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    「範子と文子の驚異の高校生活(ギャグ掌編小説シリーズ・完結)」
    範子と文子の三十分一本勝負(ギャグ掌編小説シリーズ・完結)

    範子と文子の三十分一本勝負:FIGHT・97

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    「どうしてこれを忘れていたんだっけ」
    「わたしに聞いても知らないよ、範ちゃん。とにかくさっさと終わらせないと、わたしたち、世界史の授業は赤点になっちゃうよ。落第だよ」
    「文子と一緒に落第するのならそれはそれで……」
     文子はにっこりと微笑んだ。
    「なにかいった、範ちゃん?」
    「いえなんでもありません」
     範子は分厚い本に戻った。文子の目が笑っていなかったからだ。範子はため息をついた。
    「こんなめんどくさい宿題、学校はどうして出すんだろ……」
    「歴史の勉強だけじゃなく、小論文の勉強にもなるからじゃないかな」
    「小論文じゃ原稿用紙十五枚も書かないわよ!」
     範子は恨めしげに本の背表紙を見た。
     ロシア革命、とか、ソ連、とかいう単語が踊っていた。
     宿題の中に残っていた強敵のひとつ、世界史のレポートである。共同研究などで合作してもいいが、一人原稿用紙十五枚のノルマはクリアしなくてはならない。提出後は、教師より簡単な(世界史の教師はそういっていた)テーマについての口頭試問があるので、人に押し付けてごまかすわけにもいかなかった。
    「文子」
    「なあに範ちゃん?」
    「どうせ世界史のレポート書くんだったらさ、もうちょっと面白いテーマを選べなかったの?」
    「例えば?」
    「例えばローマとかギリシアとか。ほら、ベストセラーの本があったでしょ。あれをまる写しにすれば原稿用紙の十枚や二十枚……」
    「だめだったら。きっとあの世界史の先生は、あの本全巻読破してるよ。まる写ししたことがバレちゃう。それに対してロシア革命史は、誰も手をつけてないし、最近はやりじゃないから、ピントが外れたことや、本のまる写しを書いてもばれないって。それにね」
    「それに?」
    「いい本があるんだよ。すごく笑える面白い本。ほらこれ」
    「えーと……『スターリン・ジョーク』?」
    「そう。レポートのタイトルはもう決めてるんだ。『アネクドートに見るソビエト連邦史』」
    「アネクドートって?」
    「ロシアの政治ジョークだよ。これが笑えるんだ。背景世界を知っていたら、もっと笑えるんじゃないかと思ってさ」
    「ひとつ出してよ」
    「いいよ。
     『なにを笑ってるんだい』
     『ふふふ、こいつはまた傑作な政治ジョークだ』
     『聞かせてくれよ』
     『そりゃだめだ。たった今ぼくはこの件で被告に三十年の刑を言い渡したところなんだから』」
    「……………………」
    「ソ連軍がナチスを倒して入ってきたポーランドで。
     『お巡りさん、アメリカ兵に腕時計を盗まれました』
     『アメリカ兵? ソ連兵の間違いだろ?』
     『あっ! 今の言葉、お巡りさんがいったんですからね!』」
    「……ソ連ってすごいわね」
    「でしょ」
    「じゃあ、さっさと片付けてしまいましょう。そういや、ジョークといったら、こんなのを聞いたことがあるわ。北朝鮮でね、執務室を片付けることになって、
     『金日成元首席と金正日首席と、ジョンウン同志の写真を飾らなくてはいけないのに、釘がひとつしかない、どうしよう』
     『任せてください。吊るすのは一人だけにして、残りは壁に立たせればいいでしょう』」
    「範ちゃん……」
    「なあに?」
    「ジョークの趣味を見る限り、わたしたちふたりがこの作者の登場人物やってるのも、なるべくしてなったんじゃないかなあ……」
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    ~ Comment ~

    Re: ぴゆうさん

    もとネタはあります。どれも、ここにも出てきた「スターリン・ジョーク」からです。

    最後のやつも、もとはソ連の指導者ネタでした。スターリンとベリヤとあとひとり、だったと思います。舞台を北朝鮮に移したのはわたしのアイデアですが、すでにほかの人がやっているでしょうね。まあこういうふうにしてジョークは広がる、ということです。たぶんこのジョークのもとネタは、フランス革命以前にまで遡るのではないかと思います。おそらく銃器が発明されたころにまで。

    今の日本でやったら、小沢氏と鳩山氏と菅氏? などとどんどんジョークの輪は広がっていくのでありました。

    この手のジョークは大好きでして、大好きすぎてつい日ごろの言動に出てしまい、友達を怒らせてしまうのが怖いところであります……。

    NoTitle

    このジョーク集は作者が考えたものだろうか?

    最後が秀逸だった、面白い。
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