「紅蓮の街(長編ファンタジー・完結)」
第二部 非情の冬
紅蓮の街 第二部 1-4
周りの人間が、いったいなんだこいつらは、とでもいいたげな視線をガスとナミの二人に送った。
その視線に、ガスは気がつき、指が白くなるまで握り締めていた木さじを持ち替え、決まり悪そうに残りの粥をがつがつと喰らい始めた。
ナミは、そんなガスの食べっぷりを呆れたように見ていたが、肩をすくめると自分も粥に専念し始めた。
やがてふたりの椀は空になった。
先に口を開いたのはガスのほうだった。
「すまん。あんな男をハシャク男爵閣下と比べられたりすると、おれはどうしても頭に血が上るんだ」
「なにがあったのよ、孤児院で」
「お前にはしゃべらん」
「気になるわよ」
「いくら気になろうと、『帝国』全土が灰燼に帰する日が来たってお前みたいに口が軽くてよこしまなことばかり考える女だけには絶対にしゃべらん」
「いわれたものね……」
「おれはイルミールの手のものを孤児院に引き込んで、大虐殺を起こした張本人の男、でかまわないだろう、別に? 現に、その汚名は、おれがこの『終末港』で生きていくのに、非常に役立っているしな。『彫刻屋』のガスがやってくるといえば、あのあたりの子供を寝かしつけるときに使われている常套句だとか聞いているぜ」
「だったら、その態度をツァイとの交渉の場でも貫けばよかったのよ。変なことを口走っちゃってさ。あのときのあんたときたら、ほんとに、見苦しいったらなかったわ。まあ、あたしの目的には役に立ったけどね」
「前から気になっていたんだが……」
ガスは椀を抱えて立ち上がった。ナミに向かってあごをしゃくる。
ナミも椀を抱えて立ち上がった。
どうやら、おかわりに向かうらしい。
列の一番後ろに並んだ二人は、先ほどの会話を続けた。
「お前、いったい、なにをしようと企んでいるんだ」
「企む? なにを?」
ナミはとぼけた。
「あたしは、単に、将来性のある勢力に雇われることを決めただけよ」
「嘘だな」
ガスは吐き捨てた。
「お前、絶対、裏でまだなにかあくどいことを考えていやがる。おれの勘に狂いはねえ」
ガスがさらに詰問を続けようとしたとき、人を掻き分けるようにしてアクバが二人の前に現れた。
「ナミ殿、ガス殿は?」
「大丈夫。もう普通に会話ができるわ」
「それはよかった。お食事が済んだら、お召し替えを。わが主がお会いになられます」

その視線に、ガスは気がつき、指が白くなるまで握り締めていた木さじを持ち替え、決まり悪そうに残りの粥をがつがつと喰らい始めた。
ナミは、そんなガスの食べっぷりを呆れたように見ていたが、肩をすくめると自分も粥に専念し始めた。
やがてふたりの椀は空になった。
先に口を開いたのはガスのほうだった。
「すまん。あんな男をハシャク男爵閣下と比べられたりすると、おれはどうしても頭に血が上るんだ」
「なにがあったのよ、孤児院で」
「お前にはしゃべらん」
「気になるわよ」
「いくら気になろうと、『帝国』全土が灰燼に帰する日が来たってお前みたいに口が軽くてよこしまなことばかり考える女だけには絶対にしゃべらん」
「いわれたものね……」
「おれはイルミールの手のものを孤児院に引き込んで、大虐殺を起こした張本人の男、でかまわないだろう、別に? 現に、その汚名は、おれがこの『終末港』で生きていくのに、非常に役立っているしな。『彫刻屋』のガスがやってくるといえば、あのあたりの子供を寝かしつけるときに使われている常套句だとか聞いているぜ」
「だったら、その態度をツァイとの交渉の場でも貫けばよかったのよ。変なことを口走っちゃってさ。あのときのあんたときたら、ほんとに、見苦しいったらなかったわ。まあ、あたしの目的には役に立ったけどね」
「前から気になっていたんだが……」
ガスは椀を抱えて立ち上がった。ナミに向かってあごをしゃくる。
ナミも椀を抱えて立ち上がった。
どうやら、おかわりに向かうらしい。
列の一番後ろに並んだ二人は、先ほどの会話を続けた。
「お前、いったい、なにをしようと企んでいるんだ」
「企む? なにを?」
ナミはとぼけた。
「あたしは、単に、将来性のある勢力に雇われることを決めただけよ」
「嘘だな」
ガスは吐き捨てた。
「お前、絶対、裏でまだなにかあくどいことを考えていやがる。おれの勘に狂いはねえ」
ガスがさらに詰問を続けようとしたとき、人を掻き分けるようにしてアクバが二人の前に現れた。
「ナミ殿、ガス殿は?」
「大丈夫。もう普通に会話ができるわ」
「それはよかった。お食事が済んだら、お召し替えを。わが主がお会いになられます」
- 関連記事
-
- 紅蓮の街 第二部 2-1
- 紅蓮の街 第二部 1-4
- 紅蓮の街 第二部 1-3
スポンサーサイト
もくじ
風渡涼一退魔行

もくじ
はじめにお読みください

もくじ
ゲーマー!(長編小説・連載中)

もくじ
5 死霊術師の瞳(連載中)

もくじ
鋼鉄少女伝説

もくじ
ホームズ・パロディ

もくじ
ミステリ・パロディ

もくじ
昔話シリーズ(掌編)

もくじ
カミラ&ヒース緊急治療院

もくじ
未分類

もくじ
リンク先紹介

もくじ
いただきもの

もくじ
ささげもの

もくじ
その他いろいろ

もくじ
自炊日記(ノンフィクション)

もくじ
SF狂歌

もくじ
ウォーゲーム歴史秘話

もくじ
ノイズ(連作ショートショート)

もくじ
不快(壊れた文章)

もくじ
映画の感想

もくじ
旅路より(掌編シリーズ)

もくじ
エンペドクレスかく語りき

もくじ
家(

もくじ
家(長編ホラー小説・不定期連載)

もくじ
懇願

もくじ
私家版 悪魔の手帖

もくじ
紅恵美と語るおすすめの本

もくじ
TRPG奮戦記

もくじ
焼肉屋ジョニィ

もくじ
睡眠時無呼吸日記

もくじ
ご意見など

もくじ
おすすめ小説

もくじ
X氏の日常

もくじ
読書日記

- ジャンル:[小説・文学]
- テーマ:[自作連載ファンタジー小説]
~ Comment ~
淡々と進んでますな~
「最善の選択は、一見場当たり的と思われるような行動にある」
↑これ、ある意味、ある場合に寄ってはものすごい真実だと思いました。
↑これ、ある意味、ある場合に寄ってはものすごい真実だと思いました。
Re: ネミエルさん
気がついてみたらコメント欄が
だらけになっていたら泣きながらブログ閉めます(^^;)
うーむ。

うーむ。
Re: ぴゆうさん
まだ第二部は始まったばかりでしょ!
エリカちゃんも出てきてないし。
そうぼんぼん新事実を語っていたらこの小説、百枚もたずに終わっちまうでしょうが(笑)
気を長くお持ちください(^^)
エリカちゃんも出てきてないし。
そうぼんぼん新事実を語っていたらこの小説、百枚もたずに終わっちまうでしょうが(笑)
気を長くお持ちください(^^)
~ Trackback ~
卜ラックバックURL
⇒
⇒この記事にトラックバックする(FC2ブログユーザー)
Re: fateさん
警句を作るの大好きなもので……(^^;)