「紅蓮の街(長編ファンタジー・完結)」
第二部 非情の冬
紅蓮の街 第二部 3-3
「どれだけの数が寝返ったんだ」
ガスのつぶやきに、ナミが声をかぶせた。
「あたしも知りたいわ。公爵閣下、今の戦力の比をお聞かせ願えますか?」
「大ざっぱに計算すると」
エリカは答えた。
「三対二というところです」
ガスは頭の中で計算した。
「四人に一人は裏切ったわけか。人望なかったんだなあの男は」
エリカはかぶりを振った。
「オルロス伯は、無能な人物ではないのは確かです。だが、伯はあまりに苛烈で無慈悲に過ぎました。それがこのような形で現れているのでしょう」
「少なくとも、親よりは数段劣る男であることは確かだ」
ガスは短くいった。
「余禄はさらにあります」
「なんだって?」
ガスは間抜けな声で問い返したが、ナミはわかっていたようだった。
「やったんですね、あれを」
「ナミ、あなたの策に徹底的に乗ることにしたのでね」
「今度はなにを手に入れたんです?」
「小麦です」
「小麦?」
「芋を開放することを材料に、ガレーリョスとイルミールからただ同然で小麦の利権を」
ガスはかぶりを振った。
「なんとも、抜け目がないことですな。エリカ公爵閣下は平和と調和を愛するかただとうかがっておりましたが……」
「これもひとつの調和です」
エリカはこともなげにいった。
「ところで」
エリカは、ナミを見据えた。
「どうかなさいましたか、公爵閣下?」
「ナミ」
十九歳とは思えない強い視線だった。
「あなたは、なにを求めているのです?」
ナミは肩をすくめた。
「金です。金ですよ、公爵閣下。あなたのような人には見慣れているかもしれませんが、あたしみたいなしもじもにとっては、金がなければにっちもさっちも……」
「ナミ」
エリカはしっかりした声でいった。
「あなたは、なにかを隠していますね。ただ単に、金が目当てだったら、それこそまっすぐにヴェルク三世のところに向かうべきだったでしょう。それか、わたしを裏切ってイルミールにつくか」
「申し上げたと思いますけど。あたしは、とにかく、金が欲しいんです」
エリカはナミに笑顔を向けた。
「あなたと付き合うには、こちらも手札を見せねばね。いいでしょう。あなたに大金を稼ぐ機会をあげましょう。アクバ、剣を」

ガスのつぶやきに、ナミが声をかぶせた。
「あたしも知りたいわ。公爵閣下、今の戦力の比をお聞かせ願えますか?」
「大ざっぱに計算すると」
エリカは答えた。
「三対二というところです」
ガスは頭の中で計算した。
「四人に一人は裏切ったわけか。人望なかったんだなあの男は」
エリカはかぶりを振った。
「オルロス伯は、無能な人物ではないのは確かです。だが、伯はあまりに苛烈で無慈悲に過ぎました。それがこのような形で現れているのでしょう」
「少なくとも、親よりは数段劣る男であることは確かだ」
ガスは短くいった。
「余禄はさらにあります」
「なんだって?」
ガスは間抜けな声で問い返したが、ナミはわかっていたようだった。
「やったんですね、あれを」
「ナミ、あなたの策に徹底的に乗ることにしたのでね」
「今度はなにを手に入れたんです?」
「小麦です」
「小麦?」
「芋を開放することを材料に、ガレーリョスとイルミールからただ同然で小麦の利権を」
ガスはかぶりを振った。
「なんとも、抜け目がないことですな。エリカ公爵閣下は平和と調和を愛するかただとうかがっておりましたが……」
「これもひとつの調和です」
エリカはこともなげにいった。
「ところで」
エリカは、ナミを見据えた。
「どうかなさいましたか、公爵閣下?」
「ナミ」
十九歳とは思えない強い視線だった。
「あなたは、なにを求めているのです?」
ナミは肩をすくめた。
「金です。金ですよ、公爵閣下。あなたのような人には見慣れているかもしれませんが、あたしみたいなしもじもにとっては、金がなければにっちもさっちも……」
「ナミ」
エリカはしっかりした声でいった。
「あなたは、なにかを隠していますね。ただ単に、金が目当てだったら、それこそまっすぐにヴェルク三世のところに向かうべきだったでしょう。それか、わたしを裏切ってイルミールにつくか」
「申し上げたと思いますけど。あたしは、とにかく、金が欲しいんです」
エリカはナミに笑顔を向けた。
「あなたと付き合うには、こちらも手札を見せねばね。いいでしょう。あなたに大金を稼ぐ機会をあげましょう。アクバ、剣を」
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いやはや、したたか者のオンパレードだね。
それも楽しいのは頭脳戦。
戦う前から勝者が判っている。戦の王道ではないか。
ナミのいろいろが少しはわかるのかな?
一歩間違えば失脚するエリカはカッコいいねぇ~~
迫力がある。
背中に家を背負っている女は違うね。
親分、完了いたしやした。
けけ
それも楽しいのは頭脳戦。
戦う前から勝者が判っている。戦の王道ではないか。
ナミのいろいろが少しはわかるのかな?
一歩間違えば失脚するエリカはカッコいいねぇ~~
迫力がある。
背中に家を背負っている女は違うね。
親分、完了いたしやした。
けけ
- #2717 ぴゆう
- URL
- 2010.12/06 08:54
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Re: ぴゆうさん
いきなり登場人物が作者のコントロールを外れていろんなことをしゃべり出したので、なかなか「非情の冬」らしい天候の激変に持っていけないのが歯がゆい(^^)
ほんとはきょうの更新で急使が天候の激変の報告を持って部屋に駆け込んでくるはずだったんだけど……。
いかん作者がなにも考えずにその日その日に原稿を書いていることがバレてしまう。新聞小説書いたら確実に輪転機止めるタイプだなわたし(笑)。