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    「紅蓮の街(長編ファンタジー・完結)」
    第二部 非情の冬

    紅蓮の街 第二部 1-1

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       世の乱れに天の怒りはなはだしく、ついに愚かなる民草は見放されたり。

       降る雪は全地を覆い、吹く風は草木をひとつ残らず枯らしつくせり。

       人はかくて天の非情を知りしが、時すでに遅かりき。

       千戸のうち命ありて春を迎えしはわずか一戸のみ。

       人よ、『非情の冬』を畏れよ。

       見えずとも、そは常に汝らの頭上にあるがゆえなり……。

         古写本『天訓集 巻三』天変の章より抜粋



    第二部 非情の冬







     あの海戦から三日、ナミとガスはバルテノーズ家のやっかいになっていた。その間というもの、ガスは、誰とも口をきかなかった。自殺ないし類似行動に出ることの危険性を感じた家令のアクバから、刃物はナイフですら取り上げられていたので、趣味の木彫りに没頭することすらできなかった。

     そして四日目、ガスは初めて、ナミに向かって口を開いた。

    「ナミ、お前、あの博士のいったことを、どう思う」

     ガスは、朝食の粥を木さじですくいながら、目の前のナミにいった。

     どうせ行くところはどこにもないんだ、というのがガスの偽らざる今の気持ちだった。ナイフくらいあっても、別に誰にも突き立てたりやしない。特に、飯を食わせてくれる相手ならなおさらだ。このクソ女は別にしてだが……。

    「さてね」

     ナミもまた、粥を口に運びながら答えた。

    「伝承とか、昔話とかにはうといのよ。そもそも、『非情の冬』って、なんなの? 『ゲクロス帝の大飢饉』よりひどいわけ?」

    「おれもよくは知らんよ」

     ガスは認めざるを得なかった。

     ここは、バルテノーズ家の私兵たちの食堂だった。大鍋で煮た麦粥を、山と重ねてある中から各人がめいめいに選んだ椀に取って食べていく、という流れである。おかわりは自由だが、一回に限る、という暗黙の了解ができているようだった。

     木さじを乱暴に口に含み、贅沢にも牛乳で煮てある粥をもぐもぐやってから、さじを音を立てて口から引き抜いた。

    「行儀が悪いわね」

    「生まれが悪いもんでね!」

     ガスは椀に木さじを突っ込み、ぐるぐるとかき混ぜた。

     それで粥がよりうまくなるというわけでもないだろうに、と考えると、ガスは自分のしていることが情けなくなった。



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    ~ Comment ~

    Re: fateさん

    いやあ、わたし、長編小説書くと「額縁」に凝るもんで(^^;)

    意味ありげなモノローグとか、本の一節とかを差し挟みたくなってしまうんですよ。

    ちなみに、ここで出てくる伝承や古書は、全部わたしの創作です(当たり前だ(^^;))

    伝承とか、

    昔話の真実とか、言い伝えとか。
    使い方がさすがですな~

    というか、すべてはそこから始まり、それに終結するんですかね。

    実際、今、外に雪が舞っているので、なんだかな~という気分です。

    Re: ぴゆうさん

    なんたって白土三平先生の世界を目指していますから。(大ウソ)

    何人が無事に冬を越せますかねえ……ふっふっふっ。

    最近、リアル方面で自分の無力さ加減にいらだっていたりするので、コミケでの本の売れ行きしだいで生存者の割合が違っていたりして(笑)。

    はたしてサシェル男爵とオルロス伯爵は生きて第三部を拝めるでしょうか乞御期待(笑)。

    NoTitle

    すさまじいような飢饉になりそうだね。

    どんな時も死ぬのは民草でござる。

    土粥でも食べるしかないか。

    為政者が餓死したなんて聞いたことないもんね。

    しかし、不幸に不幸にシフトしているねぇ~~
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