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    いただきもの

    ミズマ。さん範子文子小説!

     ←ポール・ブリッツスペシャルルールでもう一度いくぞ →ミズマ。さんお返しショートショート!
    昨日の「範子文子」で、直接的にバレンタインの話をやらなかった理由でありますが。

    だから8割ウソなんだってば。のミズマ。さんが、すでに書いてUPしてくださっていたからであります!

    キリ番を踏んだわけでもないのに「なんかください」にここまでしてくださって感激であります!

    ではどうぞ。長めですが一挙どーん。

    ※ ※ ※ ※ ※


     とある下校の風景。

     女子高生が二人、肩を並べて歩いている。

    「うふふ」

    「……?」

    「うふふー」

    「……??」

    「うーふーふー」

    「……どうしたの、文子?」

     範子は隣でにやにやと笑いを堪えきれない友人をやや引き気味で見た。

     どこかのネジが飛んでしまったのかも知れない。こんな文子を見るのは、彼女が初めてラブレターを貰ったとき以来な気がする。

     当然、その手紙の送り主は範子の手によってその日のうちに排除済みである。

    「あのね」

     にこにこと文子。

    「昨日作ったチョコレートが上手にできたの」

    「それは良かったわね」

    「うん」

     ……。

     にこにこしている文子に脊椎反射的に返事をし、機械的に下校の足を進める。その間に内容をよく吟味した範子は、

    「がばり!」

     と、文子に向き直った。

    「チョ、チョ、チョチョチョ、チョコレート?」

     思わず吃ってしまう。

    「そう。美味しく作れたの。生チョコでしょ、ブラウニーでしょ、フォンダンショコラも!」

     にこにこにこにこ、と文子。

     文子の笑顔。天使のような笑顔。むしろ天使だ。いつもなら範子の大好物の笑顔なのだが、今はそれが重苦しい圧力となって範子の心に圧し掛かる。

     そう、そうだった。

     二月じゃない、今は!

     範子は笑顔の文子に引きつった笑顔を返しながらも、内心で大いに頭を抱え、苦悩していた。

     本編が受験突入でシリアスモードでピリッとしてたからスルーしていたけど、そういえば二月じゃない、今! 二月といえば乙女のメインイベントじゃない! 甘い甘いイベントがあるんじゃない! それを忘れてたなんて、私の馬鹿ッ! 馬鹿馬鹿ぁッ!

     ……いや、でも、ちょっと待って。

     範子は自分を落ち着かせる。

     ただチョコレートのお菓子を作ったってだけじゃない。上手に美味しく出来たから喜んでいるだけかも知れないじゃない。

     すーはー、と深呼吸。

     私ったら早とちり。

     それを誰かにあげるなんて一言も……。

    「すごい美味しくできたから、喜んでくれるといいなぁ。受け取ってくれるといいなぁ」

     わーーーーーッ!?

     範子の手から、どさりと鞄が落ちる。

     嘘だ嘘だ嘘だーッ!

     範子の顔から、ざざっと血の気が引く。

     文子と出合ったときから、範子は文子の周囲から余計なものを排除するように努めてきた。それこそ宇奈月財閥の総力をあげて文子の周囲に害虫を寄せ付けないようにしていた。

     だというのに、どうして文子は私の隣で楽しげに頬を染めているというの……ッ!?

     こんなの嘘よ! 夢か幻よッ!

     範子の胸中も知らず、文子はにこにこと言う。

    「バレンタインが楽しみだわ」

    「……わかったわ、文子」

    「? 範ちゃん?」

     ようやく親友の様子がおかしいのに気付いた文子。足を止め、範子を見る。

     青ざめた顔には、なんとも壮絶な笑みが張り付いていた。

    「え、えと……」

    「宇奈月財閥の、全勢力を傾けるわ、文子」

    「あの……」

    「私の持てる全ての力で、害虫は駆除するからね」

     うふふふふ、と地獄から響くような声音で笑う範子。

     文子は思う。

     こんなに壊れた範ちゃん見るのって、私がラブレター貰ったとき以来な気がするなぁ。

     あれは結局イタズラだったみたいだけど。

    「じゃあ、私、ちょっとやることあるから……」

     壮絶な笑みのまま、範子は帰り道に消えてしまう。

     それを見送る文子は首を傾げる。

    「冬なのに……虫?」




     そしてバレンタイン当日。

     文子の想い人を突き止めるべく(そして排除するべく)、スパイ映画もかくやという情報収集を行っていた範子。精根尽き果てへとへとになっても、文子の想い人は見つけられなかった。そもそも、そんな悪い虫が現れたのなら、宇奈月財閥のセンサー(文子専用悪い虫センサー)に引っかからないわけがないのだ。

