「範子と文子の驚異の高校生活(ギャグ掌編小説シリーズ・完結)」
範子と文子の三十分一本勝負(ギャグ掌編小説シリーズ・完結)
範子と文子の三十分一本勝負:FIGHT・92
「もしかして、わたしたち、嫌われてるのかな、範ちゃん……」
いつになく沈んだ声で問題集に向かう文子であった。
「ど、どうしたのよ文子、急にそんなことを!」
文子のその声に、範子は取り乱した。
「も、もしかしたらクラスメートの誰かにいじめられたの? それとも家庭に不和が? まさか実は不治の病だったとか……」
「そんなんじゃないよ範ちゃん」
文子の沈んだ声は変わらない。
「これなんだけどさ範ちゃん」
文子はなにかのプリントアウトを取り出した。範子はひったくった。
「なになに……なんだ、最新の『範子と文子の三十分一本勝負』じゃない。これが?」
「見てわかるでしょ? わたしたちシリーズやってるけど、読んでいる人にアピールできているのか。わたし、もう、自信がなくなって、生きているのがつらくて……」
「なんだそんなことで悩んでいたの文子」
「そんなことって!」
「いい? よく聞いて、文子。わたしたちがこうして毎日を生きているのも、作者が自分のポリシーと内なるモチベーションと決意のもとにやっているのよ。だから、このシリーズはいくらつまらなくても作者が宣言した百話までは絶対に続くし、ブログの人気が下がろうともパソコンが壊れようともゴルディアスの結び目が解かれようとも作者はやるといったことはやるつもりよ。だから、文子が悩むことはないの。まったくないの。全然ないの。わかった?」
「うん。そういわれれば、そうかもしれないけど……」
「そうなのよ。わたしたちのアイデンティティは、シリーズの続行そのものにあるんだから、文子も悩んじゃ駄目よ。それはそれとして、もう十五分?」
「そんなところだよ範ちゃん」
「じゃあ話を変えましょう。文子、地衣類は好き?」
「ち……ちいるいって、なに?」
「菌類と藻類の共生植物」
「考えたこともないよ、範ちゃん。で、その地衣類がどうしたの?」
「昔のSF作家に、ジョン・ウィンダムという人がいたんだけど」
「あっ、知ってる。本屋でこの前、本を見かけたよ。トリフィドとかなんとかいう本だった」
「そう。その人よ。侵略や災害で人類が破滅寸前まで行くタイプのSFを書かせたら世界最高の人だったんだけど、その人に、『地衣騒動』という長編があるの」
「それも、破滅するお話なの?」
「いいえ。これは普通のSFよ。人類を不死にする効果をもつ地衣類を科学者が発見する話。科学者の片割れの女性は、その地衣類をもとに美容院を開くのよ」
「なんで?」
「そりゃ決まってるでしょう。その美容院に通っていると、いつまでたっても若い容色が衰えないってなったら、世界中の女性が殺到する、そうでしょ?」
「まあ、そうだけど……もしや範ちゃん?」
「そうよ」
範子の目はぎらぎらと輝いていた。
「そういう地衣類を発見して、わたしも女性を救う希望の星になるのよ」
「だって、それって、SF小説……なっ、範ちゃん?」
「世界の主な地衣類にはそんな効果はないわ。だからわたしたちが行くのは、極地よ! さあ問題集なんかほっておいて、行きましょ、行きましょ!」
「わたしは北極も南極も行きたくは……いやああああああああ!」
これが、生物の研究発表の宿題で、「零下の極地に生息する地衣類の研究」で二人が最高点を取ったもともとの理由であったと伝えられる。
作者としてはそれがほんとうのことだかどうかを確かめることはしたくない。はくしょん。
いつになく沈んだ声で問題集に向かう文子であった。
「ど、どうしたのよ文子、急にそんなことを!」
文子のその声に、範子は取り乱した。
「も、もしかしたらクラスメートの誰かにいじめられたの? それとも家庭に不和が? まさか実は不治の病だったとか……」
「そんなんじゃないよ範ちゃん」
文子の沈んだ声は変わらない。
「これなんだけどさ範ちゃん」
文子はなにかのプリントアウトを取り出した。範子はひったくった。
「なになに……なんだ、最新の『範子と文子の三十分一本勝負』じゃない。これが?」
「見てわかるでしょ? わたしたちシリーズやってるけど、読んでいる人にアピールできているのか。わたし、もう、自信がなくなって、生きているのがつらくて……」
「なんだそんなことで悩んでいたの文子」
「そんなことって!」
「いい? よく聞いて、文子。わたしたちがこうして毎日を生きているのも、作者が自分のポリシーと内なるモチベーションと決意のもとにやっているのよ。だから、このシリーズはいくらつまらなくても作者が宣言した百話までは絶対に続くし、ブログの人気が下がろうともパソコンが壊れようともゴルディアスの結び目が解かれようとも作者はやるといったことはやるつもりよ。だから、文子が悩むことはないの。まったくないの。全然ないの。わかった?」
