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    「範子と文子の驚異の高校生活(ギャグ掌編小説シリーズ・完結)」
    範子と文子の三十分的日常(ギャグ掌編小説・完結)

    範子と文子の三十分的日常/四月・始業式

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     その日、今年も学校が始まるのか、かったるいな、などと思いつつ3-Aの教室に入ってきた駒子は、思わぬ事態にわが目を疑った。

     範子と文子のふたりが、両者とも自分の机に突っ伏していたのである。

     ふたりの口からはなにかエクトプラズムのようなものが出ているかのごとき錯覚を駒子は覚えた。

    「ちょ、ちょっと、下川さん、宇奈月さん!」

     駒子がふたりの机に駆け寄ったところ、うつろな目をした文子が、のろのろと身を起こした。

    「どうしたのよ、文子!」

     文子は自分の制服の襟元をめくった。そこに、なにかマイクのようなものがつけられているのに駒子は気づいた。

     呆然としている駒子の前で、文子はノートの上にシャープペンシルでなにかを書いた。

    【聞かれているので、筆談でおねがい】

     駒子は文子からシャープペンシルを受け取って、文子が書いた下に書きつけた。

    【聞かれているって、誰に?】

    【わたしと範ちゃんを教えてくれている大上先生。正確にはそのコンピュータ】

     それだけで、駒子にはぴんときた。

    【そういえば、こないだのパーティーのときも、英語しか使ってなかったね】

    【そういうことだよ。コンピュータが、わたしのしゃべった声を分析し、その波長だかなんだかよくわからないけど、そこから日本語をしゃべっているか英語をしゃべっているか判断を下すみたい】

    【そうか……文子、だいたいわかるよ。あの先生にいじめられているんじゃないの? 日本語を使ったら、ご飯抜きだとか】

     文子は首を振った。

    【そんなことないよ。あの先生、家庭教師としての本業のかたわら、プロの家政婦としても訓練を積んでいるから、毎日フランス仕込みのものすごくおいしい食事を作ってくれるよ。わたしと範ちゃんも、お手伝いをして、スープの取りかたとか、いろんなことを教わったよ】

    【英語で?】

    【英語で】

     そのころになると、出席してきた生徒たちが、二人の席の前に人だかりを作っていた。文子が海外留学を希望しており、そのために範子の家に宿を借りてひたすら勉強しているらしい、ということはかっこうのうわさ話の対象だったからだ。

    【じゃあ、勉強がきついとか】

    【勉強はめちゃくちゃきついよ。こないだは、英語で、即興の寸劇、ロールプレイっていうやつかなあ、それをやらされたし、英会話と英作文はそれこそみっちり。国語や社会の宿題ですら、解答を書いた後で、それを英語に訳させられたりしたもの。外国人の前に出ても物怖じしない度胸だけはついたけど】

     周りを取り囲んでいる駒子たちは首をひねった。

    【じゃあなんで、そんなに疲れた顔をしてるわけ?】

     文子はそれに答えて書いた。

    【わたしがこってりしたラーメンとかスープとかが好きなことは知っているでしょう?】

    【知ってるよ】

    【で、大上先生の料理はフランス仕込みで、とてもおいしいのよ】

    【うん】

    【フランスといえば、バターやクリームだよね】

    【うん】

    【先生は、うっかり日本語を使ったりすると、罰として、わたしたちの食べる食事の量を多くするんだよ】

    【え……】

     取り囲んだ女子生徒たちが、ざわざわっとした。

    【そして、おいしいから、多くされたぶん食べてしまうんだよ。それも毎日のように】

    【ってことは……】

     文子は頭を抱えた。

    【オーバーカロリーってやつだよ。健康管理とかいって、毎日体重計に乗るのも義務だから……わたしの体重と体脂肪は……】

     声にならないうめきが、女子生徒の間から漏れた。

    【とにかく、制服に身体を入れるためには、毎朝、暗いうちからきつい運動をして、筋肉をつけて、体重を落とさなきゃ……このままではまんまるでぶでぶの北京ダックかフォアグラのアヒルになっちゃうよお!】

