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    「紅蓮の街(長編ファンタジー・完結)」
    第二部 非情の冬

    紅蓮の街 第二部 1-2

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    「ガス、あんた、イルミール家でよほどうまいもの食ってたの? 牛乳で煮た麦粥なんて、下っ端兵士が食うもんじゃないのにさ」

    「サシェル・イルミールがそんなたいしたもの食わせてくれるわけがないだろ。お前のほうこそ、図々しく、あれを食わせろこれを食わせろいって、イルミール家の家計を圧迫していたそうじゃないか。あの肝っ玉の太さには、私兵から使用人までひっくるめて、邸じゅうの人間があきれはてたもんさ。まさか、そこまで図々しいやつが……」

     ガスは木さじをナミの鼻先へ突きつけた。

    「おれなんかが、逆立ちしてもかなわないようなろくでなしの変節者の裏切り者だったとはな」

    「ろくでなしの裏切り者ということは認めるわ」

     ナミは表情一つ変えず麦粥を食べていた。

    「だけど、変節者には当らないわね。だって、最初から最後まで、徹頭徹尾、イルミール家とガレーリョス家をペテンにかけるつもりで行動していたんだもの」

    「だったら、気にもなるだろう」

     ガスは意地悪くいった。

    「アグリコルス博士がいっていた、『非情の冬』がどれほどひどいものになるのか、がな。違うか?」

    「さっきもいったとおり」

     ナミは粥を口に運び、しばらくもぐもぐとやってから答えた。

    「あたしは、たしかに『非情の冬』がどんなものだか知らない。だけれど、それは、この辺りにいる全員がそうでしょう。となると、最善の選択は、一見場当たり的と思われるような行動にある……」

    「ほんとに行き当たりばったりだもんな」

    「臨機応変っていってよ」

    「ふん」

     ガスはまた黙り込んだ。

    「エリカ・バルテノーズにはもう逢ったんだろ?」

    「博士のほうはね」

    「アグリコルス博士か」

    「ほかに誰か博士に知り合いがいるっていうの?」

    「いないな」

     ガスは認めた。

    「博士は、バルテノーズ家の賓客扱いよ。もっとも、あの芋の育て方を知っているのは博士だけだから、当然だけど」

    「そこで話はまた最初に戻ってくるな」

     ガスは粥をひとすくいした。

    「いったい、『非情の冬』とはなんなんだ、ってことだ」

     ナミは天を仰いだ。

    「そうね……」

     どこかぼんやりとした表情。

    「博士は知っているみたい。顔は見てないけど、エリカ・バルテノーズも。教養がある人間には、常識なのかもしれないわ」



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    ~ Comment ~

    Re: LandMさん

    この設定で「米」を出したら雰囲気がさすがにぶちこわし(笑)。

    ネミエルさんのコメントでも書いたとおり、「オートミール」みたいなものをイメージしています。

    ちなみに、食事をオートミールや麦などの粥にするのは、プロイスラー「クラバート」の影響であります。

    パンは焼くのにカネがかかりますからねえ……。

    Re: ネミエルさん

    似たようなものが食べたければ、

    スーパーに行って「オートミール」を買ってきて、

    牛乳で煮てわしわし食らえばいい……かもしれません。

    昔は病気になったときよく食ったそうであります。

    NoTitle

    やっぱりお粥は麦粥なんですね。
    どこをどう考えても普通のお粥さんじゃないよな~~とおもいながら2部を読んでいましたが。
    その辺は時代状況に合わせてでしょうね。
    どうも、LandMでした。

    NoTitle

    さじを突きつけたときに粥が飛ばなかったが心配です←

    麦粥のイメージがつかないです。

    やっぱり世代が(オイ
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