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    「紅蓮の街(長編ファンタジー・完結)」
    第二部 非情の冬

    紅蓮の街 第二部 12-2

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    「知恵袋だとさ」

    「なった覚えある?」

     ガスはあきらめきった表情になった。

    「あの公爵閣下が、おれたちにその役をやれとの仰せなんだ、やらないわけには行かないだろうよ」

    「てことはなにか気のきいたことをいわないと失格なわけ? 荷が重いわね」

     重厚な扉の前でアクバは立ち止まった。

    「ここにお入りください」

    「あたしも?」

    「そうです」

    「聞いておきたいんだけども」

     ガスはアクバにいった。

    「勅使のかたは、その、体面というか、礼儀作法を重んじられるかたなのか?」

     アクバは首を振った。

    「勅使のかたがそのようなかたなら、わたくしがあなたがたをここまでお通しすることはなかったと思ってください」

    「ま、当然よね」

     根性を据えたのか、ナミがいった。

    「いつでも開けていいわよ」

    「いわれなくても開けます。おい」

     衛兵が、守っていた扉を両開きに大きく開いた。

     アクバがいった。

    「『彫刻屋』のガス様、ナミ様、両名をお連れいたしました」

    「入って」

     エリカの声がした。

     半ばやけくそで部屋に入っていったガスが見たのは、自分の半分くらいの背丈しかない小柄な、いや、小人と見まごうばかりの老人だった。

    「ふたりとも、控えなさい。このかたは、皇帝陛下の勅使であらせられる、ボルール師である。勅使殿?」

    「わしはかまわん。近う寄れ。この皺首、落ちたところで誰も惜しがるものなどおらぬでな。ほっほっほっ」

     ボルール師と呼ばれた勅使の老人は白い顔で笑った。

    「はっ」

     ガスとナミは、緊張した面持ちでエリカのそばに控えた。なにか不手際があったら、今はそうでなくとも、雪が消えた春以降、この終末港になにがあるかわからないからだ。

    「ナミ」

     エリカがいった。

    「街の様子はどう?」

     ナミは物怖じする様子もなく答えた。

    「ひどいものです。各所で、雪の重みで家が潰れる被害が出ています。屋根に登って雪を掻き落とせればいいのですが、配給になってからの、一日にパン四切れの割り当てでは力がとても出ぬということで、積もるに任せている家がかなりの割合に上っています」

    「今日の死者は?」

    「少なめに見積もっても百人は」



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    Re: 秋沙さん

    読んでいるとわからないと思いますが、小説も半分を過ぎ、いかにしてこれから伏線を差し込んでそれを回収するかで頭をかかえています。やっぱり900枚にしとくんだった(爆)。

    このじいさんはもっと前に出てくるはずだったのですが……。

    NoTitle

    一日に100人死ぬほどの事態になってきてますか。

    この小人のじいさん(恐れ多くも皇帝閣下の勅使になんてことを)、なかなか面白そうじゃないですか。
    どんな会話が始まるのか、楽しみです。

    Re: ぴゆうさん

    物資の配給量は、第二次世界大戦のレニングラード攻防戦を参考にしたので少々きつすぎたかもしれません。

    でもそのくらいはしないと「とんでもない事態」だということがわかってもらえないんじゃないかと思って……。

    NoTitle

    益々、切迫してきているよね。
    雪って重いし、溶けないし、すべるし・・・
    氷の中に居るようなものだものね。
    このままだと皆、冷凍干物になるな。
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