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    「紅蓮の街(長編ファンタジー・完結)」
    第一部 沈黙の秋

    紅蓮の町 第一部 9-4

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     ヴァリアーナ夫人は誇らしげに自分の息子を見た。

     ヴェルク三世は、ガレーリョス家の当主らしく声高に叫んだ。

    「そして、それら才あるものを統率するのは、このわたし、オルロス伯爵ヴェルク・ガレーリョス三世の鉄と血に象徴される意思であり掟なのだ!」

    「……御意」

     バルはさらに深く頭を下げた。

     このヴェルク三世という主人が、苛烈で剛毅である意味公正な人間であることだけは、バルも認めざるを得ない。噂に流れてくる、イルミール家の当主サシェルは、女の手に針を刺すことしか頭にない変態男だし、評議会議長の座を守っているバルテノーズ家の女当主エリカ・バルテノーズは、明晰な頭脳と豊かな人間性を兼ね備えた傑物だと聞いているが、だいいちあの娘は女で、しかもまだ若すぎる。そのうえ、その派閥には財力もなければ兵士も少ない。全てを総合的に考えてみると、この終末港の主としてもっともふさわしいのは、このヴェルク・ガレーリョス三世であろう、という結論に達するのだった。

     それに、ヴェルク・ガレーリョス三世には、今のままでもしっかりした後継者がいる。歳の離れた弟である、アルビヌス様は、御年五歳にしては丈夫な身体を持っているため、まず成人することは疑いないだろう。そしてそのさらに下には、ハレヌス様が御年三歳で、これまた元気に育っている。

     ヴェルク・ガレーリョスが、「我が弟に」というのもあながち間違ってはいなかった。

     しかし……。

    「ヴェルク、お前はほんとうにあの忌々しいバルテノーズ家の小娘と結婚するつもりなのかえ」

     ヴェルク三世は、しかたなさそうにうなずいた。

    「そうでもしなければ、この街を完全に手中に収めることはかなわぬのです、母上。しかし、ご安心ください、あの娘が孕むことはありません。バルテノーズ家とガレーリョス家を継ぐのは、我が弟たちです」

     ……そうなのだ。

     バルはこのことを考えるたびに暗い気持ちになるのだった。

     歳の離れた弟とは、まったくなんという! 故・ヴェルク二世は、死する数年前から、熱病で子をなす能力を失っていたというのに。

    「寝所へお連れいたしましょう、母上。どうもお疲れのようです」

     ヴェルク三世は目に異様な光をたたえて母親を見た。母親も同様の目で息子を見た。

    「バル」

     ヴェルク三世は立ち上がった。

    「ヨルバとコセルを、我らが寝所へ。母上もわたしも、寝る前に座興が必要だからな」

    「御意……」

     汗まみれのバルは深く深く頭を下げた。



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    ~ Comment ~

    Re: 椿さん

    ヴァリアーナさんはこの作品の最大の悪役のひとりです。

    ドラマでいったら貫禄じゅうぶんのベテラン女優に演じてもらいたいなあ(^_^)

    NoTitle

    マザコン(^_^;) ヘビー級。

    女は、マザコン男は嫌いですが……。
    母親になると、マザコン息子が可愛いんですよね。
    難しい女心。(と言うほどのものでもないか)

    息子よりお母さんの方が歪んでるわけなので、お母さんの活躍にも期待です♪

    Re: blackoutさん

    直接的な描写こそないものの、事態はどんどんエスカレートしていきます。

    この小説、ある意味、ブレーキの壊れたダンプカーみたいなもので……(^_^;)

    さて、躊躇うことなく続きを読むことにしましょうw

    おそらく、自分が思い描いた情景よりはライトなものだと思うのでw

    いや、思いたいだけかもしれませんが(汗)

    Re: しのぶもじずりさん

    PTAはどうか知りませんが、某日本ユニセフ協会の某アグネス女史は怒りますわな(^^;)

    全年齢対象だったんですか?

