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    「ナイトメアハンター桐野(二次創作長編小説シリーズ)」
    1 ナイトメア・ハンターの掟(完結)

    ナイトメア・ハンターの掟 4-4

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    第四章 遅れてきた男(承前)


    「まずは仕事をお願いします」
    「ヤバい仕事かい?」
    「いつも、桐野さんが行っているのと大差はない仕事です。しかし、その前段階、物理的な意味ではかなり危険がある、といってかまわないでしょう」
    「相手は誰だ」
    「参議院議員、川畑敏則の秘書である、佐竹一という男です」
    「政治が絡んでくるのか」
    「その背景についてはお教えするわけには参りませんが、桐野さんに突き止めてもらいたいことはひとつです。前回の選挙で、川畑陣営が深刻な選挙違反をしたかどうか」
     自分の足が震えてきたのがわかる。
    「買収でも?」
    「おそらくは」
    「……」
     考えた。
    「危険な仕事だな。もし、わたしが一役買っていたということがバレたりしたら、ただでは済まなくなる懸念がある」
    「受けるも断るも桐野さんの胸しだいです」
    「報酬は?」
    「是蔵教授の情報と、いささかの礼金」
    「足もとを見たな」
    「こちらも仕事ですから」
     心を決めた。
    「いいだろう」
     北村はホッと吐息をついた。
    「断られたらどうしようかと思っていました」
    「ただし、条件がある」
     北村が真顔になった。
    「なんです?」
    「事件に大野龍臣が関わっていたら、わたしは口をつぐむ可能性がある」
    「大野龍臣……」
     北村は虚空をにらんでいたが、やがて身体から力を抜いて答えた。
    「かまいませんよ」
     今度はこちらが吐息をつく番だった。
    「すまない」
     わたしたちは顔を見合わせて、軽く笑った。
    「夢に入るのはいつだ?」
    「来週中には手はずを整えます」
    「是蔵教授の情報は?」
    「いま聞きたいですか?」
    「聞きたいから来たんだ」
    「わかりました」
     北村はファイルを取り出した。
     わたしはひったくるようにして奪うとページを繰った。

    『ファミリーレストラン せらえの』
     電話口で話したとおり、流行ってないレストランだった。
     是蔵忠道はまだ来ない。待ち合わせ時刻の四時より前なのだから当然だ。わたしはコーヒーをちびちびと飲んでその人を待った。
     ショートカットのウェイトレスがコーヒーポットを持ってきた。
    「おかわりはいかがですか?」
     ありがたくちょうだいした。
     砂糖を入れてよく掻き混ぜた後、クリームを流した。渦を巻くのをぼんやりと眺めていると、窓の外で車が停まった。目を向ける。後部座席から速水鈴音が苦労して降りてくるのと視線が合った。片手を挙げて挨拶した。車椅子と格闘しながらも、会釈をして返してくる。時計を見た。待ち合わせの十五分前である。あちらのほうが自然だろう。
     で、是蔵忠道はどこだ?
     いた。運転席から降りてくる、わたしより七つ年上の男。どこもかしこも角ばった顔をしている。北海道みやげの木彫りの人形にそっくりだ。
     北海道みやげは、速見鈴音の後ろに立つと、その車椅子を押して行った。悪い男ではなさそうである。
     二人がドアより入って来たところで、わたしは立ち上がり、頭を下げた。向こうも礼を返してくる。
     わたしは一脚、椅子をどかし、速水鈴音の場所を作った。
     是蔵忠道は頭を軽く下げ、押していた車椅子をテーブルに停めた。そのまま速水鈴音の隣の席に座る。
     どちらからともなく手を伸ばした。
    「是蔵です」
    「桐野です」
     握手を交わす。
    「失礼ですが、名刺を切らしておりまして」
    「わたしもですよ、是蔵先生」
     ここで名刺を渡しておけばなんとなく勝った気になれたのに残念だ。
    「桐野さん、食事はどうなさいます?」
    「ここで食べていくつもりでしたが」
    「なら、お話ししながら食べることにしませんか? ここの鶏料理、特にチキンドリアは絶品ですよ。海産物はやめたほうがいいですけれどね」
     ウェイトレスが注文を取りにやってきた。わたしと速水鈴音はチキンドリアを、是蔵忠道はミックスフライのセットを頼んだ。
    「さて」
     水をひと口飲み、是蔵忠道は座りなおした。
    「桐野さん、わたしを調べましたか?」
     いきなり痛烈なストレートで攻めてきた。横で速水鈴音が目を見開く。
     嘘をいっても始まらないだろう。
    「ええ」
     わたしはうなずいた。
    「ずいぶんと正直ですね」
    「嘘をついても、この顔が全部ばらしてしまいますので」
    「なるほど。で、どれだけのことがわかったんです?」
    「是蔵忠道。出身、埼玉県。J大文学部仏文学科教授。専門はベルクソン研究。主著は『「創造的」進化爆発の地平』。高校のころにアマチュアボクシングの県代表。そして……」
     森村探偵事務所がほじくり返してきた、数年前の様々な不思議な事件。結論はひとつだ。わたしはまっすぐ、是蔵忠道の目を見た。
    「……ナイトメア・ハンター」
    「元、です。今はただの学者ですよ」
    「元?」
    「能力はなくしてしまいました」
    「なぜです?」
     是蔵忠道はバットで殴られたような顔をした。
    「なぜです……って、わたしはあなたのほうに、どうしてナイトメア・ハンターとしてやって行けているのかを訊ねようと思ったのですが」
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    ~ Comment ~

    Re: 有村司さん

    ここらへんは、新版の「ナイトメアハンター・ディープ」が、わたしがハマっていた初版の「ナイトメア・ハンター」と設定が食い違っていたため、それをすり合わせるのに非常に苦労した覚えがあります。

    いいゲームなんだけどなあ。カルト作品なのかなあ。

    こんばんはー。

    おおお!?事件が…というより人と人とが複雑に絡んで来ましたね…!

    大野さんの名前が出たとき、すごくリアリティーを感じました。
    慎重には慎重を、配慮には配慮を…ですね。
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