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    「紅蓮の街(長編ファンタジー・完結)」
    第二部 非情の冬

    紅蓮の街 第二部 15-2

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    「そうだとも。この街に住んでいる人間は、自分の得になること以外では指一本動かしやしないさ。考えてみろ」

     ガスは手を開き、指を一本折った。

    「ケルナー頭取になんの得がある? たしかにやつは投機屋で、戦乱にでもなったら大儲けができるだろうさ。しかし、それはまた同時に、なにもかも失ってしまう危険性もあるってことだ。この雪さえ収まれば、適当な危険で、適当な収益の上がる事業を再び行なうことができる。なにも、危ない橋を渡る必要もない」

    「わからないわよ」

     ナミは疑りぶかそうにいった。

    「ああいう人間は、金を稼ぐ機会があれば、いつだって……」

    「だからさ」

     ガスは押しかぶせるようにいった。

    「今のケルナー頭取はやらない。失敗の、生きた実例を目にしているからな。サシェル・イルミール男爵だ」

    「そうね」

     ナミはうなずいた。

    「あの男爵の今の状況を見て、博打に打って出るような人間がいたら、それは確かに、馬鹿かなにかね」

    「そして頭取は、馬鹿じゃない。亀みたいに首を引っ込めて、また資産が運用できる時期を待っているさ。なにせ、今は、物流がほとんど麻痺して投資も投機もできないんだからな」

    「バクソス船長は?」

     ガスは指をもう一本折り、首を振った。

    「あのおっさんは、海と河の男だ。なにかするとしても、船が使えない状況では、なにもできない。それに、あのおっさんも、戦乱は望んでいない。海上貿易がつつがなくできたほうが、結論からいえば儲かるからな。海戦は、傍目にはかっこうがいいが、実際やるとなると、船ばかり沈んで損することだらけだ。身にしみて感じたよ」

     ガスの口調に苦々しさが混じった。イルミールの艦隊を率いていたときのことを思い出していたのだ。

    「それで、バクソスも白ということになるのね。それじゃ、ガムロス大司教は?」

     ガスは指をもう一本折ると、低い声で笑った。

    「あの人か。あの人の、公爵閣下に対する態度を見たか。まるで、自分の娘みたいなものだったじゃないか。公爵閣下に『力』が備わっていなくても、あの人は公爵の期待を裏切りはしないよ。だいたい、期待を裏切って、あの人になんの得があるんだ? ケルナー頭取や、バクソス船長には、金銭、という利があるけれど、あの人は坊主だぜ。戦争に訴えなくても、この辺りの住民は皆、大司教の信徒みたいなものだし、変に戦争など起こしたら、平和を掲げる坊主の旗印に傷がつくってもんだ。あの人はやらんよ」



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    ~ Comment ~

    Re: ネミエルさん

    海戦やると敵味方大事な船がぼんぼん沈んで人が次々と死んで国家に多大なダメージが行くのは古代ギリシアから現代までまったく変わっていません。

    というか、自分の船が沈むのをためらっていたら海戦なんかはじめからやらないほうがいいようなもので。

    船がいくら沈もうとも平気な顔でひと月に1隻主力空母を作れるような工業国にケンカを売った某国はそれがわかっていなかったとしか思えませんなあ。とほほほ。

    Re: 鍵コメさん

    ありがとうございます~♪

    参考にさせていただきます♪

    Re: ぴゆうさん

    とにかく、今の段階ではまだ相関図も人物紹介も書けないのであります。

    ゴールにたどりつくまであと何人か出てくるかもしれないので。

    作者、ほんとになにも考えてないことがおわかりかと……(^^;)

    Re: 秋沙さん

    実はここで作者も自分が何を書いたかのおさらいをしているとは誰にも知られてはならぬ禁断の事実だったッ! バーン!(効果音)

    でもまあこの小説、基本的には単純な話なんですけどね。

    NoTitle

    海戦・・・か。
    男の浪漫だと思うのですが・・・。

    やっぱりそれは1940年ぐらいまでいかないと
    無理な話なんでしょうか・・・。
    とほほ・・・。

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    NoTitle

    長編って作者が思うほど、登場人物って皆の頭に残っていないのよねぇ。
    しみじみと思うよ。
    だから相関図とか、地図とかいろいろ描いたなぁ~~
    それでも足らずに「知っとけ」とか書いてるし、
    ファンタジーならではなんだよね。
    相関図は書くといいかも。

    NoTitle

    なるほど。
    これは、書いている人にとっては非常に書きづらい場面なのではありませぬか?
    話を進めようにも、今までのおさらいはしなくちゃならないし、説明的になってしまいそうだから会話で進める。

    読んでるほうは「ふむふむ」と楽しみながら読めますけどね(^^)

    まだ私と旅に出る気分にはなっていませんね?(笑)
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