     駒子たちはなんといったらいいかわからなかった。

    【じゃ……どうして、範子のほうまで倒れているの? 財閥の娘だから、英語はぺらぺらのはずでしょう?】

     文子は暗く笑った。

    【範ちゃんは、わたしと同じメニューを、フランス語でやっているんだよ。ある意味わたしよりきついと思うよ。で、大上先生の家には、まだひとつかふたつベッドが空いているそうだけど……誰かいっしょに勉強する?】

     手を挙げる女子生徒は誰もいなかった。
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    ~ Comment ~

    Re: LandMさん

    ふたりが海外に飛び出せるかもしれないのは、早くても来年三月以降ですよ。

    海外は新学期が9月ですから、卒業後も半年は日本でうろうろしているかもしれません。

    それまで文子ちゃんは、高三の受験生としてひたすら勉強の毎日です。有利な奨学金の試験は厳しいのです(^^;)

    Re: semicolon?さん

    平安時代とか中世ヨーロッパにでも戻らない限り無理でしょうなあ。

    そういやあ、前に見たモンティ・パイソンの映画で、中世の生活をもとにしたギャグを作っていましたが、その中で主人公の目に「絶世の美女」として映るのが、今の目ではどうしようもないデブだというギャグがあって大笑いしたことがあります。

    Re: ネミエルさん

    表向きの体重と、実際の体重とがあったりしますから難しいですよね。

    かといって女性に聞くわけにもいかんし。

    前に、病的なくらいにがりがりにやせこけた女性に、知人が「もうちょっと体重をつけたらどうか」と意見したところ、泣かれてしまったのを見たことがあります。本人曰く「もっとやせたいのに」

    それ以来、女性と話すときにはどんな人とも「やせよう」という方面で話をすることにしております。わたしもやせんとなあ。ズボンが……。

    NoTitle

    海外留学は続いているんですね。
    ある意味特訓と言えば特訓ですね。こういうやり方も。あまり女性にとっては喜ばしくない罰ではあるでしょうね。。。。
    どうも、LandMでした。

    NoTitle

    もうすぐ薄着の季節ですからねー。
    女姓には酷なお仕置きですね。
    丸い女性がもてはやされるの日は来るのでしょうか?!

    NoTitle

    なかなかヘビーな・・・。

    時に思うのですが女子の体重を決めるときって
    なかなかに難しいですよね。

    うちの蒼さんは14歳にして
    身長147センチ
    体重37キロ

    なんですがコレは軽すぎたかなぁと
    ちょっと悩んでいるんです

    Re: 蘭さん

    3月までの段階では、あのふたりはまだ高校二年生ですよ(^^)

    三年生の三学期で進路相談とかしていたら遅すぎますって(^^;)

    今月から、ふたりとも晴れて高校三年生です。

    海外留学のために、今年いっぱいは悪魔のような特訓メニューで勉強してもらいます、ふっふっふっ。

    範子と文子にも、もちろんクラスメートはおりますよ。

    「三十分一本勝負」のころにも、範子がクラスメートを総動員して学校の弁当に「冷しゃぶ」を持ってこようとする話がありましたしね。

    駒子ちゃんをはじめとするクラスメートたちは、ほとんどそのときに名前が出ています(^^) その後もちらっちらっと名前だけは出てきました。

    「三十分的日常」九月・お月見の回でいちおう顔出しはしましたけれど、印象に残っていなかったのは残念です。

    この学友たちも、それなりにバカです(笑)。

    Re: ミズマ。さん

    とにかくふたりとも若い娘ですからね(^^)

    たまにはギャグを混ぜないと。

    ……それともホラーだった?(笑)

    おはようございます。

    文子と範子のお話、久しぶりに読ませていただいたんですが・・・・・

    クラスメートがいたってトコにビックリです(笑)。

    文子と範子が、どこに行き着きたいのか・・・?です、今の処^^;

    留学の話はどうなったの??
    てか、卒業ではなかったんですか??

    まぁ・・・応援して帰りますi-228

    あ、朝から怖い話を聞いてしまった……。
    確かに、ご飯抜きよりもそっちの方がペナルティとして効果がありそうですね^^;

    夏前にはふたりがボディビルダー顔負けの肉体に……それも怖いなぁ。
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