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    「紅蓮の街(長編ファンタジー・完結)」
    第一部 沈黙の秋

    紅蓮の街 第一部 8-3

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    「勝算ってなんの勝算だよ」

     ガスはぼやいたが、ナミの言が正しいこともわかっていた。

     ガスは立ち上がった。ナミはひもを手に握り締めて、ガスの後についた。

     どぶ川が流れる倉庫に、長いマントを身にまとった二人の男の姿が現れたのはそのときだった。

    「ガレーリョス家のものか」

     ガスは叫んだ。

    「いかにも、オルロス伯爵の命を受けて来た。サシェル・イルミール男爵の使者は、お主らか?」

     ガスは首を振った。

    「違うね」

    「違う?」

    「今のおれたちは、これからの交渉がうまくいくように、不届き千万にも使者にくっついてきたお邪魔虫をぶっ殺すための用心棒に過ぎないってことさ!」

     ガスの右手が一閃した。

     つい先ほどまで、木切れを刻むのに使われていたナイフが、目もくらむような速さで宙を飛んだ。

     『ガレーリョス家の使者』をかすめて飛んだそのナイフは、二人の陰に隠れていた三人目の男の右目に突き立った。

     叫び声が上がり、男の手にしていた石弓から、太矢が飛んだ。目がつぶされていては、狙いをつける余裕とてなく、太矢はあさっての方向へ飛んだ。

     『ガレーリョス家の使者』は、別に慌てはしていなかった。分不相応にも、武のガレーリョス派に歯向かおうとする輩を始末するための男を、もう一人この近くに伏せているからだった。ナイフを投げたくらいでは届かない、倉庫の陰に石弓を持った男が……。

     猛烈な勢いでなにかが飛んだ。

     それがそこらへんにいくらでも落ちている石であることに、その場のほとんどの者が気がつかなかった。

     それを投げた本人である、ナミひとりを除いては。

     ナミが先ほどから弄んでいた紐、あれはただの紐ではなかった。

     弓を知らぬ蛮族が使う武器、投石紐だったのだ。

     その仕組みは簡単である。紐の中央部、わずかに広がったところに小石を置き、片手で野菜袋でも振り回すかのごとく思い切り回転させ、あるタイミングで離すことにより、その小石は加わった遠心力により、殺人的な速度で目標へ向かって飛ぶ。

     微妙な制御が要求されるため、修得はけっしてたやすいものではなかったが、その有効射程距離と、命中すれば頭蓋骨くらい楽に砕いてしまう破壊力は、蛮族の武器であるからといって馬鹿にできないものがあった。

     そして今、ナミはその腕をまざまざと見せつけていた。頭を砕かれた死体を証拠に。



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    ~ Comment ~

    Re: 矢端想さん

    1960年代ごろの過激派学生が、パチンコで投石していたのは、絶対、「スリング」を「スリングショット」と誤解していたのではないかと思います(笑) あれのせいで地面の敷石が全部タイルとアスファルトになったところをみると、それなりに戦果(?)はあったようですが。

    投石紐が出てくる話は、白土三平先生も描いていますね。オチになってるので題名を書くのは避けますが。

    ワルモンばかりの世界はわたしだっていやですよ。住むんだったら現代日本とか「探偵エドさん」の世界のほうが絶対いいですよ。正直者がバカを見る可能性は少なければ少ないほうがいいですしねえ。

    でもRPGとか小説とか映画とかでは、そういう悪辣な街を歩くダーク・ヒーローに自分を重ねてみたくなることがあるのだから、人間っていうのはまったく(^^)

    ダッジ・シティとか聞いてどきどきしません?(^^)

    それにしても、短剣出して、レイピア出して、投げナイフ出して、含み針出して、煙玉出して、棍棒出して、石弓出して、投石紐まで出してしまって、あとどんな武器出せばみんな驚いてくれるだろうか、うーむ、自分で自分の首を絞めまくっているような……(笑)

    NoTitle

    投石紐!
     「サムエル記」でダビデが巨人ゴリアテの額をカチ割ったあれですね!
    これを使いこなせたら最強!紐と石なら持ってても合法だろうし(そうかな?)。

    ワルモンばかりの世界はヤですねー。
    マカロニウエスタンとか人ごとみたいに見てる分には面白いけど、絶対あの世界には参加したくない。僕のような弱っちいヘタレは登場後2秒で撃ち殺されて終わりです。それも一発で。ハチの巣にすらしてもらえない・・・。

    Re: limeさん

    海外ミステリのことでしたら、リンク欄にわたしの十倍くらいは本を読んでいらっしゃるかたの「探偵小説三昧」というサイトがありますので、そこでお話をされてみてはいかがでしょうか? なにかわたしの知らないいい本をご存知かもしれません(と、どんどん深みにハメていく悪い男であった(笑))

    ほんとうは柿沼氏は翌年も「このミス」にエッセイを書いておられたのですが、そちらでは「女探偵もの」がメインだったため写しませんでした……読みたい?

    NoTitle

    えっ。そうですか?(*^~^*)ゝ
    だとしたら半分はポールさんのせいですから・笑

    そして、海外ミステリじゃないとだめみたいです(汗

    Re: limeさん

    ガスの芸術というか手なぐさみは、後から思いもよらぬことに……とと、しゃべりすぎるところだった(^^)

    せっかく図書館に相互貸借で頼もうとか思っているのに、この手のミステリで「濃厚」とか書かれると思わず手が止まってしまうではありませんか(^^;)

    なんかlimeさんの読書日記読んでいると、人がどうやってこの手の同人誌にハマっていくのかを実地検分しているかのようであります(笑) limeさんの場合は海外ミステリですけど(^^)

    NoTitle

    それでも、ナミとガスには、悪者ながら美学を感じますね。
    ちょっと、ガスの芸術性に興味がわきました。


    はあ・・・・。ゴールデンボーイ読みました。
    あのラストあたりは卑怯なほどドキドキさせられました。
    ゴールデンボーイも秀作ですが濃厚です。
    ノーマルな男性ミステリファンの意見が聞きたいです・笑

    4作目・・・・ああ、切ない。
    またもや登場人物に感情移入し過ぎて、切ない。
    たかが恋。されど恋。(恋話じゃありませんが)

    Re: limeさん

    これでも「ファファード&グレイマウザー」の舞台であるランクマーに比べればまだマシかも、と自分をなぐさめてみる(笑)

    それとか「エルリック・サーガ」の新王国諸国とか。あそこは数あるファンタジー世界でも絶対住みたくない世界のひとつというか筆頭です(笑)

    まあ世の中には下には下というものが……(笑)

    NoTitle

    この物語の舞台に放りこまれたら、やっぱりナミにつきますね。

    だって・・・どうせみんな悪者なんですもん(T^T)。

    生き残らなきゃ。

    Re: ぴゆうさん

    まったくです。ナミもガスも、お友達にはしたくない人たちですね(笑)

    第16章でひと区切りつけるのですが……それまで毎日更新できるかな(爆)

    NoTitle

    まぁ怖い!

    二人が行く所には死体が転がる。

    一般人は近づかない方がいいニャ。

    v-12

    わくわくしてる、おもろいね。

    ポールが四苦八苦してると思うと・・・またおもろい。

    産みの苦しみだけの面白さがあるよ。
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