     ぐったりと項垂れる範子。こうなったら、文子がチョコを渡す瞬間に相手を確保するしかない。

     悪い虫が文子に接触する寸前に……ちょっと手荒なことになるかも知れないわね。

     うふふ、と笑みを浮かべる範子。

     壮絶な顔をした彼女の手にはアサルトライフル、のようなものが握られていた。銃刀法のある日本で、そのような重火器が(一応)一般市民の女子高生である範子の手にあるわけがない。範子が引き連れる宇奈月財閥特殊工作チームの面々も、同じような重火器のようなものを持っているが(以下略)。

     文子がチョコレートを渡そうとした瞬間、その相手を排除するように特殊工作チームには厳命してある。

     うふふ、と凄絶な笑顔を浮かべる範子。

     ちょっと、手荒なことになるかも知れないわね。

     脳裏に地獄絵図を浮かべる範子。

     だがその当の本人である文子が宇奈月家の玄関先に現れたことで状況は一変する。

     今まさに出動しようとしていた特殊工作チームは、予想外の彼女の訪問にも慌てなかった。宇奈月家の玄関をあらゆる方位から狙えるように、姿を隠して放射状に散っている。

     アサルトライフルをスリングで背中に回し(そしてさりげなく文子からは死角になるように隠しながら)彼女を迎える範子。

    「ど、どうしたの、文子。今日はバレンタインじゃない。チョコレート、作ったんでしょう? 渡しにいかなくていいの?」

    「うん。だから」

     そう言った文子は赤いリボンをかけた包みを範子へと差し出した。

    「はい、これ」

    「え?」

    「今日、バレンタインだものね」

    「……え?」

    「範ちゃんのためだけに、たくさん作ったの」

    「もしかして、前に言ってたチョコレート渡す相手って、……私?」

     範子が問うと、文子ははにかんで頷いた。

    「範ちゃんがいつも食べてるのより、美味しくないかも知れないけど、でも心だけはこめたからね。いつも側にいてくれて、ありがとね!」

     これだけ言われて受け取らないのは女がすたるというもの。

     だが、範子はだらだらと脂汗をかく。

     宇奈月財閥特殊工作チームが、銃口をこちらに向けているのもひしひしと感じていた。

     例えその攻撃対象が範子であろうと、彼らが一度与えられた使命を果たさないなどということはない。

     彼らは、やり遂げるだろう。

     文子のチョコレートを受け取る、害虫の排除を。

    「範ちゃん?」

     そんな範子の様子を訝しく見、首を傾げる文子。そんな仕種も可愛らしい。

     範子は決意する。

    「ありがとう、文子!」

     がしり、と文子の両手ごと包みを受け取り、そして彼女ごと身を翻す。

     途端に、紙一重の差で銃弾が通り過ぎていく。(注・銃刀法のある日本でそのような(以下略))