「うん。そういわれれば、そうかもしれないけど……」
「そうなのよ。わたしたちのアイデンティティは、シリーズの続行そのものにあるんだから、文子も悩んじゃ駄目よ。それはそれとして、もう十五分?」
「そんなところだよ範ちゃん」
「じゃあ話を変えましょう。文子、地衣類は好き?」
「ち……ちいるいって、なに?」
「菌類と藻類の共生植物」
「考えたこともないよ、範ちゃん。で、その地衣類がどうしたの?」
「昔のSF作家に、ジョン・ウィンダムという人がいたんだけど」
「あっ、知ってる。本屋でこの前、本を見かけたよ。トリフィドとかなんとかいう本だった」
「そう。その人よ。侵略や災害で人類が破滅寸前まで行くタイプのSFを書かせたら世界最高の人だったんだけど、その人に、『地衣騒動』という長編があるの」
「それも、破滅するお話なの?」
「いいえ。これは普通のSFよ。人類を不死にする効果をもつ地衣類を科学者が発見する話。科学者の片割れの女性は、その地衣類をもとに美容院を開くのよ」
「なんで?」
「そりゃ決まってるでしょう。その美容院に通っていると、いつまでたっても若い容色が衰えないってなったら、世界中の女性が殺到する、そうでしょ?」
「まあ、そうだけど……もしや範ちゃん?」
「そうよ」
範子の目はぎらぎらと輝いていた。
「そういう地衣類を発見して、わたしも女性を救う希望の星になるのよ」
「だって、それって、SF小説……なっ、範ちゃん?」
「世界の主な地衣類にはそんな効果はないわ。だからわたしたちが行くのは、極地よ! さあ問題集なんかほっておいて、行きましょ、行きましょ!」
「わたしは北極も南極も行きたくは……いやああああああああ!」
これが、生物の研究発表の宿題で、「零下の極地に生息する地衣類の研究」で二人が最高点を取ったもともとの理由であったと伝えられる。
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~ Comment ~
NoTitle
こんにちはー
生物資源ハンターはどこにでも行くものね。
何でも資源。
自然破戒に拍車をかける。
氷の中に生息するミミズをとりあげていた。
人間はどん欲過ぎる。
不老不死。
永遠の生にそんなに魅力があるのだろうか。

生物資源ハンターはどこにでも行くものね。
何でも資源。
自然破戒に拍車をかける。
氷の中に生息するミミズをとりあげていた。
人間はどん欲過ぎる。
不老不死。
永遠の生にそんなに魅力があるのだろうか。
- #1936 ぴゆう
- URL
- 2010.08/24 16:49
- ▲EntryTop
Re: ネミエルさん
夏のツンドラ地帯はすごく暮らしやすいそうであります。
イヌイット並みの生活能力を持っていればの話ですが。
ちなみに、「地球」が滅亡することはまずないでしょう。
滅亡するのは「人類」。百歩譲って「生物」というところですね。
人類程度が「地球」をどうこうできると考えるなど片腹痛い、というところであります。
2012年は普通に来ますから大丈夫ですねきっと。
イヌイット並みの生活能力を持っていればの話ですが。
ちなみに、「地球」が滅亡することはまずないでしょう。
滅亡するのは「人類」。百歩譲って「生物」というところですね。
人類程度が「地球」をどうこうできると考えるなど片腹痛い、というところであります。
2012年は普通に来ますから大丈夫ですねきっと。
NoTitle
いいなぁ、北極。
行ってみたい。
地球が滅亡する、滅亡するとかいわれてて
結局滅亡してませんよね。
2012とか本当に来るのかよって話ですよ
行ってみたい。
地球が滅亡する、滅亡するとかいわれてて
結局滅亡してませんよね。
2012とか本当に来るのかよって話ですよ
- #1927 ねみ
- URL
- 2010.08/22 22:48
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Re: ぴゆうさん
「馬の鼻先にぶら下げられたニンジン」
としてはこれ以上のものはないですよね。
要は好奇心と支配欲だけで生きているわれわれ人類いうものは、
なんでもいいからその二つを満たすものがあればいい、
と考えたがるのではないかと思うであります。
そういう人間の欲望を冷たい眼で見た名作宇宙冒険SFに、
エドモンド・ハミルトンの「虚空の遺産」という本があります。
自分の欲望にいろいろと迷ったり苦しかったりする今読みたいけれど、
絶対プレミアついてるよな……。(アマゾンで調べる)送料込みで700円というところか……やめとこ。