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    「紅蓮の街(長編ファンタジー・完結)」
    第一部 沈黙の秋

    紅蓮の街 第一部 6-3

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     アグリコルス博士は胸を張った。

    「いかにも。農学、植物学、毒物学、植物に関することならば、わしの知らんことで帝国の学者が知っておることはなにひとつといってない、と明言できるぞ」

    「おい」

     サシェルは背後の衛兵に命じた。

    「ならば聞く。これはなんだ?」

     衛兵はガスが持ち出してきた箱を運び入れ、開けた。

     中をひとにらみしたアグリコルス博士は、つまらなそうにいった。

    「なにかと思えば。ウンジョウソウの種ではないか。それも、わしが持ってきた、そのままではないか」

    「雲上草!」

     サシェルの口が、ぱくりと開いた。それはこっけいな眺めだったが、笑うだけの余裕があるのは、どうやらこの中ではナミひとりだけのようだった。

    「そうよ。ウンジョウソウの種が、こんなに。どう? サシェル男爵、一日にして大金持ちに、いや、帝国でも指折りの大罪人になった気分は」

    「しかし……待て。ナミ。ウンジョウソウとは。これが、ほんとうに?」

    「嘘だと思うなら、鉢に蒔いて水をやり、三日ほど待つがよい。ウンジョウソウは成長が早い。すぐに芽を出す。ひと目見れば、どんな馬鹿でもそれがウンジョウソウだとわかるじゃろう」

     アグリコルス博士は、なにをこいつらはおどろいているのかわからない、とでもいいたげにあたりを見回した。

    「これをとろ火にかけて、炒ったものをパンにつけて食べてみろ。炒りたては極上の味がするぞ。わしを招いたヴェルク三世閣下はその味をご所望でなあ」

     サシェル・イルミールには、ヴェルク・ガレーリョス三世がそんな食道楽でこの種を求めたのではないことはよくわかっていた。ウンジョウソウは、育てると、膝まであるような草に成長し、その花芽は著しい中毒性を持つ、幻覚性の麻薬となるのだ。

     これが、ヴェルク・ガレーリョス三世と、その派閥の資金源のひとつとして運び込まれてきたことは明白も明白だった。

     サシェル・イルミールは背筋を冷や汗が伝うのを感じた。

    「サシェル・イルミール、大罪人になりたくなければ、今のうちにこの種をとろ火にかけて、パンにつけて食ってしまうことね」

    「馬鹿なことをいうな」

     サシェルはこの黄金よりも価値のある種をひったくるように抱え込んだ。

    「ということは、アグリコルス博士。北方からあなたの持ってきたという芋の噂もほんとうなのですかな」

    「クワルス芋か。ほんとうだとも。あれを持ってくるには、いろいろと苦労が……」



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    ~ Comment ~

    Re: 蘭さん

    最後まで謎の女にしたいんですが、それだと読んでいるほうも怒ると思うので、ナミの真意についてはおいおい明らかにしていきたいと思っています。第三部あたりかな?

    こんばんは^^

    昨日はとうとう遊びにこれませんでした、ごめんなさいe-330

    >「サシェルの口が、ぱくりと開いた。それはこっけいな眺めだったが、笑うだけの余裕があるのは、どうやらこの中ではナミひとりだけのようだった。」

    このシーンが頭に浮かんで、一人で笑ってしまった私^^;
    この章に入ってからの展開がテンポ良くて、もう少し読み進みたいのですが、明日(今日)の事を考えてここまでにしておきます。

    ナミ、まだまだ謎の女のままi-202

    Re: LandMさん

    わっかりました~。

    近いうちにリンクをつなぎ変えておきますです~。

    破滅の理由はもっと即物的でミもフタもなかったりします(^^)

    NoTitle

    某最後の物語タクティクスでそういった毒の話がありましたね。その毒の中毒死すると、死体からその植物が生えてくる…といった逸話。そして、その植物が生えた家系はその代で滅ぶ…という曰くつきの話でしたね。

    今日は連絡で参りました。
    ファンタジー小説グッゲンハイムからLandM創作所へ名前を変更しました。よろしくお願いします。TOPが小説ではなく、玄関になっておりますのでご注意くださいませ。
    直接小説へ行きたい方は

    http://landmart.blog104.fc2.com/blog-entry-351.html
    へお願いします。
    ポール様には、色々とお世話になっております。またこれからもよろしくお願いします。

    Re: ネミエルさん

    ここで語られている「帝国」は、ただのごくフツーの「安定した統治機構」(そのくせよく内乱が起きる)であって、それ自体は善でも悪でもなく、むしろどっちかといえば善に近いほうだと思ってください。

    ちなみに、明日語られることに比べれば、麻薬の利益なんて、たかが知れています。

    ああっ自分をどんどん追い込んでいくっ(笑)

    Re: limeさん

    わーすみませんすみません。

    limeさんにそんな思いをさせるつもりはなかったんですう。

    じゃあ、最後のヒント……よりも明日の「紅蓮の街」の原稿を書いたほうが早いな!(←できていないのかよ我ながら自転車操業……)

    どこの世界にも麻薬の類いはあるんですよね、やっぱり…

    帝国ですか…

    ふむ…悪い響き…

    NoTitle

    う~ん、賢い人は、もう分かるでしょうって?
    わからない・・・・。
    ああ、馬鹿なんだ (ToT)
    何によって、誰がどうして困るのか。

    いいや。明日を待ちますから(ー"ー )

    Re: ぴゆうさん

    昔、白土三平のマンガで読んだのですが、

    「万人の益となる素晴らしいものがかえって害をもたらすこともある」

    ということを思い浮かべていただけると、誰がどうして困ることになるのかもいくらか想像がつくかと思います。

    これ以上は今はしゃべらんもんね(^^) 明日をお待ちください。

    NoTitle

    おはようv-411

    金木犀のいい匂いがするよ。
    咲き出すと雨が降って、すぐ散ってしまうから、寂しい。

    こう云う植物が出て来るといいな。
    クワルス芋、なんだろ。
    楽しみ。

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