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    「紅蓮の街(長編ファンタジー・完結)」
    第三部 殺戮の春

    紅蓮の街 第三部 11-3

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    「新天地とやらを本気で信じているんだな」

     ガスには世迷言にしか聞こえなかった。

    「それで、お前の目指しているのは、植民というわけか」

    「植民なんてものじゃないわよ」

    「なに?」

     ナミは、自信にみなぎった声で宣言した。

    「国を作るのよ」

    「国だと?」

     ここまで来ると、ガスにはなにをどういったらいいかすらよくわからなくなっていた。全てが、ガスの理解を超えている、少なくとも拒んでいるように思えるのだ。

    「そう。あたしの国。あたしの帝国。もちろんあたしの帝位は一代だけで、その後はこいつらに譲るけど、それまでは、あたしの国よ。親からも、周囲の人間からも、『帝国』からも見放され、自分の知恵と剣と身体だけを頼りにして生きてきたこのあたしが、唯一信じられる、あたしの帝国……。その帝国を築くためには、人間を鍛えるほかにも、山のような軍資金がいるのよ。八十万枚の金貨でも足りないくらいのね」

    「夢物語だ」

    「たとえ夢であってもいい、スワルヴェ族の人間たちもそういうでしょうね。たとえ束の間の夢であっても……」

     ナミは、窓を開けた。

    「ゲイロ、もらうべきものはもらったわ。鳩を放しなさい」

     マントの男は、うなずくと、鳥かごの覆いを取った。

     ナミの言葉どおり、中に入っていた一羽の黒鳩が、羽ばたくと飛び出していった。

    「これで終末港の平穏は保たれることになったわ。賢明な判断をありがとう」

     ナミは、そういうと、扉を指差した。

    「さあ、アクバにガス、あなたたちふたりで、あたしとゲイロを先導して。なにも知らないバルテノーズ家の家臣たちを、無闇に殺したりしたくはないものね」

     アクバとガスは、無念さに歯軋りしながらも、扉を開けた。

    「ゲイロ、窓を開けて入ってらっしゃい」

     マントの男は、ナミがしたように窓を開けると、部屋に入ってきた。

    「鳥かごは置いておくわ。公爵閣下、人生に嫌気がさしたら、鳥でも飼ってみてはいかがかしら?」

     エリカはこわばった口調で答えた。

    「もしも、わたしが飼った鳥が、ナミ、あなたみたいなことを考えていたら、わたしは鳥になんといえばいいのです」

     ナミはちょっと虚を突かれたようだったが、やがて笑い出した。

    「自分の力で、なんとかそこを抜け出しなさい、というのがいいんじゃないかしら? じゃ、あたしたちはおいとまするわね。エリカ・バルテノーズ公爵閣下、閣下とはもう会うこともないでしょう」



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    ~ Comment ~

    Re: ネミエルさん

    『帝国』とかそれに類する君主制のシステムは、古代から中世、いや近世にかけても、広大な領土をもつ国家を運営するためのもっとも合理的なシステムであります。
    「必要あって」の話ですから、いちがいに悪ともいえんのですよ。

    その構成員の八割くらいが満足して生活している巨大な世界帝国に、一人の人間がケンカを売るのは、はっきりいって無茶で無謀です。力をためるためには、どこかその手の及ばないところに逃げたほうが賢明であります。

    問題は、その「どこか」が本当に存在するのかどうか、でありますが……(^^;)

    Re: ミズマ。さん

    「帝国」についてなにも語られないのは、作者が何も考えてなかったから……げふんげふん。

    基本的に、「悪の帝国」みたいな存在じゃなくて、「ローマ帝国」とか「中華帝国」みたいな、一種の世界帝国だと思っていただければ。たしかに腐敗堕落している面はありますが、全体的に見ると整備された官僚機構を持った、優秀な国家であります。

    それくらいしか決めてない(^^;)

    まあ、そんな巨大勢力に正面からケンカを売るのは、堅い岩壁に生卵をぶつけるも同然だからなあ。スワルヴェ族も敢闘はしてもぼろぼろだし……。もっと『帝国』が腐敗堕落してガタガタになったら、ナミも一旗上げようとするんでしょうけど。

    NoTitle

    帝国・・・。
    やっぱり悪いイメージしかないなぁ・・・。

    国を作るには力たくわえて
    軍事力で直接領土を切り取るといいのでは?

    ナミ嬢、かわいい!←

    それにしても、「帝国」ってのはどんな国家なんでしょうか。話にちょこちょこ出てきますけれど、情報らしい情報は読み取れませんよねぇ。
    よっぽどの悪政をしいているのかと思いましたけど、そうだったらエリカちゃんがなにかしらの行動を起こしていそうな気がします。
    帝国についても追々語られるのでしょうか。

    ちょっと意外だったのが、ナミ嬢が「帝国から脱出!」を選んだことですね。
    彼女なら、「帝国に反抗!もしくは乗っ取り!」の方が似合う気がします。
    脱出を選ばざるを得ないほどの過去が、ナミ嬢にはあるのでしょうか……あるんですよねッ!?

    Re: limeさん

    こういう設定にしよう、と決めて書き進んでから「李歐」を読んで真っ青になったりもしたのですが(^^;)

    どうなるかは今後の展開をお待ちください。

    なんたって小説が終わるまでにはまだ5章以上あるもので……(^^;)

    NoTitle

    幻の島を見つけて、王国をつくる。
    でっかいロマンです~~ヽ(´∀`)ノ .:。+゜
    金さえあれば、ナミならやってしまいそうですね。
    どんな王国になるんでしょう~~。

    ああ、今、ふと李歐の作った王国が頭をよぎり、キュンe-266

    さて、求めるその島は、あるんでしょうか!
    (って訊いてもダメですよね^^)

    Re: ぴゆうさん

    認められる、られない以前に、この世界では、「存在していない」土地ですから。

    不満分子もなにも、「一般的な『帝国』の人間」にとっては、「ないところにどうやって行くんだ」みたいな思いでしょう。

    大航海時代はるか以前のローマ帝国に住んでいる人間に、「アメリカ大陸行かないか」というようなものであります。(^^;)

    はたしてほんとにそんな大陸あるのかどうかすら、作者は……ふっ(遠い目をする(笑))。

    Re: LandMさん

    とはいえ、スポンサーはたいへんなわけで……リターンはまず返って来ないし。

    いかにエリカちゃんが金と権力を持っていたとしても、単なる地方貴族にはカネをぽんと出すのは難しいのであります。ナミは踏み倒す気まんまんだもんなあ(笑)。

    NoTitle

    スカッとする。
    ナミの夢が叶いますように。
    いいと思うなぁ、帝国にしても脅威になるまでいくかわからないけど、
    不満分子の収容場所にもなりうる。

    新天地の王国か。
    確かにすごいや。
    でも認められるのかな。
    吉里吉里人を思い出した。

    NoTitle

    新天地といおうか、新大陸と言おうか・・そういうところですね。ある意味、マゼランやバスコ・ダ・ガマのようなものですね。新天地の夢を馳せるというのは良いものだと思います。それがどのような欲望に沿ったものであれ、欲望があるからこそ冒険をするのだと思いますし。
    どうも、LandMでした。
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