「範子と文子の驚異の高校生活(ギャグ掌編小説シリーズ・完結)」
範子と文子の三十分一本勝負(ギャグ掌編小説シリーズ・完結)
範子と文子の三十分一本勝負:FIGHT・99
「そりゃあさ」
範子は文子に聞こえないように独白した。
「わたしだって、あの作者のやつがそんなに登場人物に優しくないってことは知ってたわよ。でも、それでも、夢を見たっていいじゃない、少しくらい。それを、それを……いたたた」
頭を抱えた範子を、文子は心配そうに見た。
「大丈夫、範ちゃん? こんなところを生活指導に見つかったら、それこそアウトだよ。退学だよ。こともあろうに、学校の教室で、二日酔いになってるなんて……」
「生活指導は今日は街を見回っているわよ。灯台下暗しっていって、こっちのほうが安心よ……文子。オレンジジュース取って。それ以外飲みたくない。飲んだら吐く。死ぬ。死ぬ死ぬ死ぬ」
「だからいったじゃない、範ちゃん。高校生がお酒なんか飲んだらまずいって」
「わたしだってこんなに飲むつもりじゃなかったのよ。でも、文子、ヤマタノオロチみたいに飲むんだから。ヤマタノオロチが文子だったら、スサノオノミコトは食い殺されているわよ」
「そんな、ひとをうわばみみたいにいわないでよ」
「だってそうじゃない。頭痛い……」
ここまで読んでくれたかたには語るまでもないことであるが、範子の邪な野望は、文子の底知れぬアルコール許容量の前に粉砕され、範子は早々に飲みつぶれて倒れてしまい、今日の午後になって教室に帰ってきてからもまだ残る深刻な二日酔いで、泳いだりキャッキャウフフするどころの話ではなかったのであった。
まことに天網恢恢疎にして漏らさずとはよくいったもの。この中国の成語がわからなくても、まあ、そんな意味だと思っていただきたい。
「文子……」
範子は気息奄々と言った顔でいった。
「わたしの顔、変なふうに見える?」
文子はしげしげと見た。
「普通だよ、範ちゃん、大丈夫だよ、お酒を飲んだ顔には見えないよ」
「よかったわ……」
頭を押さえた範子は、よろよろっと立ち上がった。
「ほんとに頭が痛いから、わたし、もう帰ることにするわ……」
「気をつけてね範ちゃん」
気を使ってくれる文子が、かえって憎らしく思えてくる、範子はそんな状況だった。
範子は文子に聞こえないようにつぶやいた。
「あのさ、作者さん? わたし、いつもこのショートショートのために身を粉にして働いているよね。今回のこれも、身体を張ってのギャグだよね。ギャグにしたくはなかったんだけど。だからさ、作者さんもわたしたちに、なにかプレゼントを考えるべきだと思うのよね。プレゼントというか、ボーナス。それくらい要求してもいいんじゃないかと思うのよ、わたしは。作者さんも、そう思わない? だから、なんか便宜をはかってくれない?」
いきなり登場人物からそんなことをいわれてしまっても、作者としては困ってしまう。だいいち、こんな先例を作ると、ほかの小説の登場人物たちがいっせいに文句を言うだろうし。
だが……この宇奈月範子はこのブログの看板娘としてよくやってくれているほうだろう。
よし! わかった! プレゼントしてあげようではないか!
