「紅蓮の街(長編ファンタジー・完結)」
第二部 非情の冬
紅蓮の街 第二部 12-1
12
ガスはナミを伴ってエリカに目通りを願った。
アクバは一礼すると、エリカの部屋へと案内した。
「おれたち、公爵閣下に仕えてからまだ五十日くらいだけど」
ガスは自分でも無能に思える声でこの忠実な家令に聞いた。
「こんなに簡単に公爵閣下に会えていいのかい」
アクバは、なにを当たり前のことを聞いているのか、とでもいいたげな口調で答えた。
「道案内が危険に気づいたらすぐに報告に来るように、というのがわが主のお言葉ですから」
「道案内?」
ナミは、もの問いたげにガスを見た。
ガスは首を振った。
アクバはにこりともせずに二人にいった。
「わが主はガス様に地獄の道への道案内を頼んだとおっしゃっておりました」
「そういえば……」
ガスはしばらく前のやりとりを思い出して、頭をかいた。
「なによ、遠慮することもなかったんじゃないの」
「ナミ様は違います」
ナミの漏らした言葉に、アクバはぴしりといった。
「ナミ様は、ガス様が連れてきたから公爵閣下にお目通りが許されているのです」
「あらら」
ナミは苦笑いをした。
「あたしはおまけなの」
「我が主がおっしゃるには、ナミ様はまだ隠し事をなさっているらしいからそれなりの扱いをすべきだと」
「まあ、かまわないけどね」
「それと」
アクバは立ち止まった。
「なによ」
「武器は隠し持っておらぬでしょうな」
「全部この邸に入るときに預けたわよ」
「それ以外にです」
「なにも」
ガスは両手を広げた。
「身体検査してくれてもいいぜ。どうせ、なあナミ?」
ナミも肩をすくめた。
「あの公爵閣下の前で武器なんか持っていても、なんの得にもならないものね」
「それだけではないのです」
アクバは厳しい目でふたりを検分した。
「このことを聞きつけて目通りを願ったと思ったのですが」
「どのことよ?」
「『敬都』より皇帝陛下の勅使がいらしておられます。ぜひ知恵袋とやらに会いたいと」

ガスはナミを伴ってエリカに目通りを願った。
アクバは一礼すると、エリカの部屋へと案内した。
「おれたち、公爵閣下に仕えてからまだ五十日くらいだけど」
ガスは自分でも無能に思える声でこの忠実な家令に聞いた。
「こんなに簡単に公爵閣下に会えていいのかい」
アクバは、なにを当たり前のことを聞いているのか、とでもいいたげな口調で答えた。
「道案内が危険に気づいたらすぐに報告に来るように、というのがわが主のお言葉ですから」
「道案内?」
ナミは、もの問いたげにガスを見た。
ガスは首を振った。
アクバはにこりともせずに二人にいった。
「わが主はガス様に地獄の道への道案内を頼んだとおっしゃっておりました」
「そういえば……」
ガスはしばらく前のやりとりを思い出して、頭をかいた。
「なによ、遠慮することもなかったんじゃないの」
「ナミ様は違います」
ナミの漏らした言葉に、アクバはぴしりといった。
「ナミ様は、ガス様が連れてきたから公爵閣下にお目通りが許されているのです」
「あらら」
ナミは苦笑いをした。
「あたしはおまけなの」
「我が主がおっしゃるには、ナミ様はまだ隠し事をなさっているらしいからそれなりの扱いをすべきだと」
「まあ、かまわないけどね」
「それと」
アクバは立ち止まった。
「なによ」
「武器は隠し持っておらぬでしょうな」
「全部この邸に入るときに預けたわよ」
「それ以外にです」
「なにも」
ガスは両手を広げた。
「身体検査してくれてもいいぜ。どうせ、なあナミ?」
ナミも肩をすくめた。
「あの公爵閣下の前で武器なんか持っていても、なんの得にもならないものね」
「それだけではないのです」
アクバは厳しい目でふたりを検分した。
「このことを聞きつけて目通りを願ったと思ったのですが」
「どのことよ?」
「『敬都』より皇帝陛下の勅使がいらしておられます。ぜひ知恵袋とやらに会いたいと」
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NoTitle
帝国の敬都から使者が来るとは・・・。
ものすごい勢力なんでしょうね。
シャクシャインみたいにおびき寄せられて殺されるみたいに
ならなければいいのですが・・・
ものすごい勢力なんでしょうね。
シャクシャインみたいにおびき寄せられて殺されるみたいに
ならなければいいのですが・・・
- #3090 ねみ
- URL
- 2011.01/17 23:36
- ▲EntryTop
Re: ぴゆうさん
なにせ物流のほとんどが止まってますからねえ。
租税の持って行きようがない。
すさまじい非常事態です。
とりあえず各地各地でなんとかしろ、ということになりますが、使者くらい送らないと状況がさっぱりわからん、というところです。
この機に乗じて攻めてこようとしている蛮族もいるでしょう。
目立たないのは、今は蛮族も「それどころじゃない」からであります。
春が楽しみですな(笑)。
租税の持って行きようがない。
すさまじい非常事態です。
とりあえず各地各地でなんとかしろ、ということになりますが、使者くらい送らないと状況がさっぱりわからん、というところです。
この機に乗じて攻めてこようとしている蛮族もいるでしょう。
目立たないのは、今は蛮族も「それどころじゃない」からであります。
春が楽しみですな(笑)。
NoTitle
敬都も見過ごせないほどの情勢なのか。
はたまた、暢気に来ただけなのか。
な訳ないか。
どっちにしても海千山千カップルの出番だわな。
はたまた、暢気に来ただけなのか。
な訳ないか。
どっちにしても海千山千カップルの出番だわな。
- #3088 ぴゆう
- URL
- 2011.01/17 16:55
- ▲EntryTop
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Re: ネミエルさん
『大陸』全土がメチャクチャな状態になっていますから。
おびき出して討つなんてのは、そんな馬鹿なことをするにしてもいくらなんでも春を待ってからでしょう。
今回は勅使といっても、「とにかくなんとかできるところは自分でなんとかしろ」ということを正式に伝えに来たもの、及び地方視察だと考えていただければ……。だいいち終末港は自治区みたいなもんですし。
帝国っていっても、単に巨大な中央集権国家であるというだけで、悪の帝国のそれじゃないんですから(笑)。