「紅蓮の街(長編ファンタジー・完結)」
第二部 非情の冬
紅蓮の街 第二部 6-3
「そうお褒めいただいちゃ、おれは自分の頭がいいんじゃないかと錯覚しちまう。もちろん、金はもらいますがね」
トイスは腕を組んだ。
「そもそも、あんなテネルみたいなやつの献策なんかを聞くから、こんな状況下に追い込まれちまうんですよ、伯爵閣下。小麦の利権は、というか小麦の現物だけでも、どこでどういう切り札になるかわからないから、握って離さないほうがいいとおれはいったはずですがね」
「それについては謝罪しよう。わたしが愚かだった」
「まったく、ただ同然でくれてやってしまって。いくらあの芋が爆発的に増えるといっても、こんなに早く雪が降ってきて、三日過ぎた今でも降っている、というとんでもない天気じゃ、芋なんか育てることもできるわけがない」
「うむ」
「オルロス伯爵閣下、こうなったら味方が必要ですな」
「味方か」
ヴェルク三世は苦虫を噛み潰したような表情になった。
「お前がいう『味方』とはあの男のことだろう?」
「もちろん、閣下のお考えのとおりです。閣下が別宅に軟禁されている、サシェル・イルミール男爵ですよ」
「あの男には敬意を払え、とお前がいった時には、なにをいっているのかと思ったが……このことあるを見越していたのか?」
「伯爵閣下があの男をお嫌いで、殺したいほど憎んでいることくらいはおれも重々承知してますよ。でも、策には、生贄というか、餌が必要でしてね」
ヴェルク三世はにやりと笑った。
「どうやらさっそく、面白い話を聞かせてくれそうだな」
「閣下のお気に召すかどうかはわかりませんがね」
トイスは、世間話でもするかのように話し始めた。
「まずは、エリカ・バルテノーズの小娘に、やりたいようにやらせることですな」
「やりたいようにやらせる、か」
ヴェルク三世は眉根を寄せた。
「わたしは思うのだが、あの小娘は、この街の食料を一括して管理し、配給制度を取ろうとしているのではないか? それならば、評議会の場で、それに対し攻撃を、甘すぎると攻撃するか、厳しすぎると攻撃するかは別にして、あの娘が口を開いたときに行なうのがもっとも有効なのではないか?」
「それですがね」
トイスは、凄みのある笑みを浮かべた。
「その評議会で反対する人間の役を、サシェル・イルミール男爵閣下にやっていただこう、というのがおれの策の肝でしてね」

トイスは腕を組んだ。
「そもそも、あんなテネルみたいなやつの献策なんかを聞くから、こんな状況下に追い込まれちまうんですよ、伯爵閣下。小麦の利権は、というか小麦の現物だけでも、どこでどういう切り札になるかわからないから、握って離さないほうがいいとおれはいったはずですがね」
「それについては謝罪しよう。わたしが愚かだった」
「まったく、ただ同然でくれてやってしまって。いくらあの芋が爆発的に増えるといっても、こんなに早く雪が降ってきて、三日過ぎた今でも降っている、というとんでもない天気じゃ、芋なんか育てることもできるわけがない」
「うむ」
「オルロス伯爵閣下、こうなったら味方が必要ですな」
「味方か」
ヴェルク三世は苦虫を噛み潰したような表情になった。
「お前がいう『味方』とはあの男のことだろう?」
「もちろん、閣下のお考えのとおりです。閣下が別宅に軟禁されている、サシェル・イルミール男爵ですよ」
「あの男には敬意を払え、とお前がいった時には、なにをいっているのかと思ったが……このことあるを見越していたのか?」
「伯爵閣下があの男をお嫌いで、殺したいほど憎んでいることくらいはおれも重々承知してますよ。でも、策には、生贄というか、餌が必要でしてね」
ヴェルク三世はにやりと笑った。
「どうやらさっそく、面白い話を聞かせてくれそうだな」
「閣下のお気に召すかどうかはわかりませんがね」
トイスは、世間話でもするかのように話し始めた。
「まずは、エリカ・バルテノーズの小娘に、やりたいようにやらせることですな」
「やりたいようにやらせる、か」
ヴェルク三世は眉根を寄せた。
「わたしは思うのだが、あの小娘は、この街の食料を一括して管理し、配給制度を取ろうとしているのではないか? それならば、評議会の場で、それに対し攻撃を、甘すぎると攻撃するか、厳しすぎると攻撃するかは別にして、あの娘が口を開いたときに行なうのがもっとも有効なのではないか?」
「それですがね」
トイスは、凄みのある笑みを浮かべた。
「その評議会で反対する人間の役を、サシェル・イルミール男爵閣下にやっていただこう、というのがおれの策の肝でしてね」
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Re: ぴゆうさん
もうみんな腹が黒いやつばかりで。(^^;)
そんな中でまともなのは、ひとりでもいいから多く生き残ってほしいと願い、こんな自分勝手な市民と難民のやつらに配給制度を敷こうと考えるエリカちゃんとアグリコルス博士くらいですよまったく。
とはいえ、雪の中では普通の作物も育たないし、やたらと頑強な、救荒植物の王様みたいなクワルス芋も一ヶ月で二倍になるかどうか、ですから、これから終末港は地獄みたいな有様になります。そのはずです。
さて、誰から命を奪うか(オイ(^^;;))
そんな中でまともなのは、ひとりでもいいから多く生き残ってほしいと願い、こんな自分勝手な市民と難民のやつらに配給制度を敷こうと考えるエリカちゃんとアグリコルス博士くらいですよまったく。
とはいえ、雪の中では普通の作物も育たないし、やたらと頑強な、救荒植物の王様みたいなクワルス芋も一ヶ月で二倍になるかどうか、ですから、これから終末港は地獄みたいな有様になります。そのはずです。
さて、誰から命を奪うか(オイ(^^;;))
NoTitle
骸骨がそれなりの報いを受けているのは小気味いい。
だけど、悪い奴には悪い奴。
どーしてくれようと思うキャラばかり。
この悪人ばかりでどーなるのかな。
非常の冬は冷酷に訪れているようだし。
策を練るどころか、作物育てろと言いたいね。
だけど、悪い奴には悪い奴。
どーしてくれようと思うキャラばかり。
この悪人ばかりでどーなるのかな。
非常の冬は冷酷に訪れているようだし。
策を練るどころか、作物育てろと言いたいね。
- #2818 ぴゆう
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- 2010.12/21 11:11
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Re: ネミエルさん
指導者のみなさん「ダモクレスの剣」状態ですな。