「紅蓮の街(長編ファンタジー・完結)」
第一部 沈黙の秋
紅蓮の街 第一部 4-3
袋からじわじわと染み出してきた、なにか小動物らしいものの血がテーブルを染めたところで、ナミは叩くのをやめた。
「用心だけはやっておくものよね」
ナミは口の端だけで笑った。
「さて、本題に入るけど、この街を支配している名家は、今や二派に分かれているわ。ひとつは、男爵、あなたの派閥。イルミール家を事実上の盟主とする新興派。それでも帝国法改正以来、街の物流を支配している」
ナミは辛辣にいってのけた。
「どさくさまぎれにのし上がった成金たちね。男爵、あなたの家も、先代が金で男爵家を買ったことは誰だって知ってるわ」
「わたしの家について嫌味をいいに来たのか。それならばさっさと帰ってもらおうか」
「ま、そう慌てない慌てない。慌てる乞食と、慌てる貴族は鶏がらスープ一杯すらふるまってもらえないものよ」
ナミは怒るサシェルを軽くいなした。
「さて、こっちが新興成金だったら、もうひとつ派閥がある。ガレーリョス伯爵家に代表される、頑迷固陋な守旧派グループ。守旧派というより、反動勢力、過去の栄光に頭がちがちのどうしようもない時代遅れ連中ね。しかし、時代遅れの彼らは……」
ナミはサシェルをじっと見た。
「なにがいいたい」
「彼らはがっちりと、この街にある暴力組織、軍隊と自警団を押さえているわ。それが原因でしょ、あなたたちがガレーリョス家の風下に立って歩かなければならないのは? 軍隊が暴れ出したら、あなたたちの手では抵抗しようがないからよ」
「やつらが食っているのはわたしらの麦だ。それを知らないやつらじゃない。ひとたびわれらが麦の供給を停止すれば、軍隊や自警団などは……」
「暴れだして、この街を軍事的に封鎖して、主だった敵対派閥の指導者層を逮捕して、広場で首をチョン。もしくは吊るされるか、火あぶりか。どれでも好きなものをお望みしだいってやつね。サシェル・イルミール、あなただったら火あぶりかしら? いい干物ができそうだしね」
サシェルは怒りをこらえながら話を聞いているのがまるわかりだった。ガスは少しばかり痛快な気分だった。
ナミは続けた。
「もちろん、おりこうさんなあなたも、ガレーリョスも、そんな有害無益、というより意味不明な争いはしない。終末港は、吸っても吸っても金という名の甘い蜜がどんどん出てくる果実だし、そんな果実を腐らせてしまうような愚かな真似などするはずがない。それでこれまで表向きは仲良くやってきた。……今まではね」
「なにがいいたい?」
「オルロス伯爵ヴェルク・ガレーリョス三世。この人はたいしたタマだということよ」

「用心だけはやっておくものよね」
ナミは口の端だけで笑った。
「さて、本題に入るけど、この街を支配している名家は、今や二派に分かれているわ。ひとつは、男爵、あなたの派閥。イルミール家を事実上の盟主とする新興派。それでも帝国法改正以来、街の物流を支配している」
ナミは辛辣にいってのけた。
「どさくさまぎれにのし上がった成金たちね。男爵、あなたの家も、先代が金で男爵家を買ったことは誰だって知ってるわ」
「わたしの家について嫌味をいいに来たのか。それならばさっさと帰ってもらおうか」
「ま、そう慌てない慌てない。慌てる乞食と、慌てる貴族は鶏がらスープ一杯すらふるまってもらえないものよ」
ナミは怒るサシェルを軽くいなした。
「さて、こっちが新興成金だったら、もうひとつ派閥がある。ガレーリョス伯爵家に代表される、頑迷固陋な守旧派グループ。守旧派というより、反動勢力、過去の栄光に頭がちがちのどうしようもない時代遅れ連中ね。しかし、時代遅れの彼らは……」
ナミはサシェルをじっと見た。
「なにがいいたい」
「彼らはがっちりと、この街にある暴力組織、軍隊と自警団を押さえているわ。それが原因でしょ、あなたたちがガレーリョス家の風下に立って歩かなければならないのは? 軍隊が暴れ出したら、あなたたちの手では抵抗しようがないからよ」
「やつらが食っているのはわたしらの麦だ。それを知らないやつらじゃない。ひとたびわれらが麦の供給を停止すれば、軍隊や自警団などは……」
