「紅蓮の街(長編ファンタジー・完結)」
第一部 沈黙の秋
紅蓮の街 第一部 3-2
扉が開いた。
まず入ってきたのは、屈強な男二人だった。手にはなにも持っていないが、その筋肉のつきかたから想像するに、指で胡桃くらいは割れるのではないかと思われた。
二人の男は、緊張した面持ちで扉を見た。
ナミが入ってきた。
ガスのいっていた、武装解除は脅しでもなんでもなかった。
服こそ脱がされていなかったものの、その両手は後ろ手にされ、荒縄でしっかりと縛られていた。
最後にガスが入ってきて、サシェルに一礼した。
「サシェル様、客人を連れて参りました」
「儲け話を持ってきた人間をこうして遇するとは、『終末港』の礼儀も堕ちたものね」
ナミはぼやいた。
サシェルは笑った。
「まあ、そう怒るでない。なにせ、わたしは命を狙われている身なのだからな、このくらいの用心は許してもらいたいものじゃ」
「命ねえ」
ナミはサシェルに対し無礼な態度を崩さなかった。それが、ますますサシェルを喜ばせた。
「『彫刻屋』、なかなか暴れてくれる馬ではないか。楽しませてくれそうだのう」
サシェルは今や舌なめずりでもしそうだった。
「女、名はなんといったかな?」
「ナミ」
「ナミか。いい名だのう。どうかな、気が向いたら、わたしの妻になってみる気はないかな?」
「ないわね」
ナミは即答した。
「まあ、普通はそう答えるじゃろうな。だがのう、とりあえず我が現在の妻に会ってくれんかな。今も、そのついたての陰におるのじゃが」
その言葉を聞いて、ガスは二人の部下に顎で合図した。
二人の男は、部屋の隅に進むと、ついたてを外した。
予想もできないものがそこにあった。
豪勢なドレスを着た女が一人、鎖と革で椅子に縛りつけられていた。目には革の黒い目隠しが、口には頑丈な猿轡がはめられ、意味のある言葉はおろか、うめき声すら聞き取りにくくしてしまうようにされていた。
さらに、目を引くのはその左手だった。
その左手は、そこだけ長く伸びて作られた肘掛けの上に長く伸ばされ、少し広く作られた板の上に、手の甲を見せた状態で手首のところで枷で固定されていた。その手指も、指の一本一本が、アーチ状の止め具で板の上に展翅でもされるかのように広げられている。
しかし、見るものを慄然とさせるのはその手そのものだった。

まず入ってきたのは、屈強な男二人だった。手にはなにも持っていないが、その筋肉のつきかたから想像するに、指で胡桃くらいは割れるのではないかと思われた。
二人の男は、緊張した面持ちで扉を見た。
ナミが入ってきた。
ガスのいっていた、武装解除は脅しでもなんでもなかった。
服こそ脱がされていなかったものの、その両手は後ろ手にされ、荒縄でしっかりと縛られていた。
最後にガスが入ってきて、サシェルに一礼した。
「サシェル様、客人を連れて参りました」
「儲け話を持ってきた人間をこうして遇するとは、『終末港』の礼儀も堕ちたものね」
ナミはぼやいた。
サシェルは笑った。
「まあ、そう怒るでない。なにせ、わたしは命を狙われている身なのだからな、このくらいの用心は許してもらいたいものじゃ」
「命ねえ」
ナミはサシェルに対し無礼な態度を崩さなかった。それが、ますますサシェルを喜ばせた。
「『彫刻屋』、なかなか暴れてくれる馬ではないか。楽しませてくれそうだのう」
サシェルは今や舌なめずりでもしそうだった。
「女、名はなんといったかな?」
「ナミ」
「ナミか。いい名だのう。どうかな、気が向いたら、わたしの妻になってみる気はないかな?」
「ないわね」
ナミは即答した。
「まあ、普通はそう答えるじゃろうな。だがのう、とりあえず我が現在の妻に会ってくれんかな。今も、そのついたての陰におるのじゃが」
その言葉を聞いて、ガスは二人の部下に顎で合図した。
二人の男は、部屋の隅に進むと、ついたてを外した。
予想もできないものがそこにあった。
豪勢なドレスを着た女が一人、鎖と革で椅子に縛りつけられていた。目には革の黒い目隠しが、口には頑丈な猿轡がはめられ、意味のある言葉はおろか、うめき声すら聞き取りにくくしてしまうようにされていた。
さらに、目を引くのはその左手だった。
その左手は、そこだけ長く伸びて作られた肘掛けの上に長く伸ばされ、少し広く作られた板の上に、手の甲を見せた状態で手首のところで枷で固定されていた。その手指も、指の一本一本が、アーチ状の止め具で板の上に展翅でもされるかのように広げられている。
しかし、見るものを慄然とさせるのはその手そのものだった。
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Re: ネミエルさん
天地神明に誓ってわたしの趣味ではありません(^^;)
でも書くのは楽しかったです(^^;)
でも書くのは楽しかったです(^^;)
NoTitle
最後・・・
なんですか、最後・・・
怖いというかエr・・・げふん、げふん
というかこれポールさんの趣味なんd・・・げふんげふん
なんですか、最後・・・
怖いというかエr・・・げふん、げふん
というかこれポールさんの趣味なんd・・・げふんげふん
- #2086 ねみ
- URL
- 2010.09/11 22:00
- ▲EntryTop
Re: LandMさん
この場合、サシェル・イルミールの「結婚しろ」は、「合法的奴隷兼慰み者になれ」ということですから、普通の人のそれとは趣きがまた違いますね(^^)
小説のここらへんは悪ノリしまくって書いています。書いていてけっこう楽しかったです。わはは(^^;)
新キャラですが、今のところ、霊感が降りてきていませんので、こないだのラジオアナウンサー、リコ・アヤの二人組をさしあげる、ということで代わりに……(^^)
小説のここらへんは悪ノリしまくって書いています。書いていてけっこう楽しかったです。わはは(^^;)
新キャラですが、今のところ、霊感が降りてきていませんので、こないだのラジオアナウンサー、リコ・アヤの二人組をさしあげる、ということで代わりに……(^^)
NoTitle
会って、即「結婚してくれ。…と実際に言える人がいたら会ってみたいですね。実際問題。まあ、現代の世界ではそれは、俗に「変質者」や「ストーカー」呼ばれるのでしょうが。
おそらく、即答で嫌と答えるのは目に見えているような気がしますが……。そういうぶっとばしたキャラは確かに私の小説ではいないですね。参考にしたいです。
また、キャラ募集していますので、思いついたら寄せてやってくださいませ。次の章でようやく鎧が出てきます。結構長かったですね。。
おそらく、即答で嫌と答えるのは目に見えているような気がしますが……。そういうぶっとばしたキャラは確かに私の小説ではいないですね。参考にしたいです。
また、キャラ募集していますので、思いついたら寄せてやってくださいませ。次の章でようやく鎧が出てきます。結構長かったですね。。
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Re: 鍵コメさん
困っちゃいますね~(^^;)
これでまたわたしのブログの閲覧者数が減ってしまいますね~(^^;)
自業自得とはいえとほほほ(^^;)
誤植指摘ありがとうございました。訂正しておきました。