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    「ナイトメアハンター桐野(二次創作長編小説シリーズ)」
    1 ナイトメア・ハンターの掟(完結)

    ナイトメア・ハンターの掟 5-1

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     捜査チームは、現場にいた唯一の証人である息子から、話を聞いた。息子は、手を回しながら、こう答えるだけだった。
    「ぐるぐる。ぼうぼう。ぐるぐる!」
     どうにもしようがなかった。結局、原因を、子供の火遊び、ということに無理やり落ち着け、捜査チームは解散した。
     一九七七年のことである。

    とある元警察官の手記「K町警察署備忘録」より

    ~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~

    第五章 ユニオン・ジャッカー

     ひとり、『虎奇亜』でしこたま飲んでから、家路についた。
     人間、お前は時代遅れの旧式モデルなのだ、という意味のことをいわれたら落胆するものである。特に初対面の人間には。あの大学教授、いいにくいこともはっきりというタイプらしい。生徒を鍛えているからだろうか。
     『レジェンド』か。わたしは低く笑った。どう考えてもその名を冠することができる人間ではない。寝過ごして十二支に間に合わなかった猫の心境である。
     くそ。
     ウォッカでふらつく足で、ゴミ箱を蹴っ飛ばした。ゴミ箱はぼこん、という音を立てて不平を洩らした。へっ、こっちは人間様だ。お前みたいな実存が本質に先立っていない相手に負けるか。
     犬が鳴いている。
     電信柱に手をついた。苦しい。胸がつかえる。
     吐いた。
     胃袋の中のものが全て出てきた。そんな気がした。背筋に寒気が走るような、胃液の味を感じながら、わたしは口を拳でぬぐい、吐瀉物を見た。
     吐瀉物は吐瀉物だった。
     目を背け、のろのろとまた歩みを始めた。
     わたしは、これまで一人で夢魔をなんとかしてきた。自分なりに全力で戦ってきたつもりだ。
     しかし。
     本当に、運が良かっただけなのだろうか。わたしがこれまで関わり合ってきたのはほんの雑魚のようなものだったと。
     酒の力でも借りなければやっていけそうになかった。
     それにしても家が遠い。引っ越したほうがいいかもしれない。
    「医者をやろうか夢魔でも狩ろか、半人前ならハンニバルぅぅ」
     わたしは意味不明で下手糞などどいつをうなった。
     拍手してくれるものは誰もいなかった。

     頭ががんがんして目が覚めた。
     ゆうべは帰るやいなや、ワイシャツのまま眠ってしまったらしい。ひどいありさまだった。このボロアパートにある、コイン式の共同の洗濯機で洗って干さなければならない状況であるが、小銭が惜しいしだいいちめんどくさい。今日は、おととい干したのを着ることにするか。洗濯はもうちょっと洗濯物が溜まってからだ。
     とりとめもないことを考えながら布団を畳む。
     畳んでいると再び胃の奥からいやなものがせり上がってきた。
    「うっ……」
     部屋を飛び出し、共同のトイレへと向かった。汚れがこびりついた大便器に向かって吐く。
     二日酔いもいいところだ。わたしは水を流し、サンポールを含ませた柄つきたわしでごしごしとこすった。
     再び水を流す。便器は少しきれいになった。
     わたしは溜息をついた。
     なにをやってるんだ。
     部屋に鍵をかけていないので、痛む頭を抱えて廊下を戻る。
     引っ越そうか。
     真剣にそう考えた。だが、引っ越す金などどこにもない。大野龍臣に頼んだら、頼みすぎというものだろう。
     部屋にたどりついてみると、電話が鳴っていた。取る。
    「もしもし。桐野です」
    『おれだ。坂元だ』
    「坂元か。なんだよこんな朝早くに」
    『朝早く? もう十時を回っているじゃねえか』
    「わたしにとっては朝早くだ」
    『確かに、金持ちなんて柄じゃなさそうだな』
    「マザーグースの引用なんて気障な真似をすることもないだろう、そっちのほうが柄じゃないや。で、なんの用だ?」
    『今夜、「虎奇亜」だったか、あの店で、飲まねえか? ヒマがあるならだがな』
     飲む話をするには最悪のタイミングだった。わたしは頭が痛いのをこらえていった。
    「その話はしないでくれ。ゆうべ、『虎奇亜』で浴びるほど飲んだばかりなんだ。どこかで飯でも食うんだったら話にも乗るが」
    『それもいいな。そっちだと……「高麗」は知ってるか?』
    「知らない。診療時間が終わったら、拾いに来てくれ。夜の十時になるがかまわないか?」
    『大丈夫だ。あの店は、深夜二時までやってるからな。それじゃ、十時に』
     電話は切れた。
     『高麗』でいくら使うことになるかは知らないが、今日の昼飯と晩飯もカップ麺にしたほうがよさそうだ。
     頭の痛みはじきに治るが、懐が痛むのはどうしようもない。
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    ~ Comment ~

    Re: 有村司さん

    坂元さんは重要人物ですからね。

    これからも活躍してもらわなければならんのであります(^^)

    わ、侘しい…orz

    あれだけの事を言い放たれたら、そりゃ人間としての…いやナイトメアハンターとしての矜持が傷つきますよね…?

    桐野さん頑張れ!!
    坂元さんからの電話が、読んでいて嬉しかったり^^

    >佐槻勇斗さん

    坂元くんは重要人物ですから(^^)
    これからもいろいろと活躍してくれますよ♪

    桐野くんみたいな飲み方をしていると、アル中になってしまうのでよいこはまねしないでください(笑)。

    こんばんは(^ω^)

    桐野先生も辛いですねぇ、、
    あれだけ言われれば飲み過ぎたくなる気持ちもわかりますけど。

    あれあれ。
    今回は坂元さんが関わってくるのでしょうか??
    たのしみですww
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