「範子と文子の驚異の高校生活(ギャグ掌編小説シリーズ・完結)」
範子と文子の三十分一本勝負(ギャグ掌編小説シリーズ・完結)
範子と文子の三十分一本勝負:FIGHT・91
「見えたわ」
範子はきっぱりといった。いつもの紅恵高校2‐Aの教室である。
「うん。わたしにも見えた」
文子もうなずいた。
「この調子で学校での宿題処理を続けていれば……わたしたちは、二十五日には問題集の山との長い戦いに決着をつけられる!」
「長かったね範ちゃん」
文子はシャープペンシルを握り締めた。
「だからさ、範ちゃん。とりあえず続きやろうよ。あと五日ぶんはたっぷり問題集があるんだからさ」
「それがネックなのよねえ」
範子は問題集を前にほおづえをついた。
「なんかこう、バーッと片づく方法はないかしら」
「義経と弁慶が糊を作る話は知ってる?」
「なにそれ?」
「ごはんをつぶして糊を作る競争があってね、弁慶はその馬鹿力で、ごはんをぐっちゃぐっちゃとやっていたんだけれど、どうしても粒が残ってしまって糊にならないんだよ。それに対して、粒を一粒一粒へらで丹念に潰していった義経のほうが先に糊を完成させられた、という話」
「まじめに愚直にやれって教訓?」
「そうだよ」
「はあい」
範子は世界史の問題集を面白くなさそうに開いた。
「文子?」
「なあに範ちゃん?」
「王権神授説のフランスの思想家って誰だっけ?」
「えーっと、誰だっけ。ダンボとかボダンとか……ちがった、ボーダンだ」
「もう一人」
「ボシュエ」
「文子」
「なあに?」
「社会科って、どうしてこんな問題ばかりなの? ただのクイズじゃないこれ」
「ボーダンとボシュエの思想の違い、範ちゃん説明できる?」
「え……無理よ、そんなの」
「そういうことだよ。あたしだって無理だよ。だから、高校の世界史っていうのは、ただのとっかかりみたいなものじゃないかなあ。ほんとうの学問のための前段階って感じで。それが高校なんかの中等教育っていうものでしょ?」
「そういわれればそうかもね」
「そうだよ」
文子は問題集の一冊を解き終え、次の問題集のページを開いた。
英語である。
「範ちゃん?」
「どうしたの、文子?」
「範ちゃん、財閥の娘だから、幼いころからの家庭教育で英語ペラペラだよね」
「その話はよしてくれない? うちで英語の話が出てくると、たいていは嫁入り話に持っていかれちゃうんだから」
「それでも英語できるよね」
「まあ人並みには」
「おねがい写させて」
「しかたないわね。毎年のことだけど」
「わーいやったあ」
「そんなことじゃ、大学で待ってるほんとうの英語の学問にはついていけないわよ」
「うっ、耳が痛い……」
『うっ、耳が痛い……』
宇宙船から、紅恵高校の二人の様子をうかがっていたポポイラ星人の範子(ポポイラ語)と文子(ポポイラ語)の二人は顔を見合わせてため息をついた。
『ヒレレバ工業大学に入って、留年もせずに勉強してきたけど、わたしたち、なにか「ほんとうの学問」やったかしら?』
『どう考えてもやってないよね、範ちゃん』
二人は力なく笑った。
地球でもポポイラ星でも、宇宙どこでも学問の道は険しいのであった。
範子はきっぱりといった。いつもの紅恵高校2‐Aの教室である。
「うん。わたしにも見えた」
文子もうなずいた。
「この調子で学校での宿題処理を続けていれば……わたしたちは、二十五日には問題集の山との長い戦いに決着をつけられる!」
「長かったね範ちゃん」
文子はシャープペンシルを握り締めた。
「だからさ、範ちゃん。とりあえず続きやろうよ。あと五日ぶんはたっぷり問題集があるんだからさ」
「それがネックなのよねえ」
範子は問題集を前にほおづえをついた。
「なんかこう、バーッと片づく方法はないかしら」
「義経と弁慶が糊を作る話は知ってる?」
「なにそれ?」
「ごはんをつぶして糊を作る競争があってね、弁慶はその馬鹿力で、ごはんをぐっちゃぐっちゃとやっていたんだけれど、どうしても粒が残ってしまって糊にならないんだよ。それに対して、粒を一粒一粒へらで丹念に潰していった義経のほうが先に糊を完成させられた、という話」
「まじめに愚直にやれって教訓?」
「そうだよ」
「はあい」
範子は世界史の問題集を面白くなさそうに開いた。
「文子?」
「なあに範ちゃん?」
「王権神授説のフランスの思想家って誰だっけ?」
「えーっと、誰だっけ。ダンボとかボダンとか……ちがった、ボーダンだ」
「もう一人」
「ボシュエ」
「文子」
「なあに?」
「社会科って、どうしてこんな問題ばかりなの? ただのクイズじゃないこれ」
「ボーダンとボシュエの思想の違い、範ちゃん説明できる?」
「え……無理よ、そんなの」
「そういうことだよ。あたしだって無理だよ。だから、高校の世界史っていうのは、ただのとっかかりみたいなものじゃないかなあ。ほんとうの学問のための前段階って感じで。それが高校なんかの中等教育っていうものでしょ?」
「そういわれればそうかもね」
「そうだよ」
文子は問題集の一冊を解き終え、次の問題集のページを開いた。
英語である。
「範ちゃん?」
「どうしたの、文子?」
「範ちゃん、財閥の娘だから、幼いころからの家庭教育で英語ペラペラだよね」
「その話はよしてくれない? うちで英語の話が出てくると、たいていは嫁入り話に持っていかれちゃうんだから」
「それでも英語できるよね」
「まあ人並みには」
「おねがい写させて」
「しかたないわね。毎年のことだけど」
「わーいやったあ」
「そんなことじゃ、大学で待ってるほんとうの英語の学問にはついていけないわよ」
「うっ、耳が痛い……」
『うっ、耳が痛い……』
宇宙船から、紅恵高校の二人の様子をうかがっていたポポイラ星人の範子(ポポイラ語)と文子(ポポイラ語)の二人は顔を見合わせてため息をついた。
『ヒレレバ工業大学に入って、留年もせずに勉強してきたけど、わたしたち、なにか「ほんとうの学問」やったかしら?』
『どう考えてもやってないよね、範ちゃん』
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地球でもポポイラ星でも、宇宙どこでも学問の道は険しいのであった。
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Re: ネミエルさん
わたしも数学やだけど。