「ほんと?」
範子の顔がぱっと明るくなった。
範子には特別に、勉学のために、宿題の問題集を三冊追加……。
「いるかーっ!」
範子は腹の底からの大声で怒鳴った。
「の、範ちゃん……?」
いきなりの大声に、文子は目を白黒させていた。
範子が問題集に取り組む破目になったかどうかは、あいにくと忘れてしまったのだが……まあ小説にとってたいしたことはないだろう。
範子は文子に聞こえないように独白した。
「わたしだって、あの作者のやつがそんなに登場人物に優しくないってことは知ってたわよ。でも、それでも、夢を見たっていいじゃない、少しくらい。それを、それを……いたたた」
頭を抱えた範子を、文子は心配そうに見た。
「大丈夫、範ちゃん? こんなところを生活指導に見つかったら、それこそアウトだよ。退学だよ。こともあろうに、学校の教室で、二日酔いになってるなんて……」
「生活指導は今日は街を見回っているわよ。灯台下暗しっていって、こっちのほうが安心よ……文子。オレンジジュース取って。それ以外飲みたくない。飲んだら吐く。死ぬ。死ぬ死ぬ死ぬ」
「だからいったじゃない、範ちゃん。高校生がお酒なんか飲んだらまずいって」
「わたしだってこんなに飲むつもりじゃなかったのよ。でも、文子、ヤマタノオロチみたいに飲むんだから。ヤマタノオロチが文子だったら、スサノオノミコトは食い殺されているわよ」
「そんな、ひとをうわばみみたいにいわないでよ」
「だってそうじゃない。頭痛い……」
ここまで読んでくれたかたには語るまでもないことであるが、範子の邪な野望は、文子の底知れぬアルコール許容量の前に粉砕され、範子は早々に飲みつぶれて倒れてしまい、今日の午後になって教室に帰ってきてからもまだ残る深刻な二日酔いで、泳いだりキャッキャウフフするどころの話ではなかったのであった。
まことに天網恢恢疎にして漏らさずとはよくいったもの。この中国の成語がわからなくても、まあ、そんな意味だと思っていただきたい。
「文子……」
範子は気息奄々と言った顔でいった。
「わたしの顔、変なふうに見える?」
文子はしげしげと見た。
「普通だよ、範ちゃん、大丈夫だよ、お酒を飲んだ顔には見えないよ」
「よかったわ……」
頭を押さえた範子は、よろよろっと立ち上がった。
「ほんとに頭が痛いから、わたし、もう帰ることにするわ……」
「気をつけてね範ちゃん」
気を使ってくれる文子が、かえって憎らしく思えてくる、範子はそんな状況だった。
範子は文子に聞こえないようにつぶやいた。
「あのさ、作者さん? わたし、いつもこのショートショートのために身を粉にして働いているよね。今回のこれも、身体を張ってのギャグだよね。ギャグにしたくはなかったんだけど。だからさ、作者さんもわたしたちに、なにかプレゼントを考えるべきだと思うのよね。プレゼントというか、ボーナス。それくらい要求してもいいんじゃないかと思うのよ、わたしは。作者さんも、そう思わない? だから、なんか便宜をはかってくれない?」
いきなり登場人物からそんなことをいわれてしまっても、作者としては困ってしまう。だいいち、こんな先例を作ると、ほかの小説の登場人物たちがいっせいに文句を言うだろうし。
だが……この宇奈月範子はこのブログの看板娘としてよくやってくれているほうだろう。
よし! わかった! プレゼントしてあげようではないか!
「ほんと?」
範子の顔がぱっと明るくなった。
範子には特別に、勉学のために、宿題の問題集を三冊追加……。
「いるかーっ!」
範子は腹の底からの大声で怒鳴った。
「の、範ちゃん……?」
いきなりの大声に、文子は目を白黒させていた。
範子が問題集に取り組む破目になったかどうかは、あいにくと忘れてしまったのだが……まあ小説にとってたいしたことはないだろう。
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Re: limeさん
作者に遊ばれているのか作者が遊ばれているのか(^^;)
問題集を出すほど作者は鬼ではありません(笑)。
キャラと戯れすぎて、「非情な動かしかた」を忘れてしまった自分に気づく(^^;)
問題集を出すほど作者は鬼ではありません(笑)。
キャラと戯れすぎて、「非情な動かしかた」を忘れてしまった自分に気づく(^^;)
NoTitle
あきらかに作者に遊ばれている娘達・笑
問題集は勘弁してあげてください。
ああ、こんなふうにキャラと戯れてみたい・・・。
無理だな・笑
さあ、次は100回記念!
問題集は勘弁してあげてください。
ああ、こんなふうにキャラと戯れてみたい・・・。
無理だな・笑
さあ、次は100回記念!
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Re: ネミエルさん
それにこの二人、なんのかんのいって真面目に授業受けてますしね。
ちなみにわたしは、宿題の問題集を「踏み倒した」ことがあります。学園祭準備のため、夏休み中毎日遅くまで学校に詰めての生徒会活動でそれどころではなかったからですが……。よく先生許してくれたもんだ。リベラルな学校だったんだな……。(←呆れてただけだろオイ)