    「代わりに、文子は私が守るね!」

    「え、ええ?」

     そうして、宇奈月財閥跡取り娘である宇奈月範子と、宇奈月財閥が抱える特殊工作チームとの間で、血で血を洗う抗争の火蓋が切って落とされたのであった……。

    「え、えええぇッ!?」


                血と硝煙のバレンタイン  了

    ※ ※ ※ ※ ※

    なんと後日譚つき。

    ※ ※ ※ ※ ※


     宇奈月家の玄関先では、ギャング映画も真っ青な銃撃戦が繰り広げられていた。

    「え、えーと、範ちゃん?」

    「なに? ったく、装甲硬いわ、ねッ!」

     ズガガガ、とアサルトライフルを巧みに操る親友に、文子はおずおずと話しかける。

    「一体、どういうことなの?」

    「えッ!? え、えーと、うーんと、そ、そう! サバゲーよ! サバイバルゲーム! ちょっと最近凝っててね!」

    「そう、なの?」

    「そうなのッ!」

     二人が身を隠した宇奈月家の門に無数の銃弾が突き刺さる。なんだか高そうな石は細かい破片を撒き散らして削れていった。

     銃弾の隙をついて範子は身を乗り出し、ダダン、ダダンと短く発砲。

     それは宇奈月家の屋根の上からこちらに照準を付けていた工作員に命中し、彼(彼女?)は無残にも屋根の上から転がり落ちる。

     だが範子にそれを見届ける余裕はない。短くも正確な発砲をするとすぐさま盾代わりの門へと隠れなければまずい。

    「バレンタインに空しくサバゲーやってたのよ。チョコレートをもらった人が標的になるってルールで」

     嘘だが、まるきり嘘でもない。

     範子は門へ銃弾が撃ち込まれる音を聴きながら空になったマガジンを交換した。

     完全武装をしていて本当に良かった、とコッキングレバーを引きながら範子はしみじみと思う。基本はいつもの制服だが、その上からタクティカルベストを着、腰にはポーチを巻いている。ポーチの中には手榴弾……に似ているもの。当然銃刀法のある日本では(以下略)。

     だが代えのマガジンはあと三本。予備武装としてハンドガンも持っているが、そのマガジンは二本。

     特殊工作チームは、さっき一人倒したからあと残りが……十人以上はいるだろうか。

     絶対的に火力が足りない。

     武装の中にはナイフもあるが、アサルトライフル相手にナイフ一本で勝てるような相手ではない。

     こうなればこちらの火力が尽きる前に、倒した相手の武装を奪うなりしなければならないのだが、当然向こうは範子がそう動くのを予想しているだろう。

     状況を打開するには、別の方法を考えるしかない。

    「じゃあ、私が範ちゃんにチョコあげたから、こんなことになっちゃったのね」

    「え!? あ、ううん! 違うの、文子が悪いわけじゃないから!」

     この状況をどう打開しようか頭を捻っていた範子は、文子が決意とともに立ち上がるのを止め切れなかった。

    「ちょ、危ないから!」

     だが文子はすたすたと玄関先に(つまり特殊工作チームの銃口の前に)身を晒す。

     慌てる範子。だが文子は大きく息を吸って、言った。

    「みなさんの分のチョコレートもありますから! もらって下さい! 範ちゃんをいじめないで下さい!」

     泣きそうな顔の文子。

     この天使の泣き顔の前で、降伏しないものなどいはしなかった。



     こうして、第一次宇奈月家玄関前戦役は終結したのであった。

    「結局、文子が一番強いのね」

    「ん? なにか言った、範ちゃん」

    「このフォンダンショコラがすごい美味しいなぁって言ったのよ」

    「ほんと!?」

    「ほんと」

    「嬉しい」

    「……嬉しいのはこっちよ」

    ※ ※ ※ ※ ※

    ありがとうございました!



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    ~ Comment ~

    Re: ミズマ。さん

    ミズマ。さんのブログでのわたし、いつも毒舌が過ぎましたか?(^^;)

    だとしたらすみません(^^;)

    ミズマ。さんの小説、面白いですよ。BLは苦手だけど(^^)

    NoTitle

    あ、嬉しい。
    というか、照れますねぇ(*´∀`*)
    誉められなれていないもので~。

    ではでは、いまからいただきものをじっくり読みます。じっくり!

    Re: ミズマ。さん

    そりゃ載せますって(^^)

    面白い小説じゃないですか(^^)

    もっと自分に自信を持ってくださいよ~(^^)

    NoTitle

    う、本当に載ってますね…。思わず本文すっとばしてコメント欄に直行しております。チキンなので本文なぞ直視できません…。

    ポールさま、ならびに全国の範子・文子ファンのみなさまに楽しんでいただけていれば幸いであります。
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