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    「紅蓮の街(長編ファンタジー・完結)」
    第一部 沈黙の秋

    紅蓮の街 第一部 15-3

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     有力とはいってもたかだか田舎貴族の私闘が、ここまで激しい海戦になるとは、誰が想像しただろうか。

     そして、それがここまで不手際なものになろうとも。

     ガレーリョス家の護衛軍船の一隻、『人魚吊るし』号にとって不幸だったのは、不思慮にも島のすぐ近くをかすめるように通ったため、敵の視認が遅れ、戦闘態勢をとる前に、イルミールの船に横腹をさらしてしまったことであろう。

     ガスの島影からの奇襲突撃作戦は、見事に図に当たった。

     相手が横腹をさらしているのを目視したイルミール側は、漕ぎ手に全速前進を命じた。櫂を握った百人以上の男たちが、一心に呼吸を合わせてそれを動かすことにより、ガレー船は風のない海でも水上を自在に移動できる。そして、その質量と速度は、破壊的な力を衝角に集中させていった。

     イルミールの中型軍用ガレー船、『波濤呑み』号の衝角が、ガレーリョスの中型ガレー船『人魚吊るし』号に激突したのは、ガレーリョス側がまだなにも対策が取れていないちょうどそのときだった。衝角は、『人魚吊るし』号のどてっ腹に槍がごとく突き刺さった。

     喫水線下に大穴が開いた。

     そこですぐに離脱していれば、イルミール家の圧倒的優勢となるはずだった。

     しかし、『波濤呑み』号は、櫂を必死に操ったにもかかわらず、『人魚吊るし』号から離脱することができなかった。

     衝角と、船のどこかがひっかかったのだ。

     それを無視するガレーリョス側ではなかった。武を建前とするだけあって、それからの行動は迅速であった。

     たちまちのうちに『人魚吊るし』号からロープや鉤つきの鎖、梯子などが『波濤呑み』号に向けられた。沈みゆく船を捨て、相手の船を乗っ取る以外に、生き残る術はない。彼らもまた、必死だった。ついさっきまで漕ぎ手として乗っていた乗組員たちが、それぞれに武器を取って兵士と化した。

     これにより、ガレーリョス家、イルミール家双方とも一艘の船が脱落した。

     それでも、輸送以外のことには向いていない帆船を含めてもガレーリョスとイルミールの戦力は二対三。まだイルミール家のほうが圧倒的に有利である。

     ガスは僚船の『磯切り』号に指令を出した。船体に火をつけ、ガレーリョスの護衛船めがけて突撃するよう命じたのである。

     命令は実行された。

     ぎりぎりの漕ぎ手を乗せ、可能な限り軽くした『磯切り』号は、鉤つきの鎖や網により、ガレーリョスの船を引っ掛け、共に燃え尽きんものと猛烈な速度で突進していった。

     護衛船『天使の灯火』号の船長が、そのときなにを考えたかは記録にない。



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    ~ Comment ~

    Re: limeさん

    船に名前をつけるこういう作業をしていると、「銀英伝」の田中芳樹先生とかさぞやたいへんだったろうなあ、と思います。

    でもこっちもこっちで、「既存の神話や伝説によりかかれない」だけきついものが(^^) 栗本薫先生の「グイン・サーガ」みたいに伝説体系をまるまる作ってしまう、という手もありますが、さすがにそれはわたしの手に余る(^^)

    肉を切らせて骨を断つというよりは、どっちも不手際の極みなんですけどね。ヴェネツィア人やジェノヴァ人が見たら頭をかきむしって絶叫するようなヘタクソな海戦です(^^;)

    いい感じのきれいな青年って、あの人、かなりエキセントリックじゃありませんでしたっけ?(^^;)
    ネットに夢中で昨日読むのを忘れたので200ページから進んでいません。うむむ(^^;)

    NoTitle

    ハイテクを駆使した戦闘で無いところがかえって面白いですね。
    船一つ一つに名前をつけるのって、大変な作業じゃないですか?
    でも、印象付けるためには欠かせませんね。
    肉を切らせて骨を断つてきな戦闘。
    勝利はどうなるか・・・。

    読書、なかなか進みません。
    でも、いい感じのきれいな青年出てきました♪
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