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    「紅蓮の街(長編ファンタジー・完結)」
    第一部 沈黙の秋

    紅蓮の街 第一部 6-2

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    「『彫刻屋』めが」

     サシェルは吐き捨てるようにいった。

    「あの男はヘマしかせんのか! ……ああ、呼ばんでいい、呼ばんで。どうせいつものごとく、そこらへんの木片に、ふくろうの像でも彫っておるんじゃろう」

    「謹慎中の男にかける言葉じゃないわね」

    「やつが持ってきた箱に、なにが詰まっていたと思う。よくわからん種だ。お前がいっていた……」

    「あれとは違うわね」

     ナミはうなずいた。

    「さて、人を待たせるのも、いくらなんでも、もういいんじゃない。アグリコルス博士みたいな賢人は、それなりに遇するものよ」

    「お前が来て以来調子が狂いっぱなしだ」

     サシェルは嘆息した。

    「あの男と会う。ナミ、お前もついて来い」

    「あたしがなにをするって?」

    「首実検だ」

    「あたし、嘘をいうかもしれないわよ」

    「お前にあのなんとか博士を見分けてほしいのではない。あの博士に、お前を見分けさせる。それがもっとも、頭のいい方法だろう」

    「なかなかやるわね」

     ナミは苦笑いした。

    「いいでしょ、ついていきましょ」

     サシェルを先に出させて、ナミは部屋を出た。

     一歩外へ出ると、主人を守ろうとするかのように二人の衛兵がつき従ってきた。

     この前、ナミに短剣を持ってくるという屈辱をなめさせられた二人だった。

     うちのひとりが口を開いた。

    「サシェル・イルミール男爵様」

    「なんだ」

    「隊長どのはお呼びしなくてよろしいのですか?」

    「あの男のことは口に出すな。腹が立つ」

    「は、はあ……」

     四人は廊下を進んでいった。

     衛兵のひとりが鍵を外し、扉を開けた。

     中にいた男、アグリコルス博士は大声で叫んだ。

    「君か! 君がわしをさらってここに連れてきたのか!」

    「言葉を慎んだほうがいいわよ」

     ナミが言葉をはさんだ。

     その瞬間、博士は頭のてっぺんまで怒りのせいか真っ赤になった。

    「お前……お前はガラ! そうか、お前のさしがねだったのか!」

    「アグリコルス博士、ここではあたしはナミで通っているの。めんどくさいから、ナミで通してくれない?」

    「お前のような売女に二つも名前なんかいらん!」

    「感動の対面はさておいて」

     サシェルは冷たい声でいった。

    「博士は農学の専門家だそうですな」



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    ~ Comment ~

    Re: 佐槻勇斗さん

    横文字の名前についてはいろいろと不満があったため、昔、登場人物のほとんどが仇名で呼び合うファンタジー小説を書いたら、先輩から、「やりすぎ」だといわれました(^^;)

    今は、とりあえず長い名前はえらい人だけにしておいて、しもじもはメチャクチャ短い名前にすることにしています。そっちのほうがらしそうなので。

    長編ファンタジーはそれ以来書いておらず、これが2作目ですが、これでいいのだろうかわたし(^^;)

    NoTitle

    横文字の名前って覚えにくいですよね。
    と、自分もFTを書きながらつくづく思います。
    ナミって覚えやすくていいですねv

    Re: 秋沙さん

    今後登場する人物の中で、いちばんの被害者役は、もしかしたらサシェル男爵かもしれませんよ(^^)

    でも被害者も被害者でただでは転ばないところが、こういう犯罪ものの犯罪ものたるところで……(^^)

    Re: レオ・ライオネルさん

    誰が誰をだましているかすらわからない、という状況に持っていければ最高なのですが、これがなかなか難しいですね。

    しばらくは狐と狸の化かし合いをお楽しみください(^^)

    Re: ミズマ。さん

    男爵は普通の人ですよ~。変態だけど(^^;)

    今後の展開ですけど、この小説は三部構成で、「秋」が終わっても「冬」と「春」が残っている、ということをお伝えするだけにとどめておきたいと思います。
    まあまだ「秋」も3分の1くらいしか行っていませんけれど(^^;)

    わたしも早くエリカ・バルテノーズちゃんを本格的に出したくてたまらないんですが、それには、「冬」を待たなければなあ~、というところであります(^^;)

    NoTitle

    ああぁ面白い!

    もうとにかく、骸骨が、あ、いや、サシェルがどうしてもナミをやっつけられないのが面白い!!
    もうこうなってくると、ただの金の亡者のエロ骸骨ですな(^^;

    NoTitle

    「ガラ」
    ナミは色んなところで名前を使い分けてそうですね
    二つ名を使っているという事は・・・

    多分、サシェルはだまされるんでしょうね

    ナミの過去を知っているアグリコルス博士
    今後の展開に期待大ですi-236
    • #2282 レオ・ライオネル 
    • URL 
    • 2010.10/08 00:01 
    •  ▲EntryTop 

    男爵が普通の人に見えてきたのはナミの毒気のせいでしょうか(^^ゞ

    ナミは元々博士の助手か愛人かしてたんですかね?
    騙して情報を手に入れて、男爵にリークした、とか。

    まだまだ状況は二転三転しそうですね。このままナミが男爵陣営に居続ける気もしませんし。もうひとりのヒロインも出てないし!
    ダブルヒロインの丁々発止のやりとり、見てみたいです!

    そして隊長さんが活躍する機会はあるのでしょうか。ずっと彫刻したままですかねぇ。哀れだ。

    Re: limeさん

    書いてしまうとほんとうに単純な話なので、どうやって場をつなごうか考え中(笑)。

    というか、きっと鋭い人は完全に気づいてるよきっと!(^^;)

    サシェルがさいなむのを右手でなく左手にしたのは、某楳図和夫先生の「神の左手悪魔の右手」という恐怖マンガのタイトルからだ、などとは口が裂けてもいえない(笑)。
    ちなみにあのマンガ、わたしは正視できずに途中で怖くて投げ出してしまいました(笑)。

    NoTitle

    本当のお宝の箱は手に入ってないってことですよね?
    じゃあ、今ある箱は・・・。種って・・・。博士って・・・。ガラ?
    まだまだ分からないことだらけ。
    先を楽しみにしています。

    しかし、あれですね。
    私も右手よりも左手が好き♪

    Re: ぴゆうさん

    いえ、もとネタはダリの奥さんです。

    悪妻だとかダリにとっては聖母だったとかいろいろと毀誉褒貶の激しい人ですが、なんとなく語呂がよかったので、何年も前から書いちゃ消し書いちゃ消ししていたころは、主人公の名前は「ガラ」でした。

    「ナミ」にしたのが3年くらい前だったかなあ?

    そして今、うんうんうなりながら続きを書いています(^^)

    ガレーリョス家の若当主のイメージがうまくまとまらん(←そのくらいまとめてから小説を書き始めろ!(笑))

    NoTitle

    ガラ、ガラガラヘビだね、由来は。

    ナミの考えがわからないから面白いけど、いい事ではなさそう。

    骸骨男爵が滅びる事を願いながら、読んでしまう。

    これだけ嫌いになるキャラも珍しい。

    毒のあるキャラが揃って来てるのがいい。
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