水道だ水道!!←
- #1905 佐槻勇斗
- URL
- 2010.08/18 22:45
- ▲EntryTop
NoTitle
いえ違うことなんかないです。
なんでしょうか、この僕と弟みたいなやり口。
プリン争奪戦みたいな?
よくやります。
なんでしょうか、この僕と弟みたいなやり口。
プリン争奪戦みたいな?
よくやります。
- #1904 ねみ
- URL
- 2010.08/18 22:10
- ▲EntryTop
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Re: 佐槻勇斗さん
文子ちゃんのくやしいくやしい気持ちをどうかわかってあげてください(笑)