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    「紅蓮の街(長編ファンタジー・完結)」
    第二部 非情の冬

    紅蓮の街 第二部 6-2

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    「……御意」

     バルは頭を下げ続け、この時間が過ぎてくれるのだけをただ待った。

    「しかし……評議会か。行かずばなるまい」

     ヴェルク三世は思案深げにいった。

    「しかし、ただ行くだけでは、あまりにもつまらぬ。あの娘の思惑をくじくための知恵がなければな」

     しばらく考えていたが、やがてバルに命じた。

    「トイスを呼べ」

    「はっ」

     バルは、頭を上げる機会ができたことを喜びながら、手を叩いて家人をよびつけた。

    「閣下のご命令だ。トイス殿を……」

    「呼んでいただける頃だろうと思っておりました」

     バルが仰天したことに、トイスはすでに次の間に控えていた。

    「おお、『いかさま賽』。お前とさいころ勝負をやる気にはなれんな。お前ほどの才があれば、わたしの考えなど、全部見通せるのではないかな」

     苦笑しながら、ヴェルク三世は入ってきた痩身の男に声をかけた。

     なにを着てもきざな格好に見える男だった。ヴェルク三世や、サシェル・イルミールや、エリカ・バルテノーズだったら、どんな服を着ようとも、商業貴族として育てられた気品と誇りは隠し得まい。しかし、このトイスという男がいったん与えられた服を身にまとうと、それはたちどころに、めかし屋が金をかけて選んだ服を、芝居がかって着ているように見えるのである。

     特徴としては、得でもあり、損だともいえたが、この男は、それを半ば道化師のそれを思わせるような態度で、魅力へと昇華することに成功していた。

    「伯爵閣下、確かにわたくしめは閣下のお考えが、すべて見通せる気がします。問題は、自分が見通した閣下のお考えに対して、鉄貨一枚すらも賭けるきになれないということで。閣下は時おり、わたくしめのような凡人にはとうてい発想が及ばぬようなことをお考えになられますので……」

     ヴェルク三世は、陰にこもったくすくす笑いをしてトイスの言葉をさえぎった。

    「わざと道化の言葉を用い、わたしを楽しませてくれるには及ばぬ。いついかなる時でも、お前には無礼で自由な人間でいて欲しいからな。いつものとおり、お前にはわたしのまえで『おれ』という言葉を使うのを許そう。さて、『いかさま賽』。わたしの考えを、どう読んだ?」

    「バルテノーズ家のエリカ公爵閣下に、悪役の責任を全て引っかぶってもらうためにはどうすればいいか悩んでいる、というところだとおれには思える、といったら、おれの賭けた金貨百枚はどうなります?」

    「倍にして返そう。さすが『いかさま賽』」



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    ~ Comment ~

    Re: 秋沙さん

    バルくんは、これはこれでヴェルク三世のそばにいないと生きられないような人ですから(^^)

    Mとかそういうことじゃなくて、「強いリーダー」のそばにいて、しかもそれを恐れながらでないと生きていけない人間っていますよね。この人もそういうタイプ。

    トイスくんは……。

    もっとあっさりと書こうと思ったら、意外と興が乗ってしまったタイプであります(^^)

    NoTitle

    やっとここまで読んだぞ・・・遅れてすみませぬ。

    一気に今連載しているところを全て読んでから感想を書こうと思ったのですが、このトイスという男の描写が妙に気に入ってしまって思わずコメント(笑)。

    何を着てもきざに見える・・・ものすごくその姿かたちとか表情と言うか顔つきが思い浮かびました~~~。

    バルくん・・・ここにいるのはかわいそうだな。
    なんか、読んでるこちらも胸がすっとするような、そんな転機が彼におとずれてくれないもんですか?

    Re: limeさん

    気分がスカッとしないときには非道な変態を描くにかぎるぜ(笑)。

    まあそれは冗談としても、いちおうこの小説の敵役というかラスボスは、ヴェルク三世とサシェル・イルミール男爵というところですからねえ。(それだけでもないのだが)

    ラスボスはラスボスとして、悪逆非道をやってくれないとこっちが困るので。

    ちなみにヴェルク三世の行動のモデルは、「蒼天航路」の董卓です。あれをものすごく卑小にしました。

    ちなみに「君主論」でも、「韓非子」他の中国の古典でも、君主の必要条件は「恐れられること」というのが結論みたいです。その点ではヴェルク三世閣下は合格……なのかなあ。

    バルさんは主人にびびりまくっていますから裏切りはまずないですな(といって裏切りがあるのが現実でありわたしの小説でありますが)。

    NoTitle

    トイスは曲者っぽいけど、閣下に気に入られましたね。
    ああ、かわいそうなテネル。
    豚のえさにされるとは。
    ヴェルク三世の非道っプリも、サシェル同様、酷いもんですね。

    バル。・・・寝返っちゃえ!
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