    いまさらですが、そういえばR指定がありませんでした。

    でも、いくら性的描写が無くても、PTAは絶対に怒ると思う。

    Re: fateさん

    9まで読んでいただいてありがとうございます。

    だいたいこれで6分の1というところです。

    パッションもそうですが、わたしの場合、

    「毎日少しずつ書かないと長編が上がらない」

    という情けない一面もあるので……(^^;)

    どこまで「暗い情熱世界」になっているかはわかりませんが、お楽しみいただければ幸いです。

    かならずやご満足させてみせます(^^)

    後悔はしていない…

    そう言いきれる清々しさに感嘆です。
    実は、fateも何かを描き始めるときって、何にも考えておりません。
    プロットなど、存在しておりませんので、公開してくださいとか言われると困ります。背景も人物の設定も皆無に近くて、描きたい世界と‘テーマ’だけがいつでも漠然とその辺を漂い、そこから発せられるたった一言や、一場面に魅せられて、それを文章に乗せると、後は勝手に世界が進行していきます。
    お陰で、最後まで終了したものしかここには掲載出来ません。途中まで行って、設定を加筆したり、説明描写を戻って入れたり、必要なエピソードを追加したりするので。
    ですから、連載しながらupしていく他作家さまを、fateは尊敬してしまいます。
    どんだけいい加減に進めても、テーマと言いたいことがブレない限り、最終的に辻褄が合わない! ということにはなりませんが、加筆は必ず必要になるので。

    情熱で進める。パッションと勢いで進む。

    fateの場合は、狂気を描くことでそれを昇華し、最終的に反吐が出るような展開にはしない、出来るだけ気持ち良く、というところですか。

    変態、というより、やはりこれは取り憑かれた人の悲哀と、人間の悲しさの物語ですね。
    ただ、ここに込められた激しいまでの、そこまで自らを貶めて描く作者さまの情熱を感じました。

    fateもそうです。作者も読者さまもとことん貶めて世界を漂い、最後に僅かの救いを求めるのです。

    最後まで、この暗い情熱世界を堪能してみます。

    Re: 蘭さん

    もうほんとに変態と悪人しか出てこない小説で……(^^A;

    でも後悔はしていない(笑)

    おはようございます^^

    ・・・・・・・・・・・・・・・v-405(あんぐり)

    「開いた口が・・・」とはこう言う事だったのか・・・と再認識させられるほど、塞がりませんでした。


    えっと・・・・・・・・・・・・・・・・・キモい!!(><;
    や、話の流れとしては、めちゃめちゃ面白いですe-343
    しかし・・・・想像しただけで、さっき飲んだ咳止めの薬があがって競うv-404

    Re: 秋沙さん

    小説やマンガの変態キャラは動物園の動物みたいなもので、猛獣だの珍獣だのを檻の外から見るのは楽しいことです。

    檻の中に入っちまったらことですが、普通の人間は入るまでに至らないから大丈夫です。

    きっと……。

    Re: 矢端想さん

    がんばります。

    どこまでエスカレートできるかは神のみぞ知るですが、直接的な描写は避けるつもりです。

    なんか寸止め空手の大会にでも出場している気分(^^)

    Re: ミズマ。さん

    ちなみにこの母子は昔読んだ某いけないマンガのキャラクターをもとにしています。

    ちなみにそのマンガは単行本が薄いうえに定価で1冊3000円近かったので「誰が買うか、バカ野郎」と見向きもせず、結末がどうなったのか知りません。

    今さら知る気もないですが。

    NoTitle

    ふっふっふっふっふ・・・

    好きだ、こういう展開。

    (あぁ・・・あたしも骸骨男やマザコン変態男に劣らず変態かも・・・)

    NoTitle

    ぞっとしました。

    この調子でどんどんエスカレートしちゃってください。
    作者自身の精神をかえって安定させるためにもこういう物語は必要なのです。

    「ついて来れる奴だけついてこい読者!」という感じのポールさんのハードボイルドな態度も評価いたします(ホントだよー)。

    ただのマザコンかと思ったら!
    そら、女の子の手に針刺してヨロコブ変態の相手としては、ただのマザコンじゃあ役者不足ですよね^^;


    直接的な描写がなければ全年齢でOK、と信じたいです。
    ってか、R指定ついたとしても、続きが読める年齢で良かったぁ。

    弁明

    全年齢対象としては、少々やりすぎたかと思った。

    でも後悔はしていない。
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