「暴れだして、この街を軍事的に封鎖して、主だった敵対派閥の指導者層を逮捕して、広場で首をチョン。もしくは吊るされるか、火あぶりか。どれでも好きなものをお望みしだいってやつね。サシェル・イルミール、あなただったら火あぶりかしら? いい干物ができそうだしね」
サシェルは怒りをこらえながら話を聞いているのがまるわかりだった。ガスは少しばかり痛快な気分だった。
ナミは続けた。
「もちろん、おりこうさんなあなたも、ガレーリョスも、そんな有害無益、というより意味不明な争いはしない。終末港は、吸っても吸っても金という名の甘い蜜がどんどん出てくる果実だし、そんな果実を腐らせてしまうような愚かな真似などするはずがない。それでこれまで表向きは仲良くやってきた。……今まではね」
「なにがいいたい?」
「オルロス伯爵ヴェルク・ガレーリョス三世。この人はたいしたタマだということよ」
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NoTitle
え、明日の更新分までしか書けてないって、・・・。
ポールさんは、本当に書きながら更新する人なんですね。
それって、すごい・・・。
プロットのみで、書き上げて行くんですね。
さて、ナミ、やっと語りはじめましたね。
なにやら、寝た子を起こそうとしてる気配。
ポールさんは、本当に書きながら更新する人なんですね。
それって、すごい・・・。
プロットのみで、書き上げて行くんですね。
さて、ナミ、やっと語りはじめましたね。
なにやら、寝た子を起こそうとしてる気配。
NoTitle
ふふふふ。
ナミの話を聞いて思わず痛快な気分になってしまうガスが何気に気に入りました。
いい干物ができそう・・・。気に入った。
ナミの話を聞いて思わず痛快な気分になってしまうガスが何気に気に入りました。
いい干物ができそう・・・。気に入った。
Re: LandMさん
カインド……? 「KIND」で英和を引きましたが、やっぱり「優しい」とか「親切だ」とか言う意味しか載っていないので、何語のどんなスペルなのか気になります。あとで教えてね(^^)
そうですね。ナミをひとことでいえば、「狡猾」です。人の生命を奪うことも騙すことも裏切ることもなんとも思っていません。そうとう悲惨な幼児期を過ごしたのか、はたまた生まれつきなのか。たぶん後者でしょう(笑)。
そんな女がどこまで悪辣に生きられるか、今後をお楽しみに。
……って明日更新ぶんまでしか書けてないよ、どうしよう(^^;)
そうですね。ナミをひとことでいえば、「狡猾」です。人の生命を奪うことも騙すことも裏切ることもなんとも思っていません。そうとう悲惨な幼児期を過ごしたのか、はたまた生まれつきなのか。たぶん後者でしょう(笑)。
そんな女がどこまで悪辣に生きられるか、今後をお楽しみに。
……って明日更新ぶんまでしか書けてないよ、どうしよう(^^;)
NoTitle
ナミはクレバーというよりかはカインドなんですね。
賢いよりズル賢い…という意味合いの方が強そうですね。
こういうやり取りなどの話も書いてみたいんですけど……いかんせん、どうしても今回の作品はバトルものですからね。それが主軸になっちゃいますね。
以前、投稿していただきありがとうございます。
設定が細かいのでどこで出せるかが不明ですが、どこかであのキャラを出そうと思います。協力していただきありがとうございます。
賢いよりズル賢い…という意味合いの方が強そうですね。
こういうやり取りなどの話も書いてみたいんですけど……いかんせん、どうしても今回の作品はバトルものですからね。それが主軸になっちゃいますね。
以前、投稿していただきありがとうございます。
設定が細かいのでどこで出せるかが不明ですが、どこかであのキャラを出そうと思います。協力していただきありがとうございます。
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NoTitle
実際見たり、文章で読むのが駄目なのはなぜなのか……m(_ _)m
うーん…なにやら難しい展開になってきましたね!
頑張って着いてきますっっ!!