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    「紅蓮の街(長編ファンタジー・完結)」
    第三部 殺戮の春

    紅蓮の街 第三部 12-3

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     ゲイロは舟を小型艇……もとはイルミール家のものだったものを、飢饉前にいささかの金貨で買ったものだったが……に横付けした。

     これまで、ナミが隠れていたのも、この小型艇の中だった。歯を食いしばるような冷気さえ我慢すれば、この小型艇は隠れるのに絶好の存在だった。

     自分の明日食べる食物すらわからない状況において、浜辺にある無数の小型艇の場所がちょっとばかり動いたところで、誰が気にするというのであろうか?

     後はそこから夜陰に乗じて小舟を出し、挺身隊を派遣して食料をかき集め、さらに移動すればよい。

     自分たちがその間なにを食っていたのかについては、ゲイロは考えないことにしていた。もとより、敵である『帝国』の臣民の命など、呪いはしても尊重はしないのだ。残された死体は、道にでも放っておけば、死骸に群がる鳥のように、ガレーリョス家やそれに忠節を誓う連中が片付けてくれるのだから、処理に無駄な手をわずらわすこともない。

     無論、手持ちの食料を奪うだけではとうてい集団の生命を維持していくわけにはいかないので、そこは、ナミ様のいう『柔軟な発想』が求められたが。

     小型艇から縄梯子とロープが下ろされ、ナミとゲイロは、慣れた手で縄梯子を登り、小型艇の男たちはロープで小舟を引っ張り上げた。

     ナミは男たちにひとつうなずいた。

     ナミがここに集めた男たちには、得がたい資質があった。生まれながらの素質と訓練で、夜目がきくのだ。

    「教えられたことはわかっているわね」

     ナミの言葉に、男たちは無言でいることで答えた。

     ナミは満足げにいった。

    「漕ぎかた始め」

     舟は滑り出した。

     このくらいの小型艇だったら、まだ訓練も簡単なほうだ、と、ナミ様は語っていたが、この大洋を航海する大型船ともなったら、どれだけの人間と訓練が必要なものなのか、ゲイロには想像もつかない。

     しかも、女子供に食糧までも積んでの航海だから、どれだけの費用や船やその他もろもろがかかるのかすらわからなかった。

     いや。

     今のところ、ナミ様のその場の冷静な状況判断と、果断な行動に過ちはない。

     そうである以上、われわれは、どこまでもナミ様についていくのが最良のことなのだ。余計なことを考えていては、成功するものも失敗してしまう。ゲイロは、櫂を漕ぎながら、頭の中で、戦士たちの歌う戦歌を歌うことで、不安を追い払おうとした。

     そんなゲイロたちを見ながら、ナミはよりいっそうの満足げな顔をしていた。



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    ~ Comment ~

    Re: ネミエルさん

    まめにバックアップはとっておくべきだということですね……。

    早く復旧しないものかな。

    FC2、メインの会社が外国にあるらしく、どうもかゆいところに手が届かない、ということが多いですよねえ。

    「紅蓮の街」は今月中に終わりそうです。その前にバックアップか。

    NoTitle

    思いっきり抱きついたはいいが
    ナミさんに思いっきり右から殴られて
    その次に蒼に大きく左から殴られました。

    な、なんでーっ!?

    FC2の障害情報ブログによれば
    まだ作業をしているらしいのですが・・・。

    ポールさんにがんばって追いつこうとブログ村に登録して
    ようやく13位という座に駆け上ったのにぃ。
    その矢先にこれですよ、コレ。

    もう泣きそうです。

    Re: ネミエルさん

    うわー、それはつらい……。

    どうも入れないと思ったら、そんなことが。

    とりあえずバックアップはとって……ありませんよねその言葉じゃ……。

    ご愁傷様です……。

    とりあえず貸しますので今はこのナミの胸で泣いてください。

    わたしもバックアップをとっとくか……。

    NoTitle

    うえぇん、ポールさぁん。
    聞いてくださいよ。
    FC2ブログのサーバーチェンジとかで
    この二日間管理画面に入れないんですよぉ。

    なんかよーやく終わったかと思ったら
    今までの記事全部消えてるし……。
    うぅぅ……。

    Re: limeさん

    ナミは本来ならかかわりあいになるべきではない、えらい人とかかわりをもってしまったんですよ……。

    とりあえず明日をお楽しみに。

    さーて、これから謎解きも本番だぞ(^^)


    「神の火」入手おめでとうございます。

    出世作のひとつなのでけっこう版は出ましたが、熱烈なファンが抱え込んでいるので、今買えたのはラッキーかもしれません。

    わたしはもうお亡くなりになった、梶龍雄先生という乱歩賞作家の本を古本屋で探していますが、名作と呼ばれるような高いやつにはバカ高い値段がついていて、どうしてあのとき知っていなかったんだわたし、と思うことおびただしいであります。入手困難になる以前の、今の段階で琴線にひびく作家と巡り会えたlimeさんがうらやましいであります。

    Re: ネミエルさん

    そのジョーク(というかジンクス)は聞いたことがあります。

    まあ船が怒ろうと海が怒ろうと船に女性を乗せなくては植民なんてできないわけで。

    でもたしかに女の船乗りは少ないですな。男装で暴れた女海賊アン・ボニーなんて豪傑もいましたけど。

    NoTitle

    ねみさんのコメに笑ってしまいました^^

    でもやっぱり、冒険に出る船に女は似合わない気がしますね。
    男はすべての俗欲を振り棄てて・・・。

    あ、でも、大将がナミだもん(^.^;)
    そんなこと関係ないですね。
    ナミは準備が整い次第、航海に出ちゃうんでしょうか。
    それともまだ、終末港での仕事が??


    来ましたよ~~~~~~!
    『神の火』1991年!!!!
    赤い表紙です~~~゜(´□`。)°
    嬉しすぎる・・・・。
    この本を手放す人がいるんですねえ。ふふ、おバカさん。
    『レディ・ジョーカー』はちょっとお預けで、しばらくこれを読みます。
    「別物だ」という意見が多いんですが、どうなんでしょう。
    あの良が暴れるって、想像できなくてドキドキ・・・・。

    でも、高村先生は初版本が気に入らなくて改訂したんだと思うと、ちょっと複雑ですが。

    NoTitle

    船に女を乗せると船が怒るそうですよ。
    船が女の子ですからねぇ……・・・・・・・・・(´д`;)

    なぜ女の子かってそりゃ
    男が乗るもんだからですよ。

    えぇ、二つの意味で。

    Re: ぴゆうさん

    >カニバリ

    なんとかそれを避けるように考えてはみたのですが、エリカちゃんの食糧配給から切り離されていたナミが、体力を維持してあの冬を生き延びる方法を考えたら、ナミの性格からしてああするだろう、と考えざるを得ませんでした。

    ちょっとそこらへんは、わたしもラストシーンをアバウトに決めた後はその場その場で考えて書いていたので、改作することがあればそのときになにか妙案をひねり出したいと思います。

    失礼をいたしました(^^;)

    NoTitle

    ナミの思いの強さが自信となり、ゲイロ達を安心させる。
    トップがオタオタしている今の日本と比べてしまうよ。
    大海に漕ぎだすナミ達に幸あれと祈ってしまう。

    しかしカニバリは頂けないこと。
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