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    ささげもの

    12345ヒット:ねみさんに捧ぐ

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     お待たせしました。12345ヒット記念のお笑いショートショートです。急いで書いたから構成もなにもなくなってしまった(汗)。

     元ネタがわかったかたは古いSFファンです。あなたも古いSFファンの知識に挑戦しよう(しなくていいっ)。

     それではどーん。

     ※ ※ ※ ※ ※



    蒼い流星


    「副長。時空間レーダーが特異点を発見した」

     ネメシエルのコンピュータがそう告げたとき、空月・N・蒼はあまりいい気分ではなかった。

     艦内の『殺菌』装置をいくつも通すことで、ようやくコクピットに持ち込めた、最近人気の少女漫画家、栗川みんと先生の最新刊を乱暴にひざの上に伏せると、目をレリエルシステムに同調させた。せっかく並んで買った、恋愛ファンタジー短編集のいいところなのに。

    「どうせ、この世界で、特異点なんていったら、だいたいなんなのか想像がつくわよ」

    「いや、それが奇妙なのだ、副長。人間ふたり程度の大きさなのに、かなりの過大な量の『ゆらぎ』のエネルギー反応がある」

    「だから、それは、たいていの場合、美鶴か波音……」

     苛立ったように目標点に飛ばした偵察プルーブからの目視映像を解析装置にかけた蒼は、いいかけたことばを飲み込んだ。

    「なんてこと……!」



    "範ちゃん、ここどこだろう"

    "わたしもわかんないわよ。少なくとも、うちの学校がある町じゃなさそうね"

     紅恵高校で三年生になったばかりのふたりの平凡な女子生徒、宇奈月範子と下川文子は、自分たちにわからない言葉を話している人々から身を隠すようにしていた。

    "どうしてこんなことになっちゃったんだろう。たしか、わたしたち、合格祈願のお守りを買いに来たんだよね"

    "そう。店が、路地裏のわっかりにくところにあったのよね。そこを迷っているうちに……"

    "お守りは買えたけど"

    "いいこと、文子、そのお守りはなにがあっても離しちゃだめよ。うちのデータバンクでは、最も信頼できる、その手のお守りや呪術用具の店なんだから"

     文子は、買った、人の形をした怪しげな金属細工をぎゅっと握り締めた。



    「間違いないです。艦長、あれは、確かに、この世界の外から来た人間です。名前は、宇奈月範子と下川文子」

     蒼は、額に汗を浮かべながら報告した。

    「排除できないか?」

     蒼は首を振った。

    「排除のためにこちらが接触を試みただけで、不安定な『ゆらぎ』のエネルギーが、限界を超えて爆発するおそれがあります。ふたりがいるのは、帝国郡アゲナスタン自治州の州都ソガーナのど真ん中です。もし、爆発したら、人口百八十七万人の都市が軽く吹っ飛んで、その三十倍の大きさのクレーターが開くでしょう。もっとも控えめな計算ですが」

     機械だけあってコンピュータは冷静だった。

    「自治州政府に連絡、退避命令を出す。ふたりが気づく可能性は?」

    「それは大丈夫だと思います。あの都市では九十九パーセント、アゲナスタン語しか使用されていません」

    「とにかく被害を最小に食い止める必要がある」

     蒼は、「いやな予感」を感じた。



    "どうしよう。なにか、たいへんなことがおこっているみたいだよ。みんな悲鳴を上げて、街の外へ向かっているよ"

    "言葉がわかれば、なんとかしようがあるけれど……とにかく、地図がありそうなところにまで歩きましょう"

    「範子ちゃん、文子ちゃん?」

    "日本語だよ、範ちゃん!"

     ふたりは振り向いた。

     そこに立っていたのは、ネメシエルの搭載艇で急遽送られてきた蒼その人だった。

    "あ、蒼ちゃん……どうしたの?"

     蒼は全身を絶縁スーツで覆っていたのだった。



    『ふたりと接触しました』

     蒼は思念でネメシエルのコンピュータと連絡を取った。

    『よし。サーチシステムは入っているな?』

    『はい。ふたりにも高度のエネルギーが蓄積されていますが、その九十五パーセント以上は、その手に持っているなにかの金属製品に蓄えられているようです』

    『よろしい。事態はこういうことだろうと思われる……。このふたりは、その金属製品が持つ、時空を歪ませるなにかわれわれの知らない作用により、こちらの世界へやってきた。その移動の過程で、時空を超えるのに必要な大量のエネルギーが、ふたりとその金属製品に蓄積されたものと思われる。それで、副長、君の任務は、その金属製品を時空エネルギー的に遮蔽して、ふたりにもとの世界に帰ってもらうことにある。シミュレーションでは、おおもととなるエネルギー集積物から遮蔽し、ふたりをあるべき世界にいるようにできれば、かなりの短時間で「ゆらぎ」のエネルギーは正常に戻るという結果が出ている』

     蒼は手に持った、高レベルエネルギー遮蔽カプセルを見て、わからないようにそっとため息をついた。

    『通信波がエネルギーを励起する可能性があるので、通信を遮断する。副長、成功を祈る。以上』



    「範子ちゃん、文子ちゃん、元気?」

     範子は肩をすくめた。

    "ごめん、いま、ちょっとわけあって、英語しか使えないんだ"

     英語か。蒼は頭を抱えそうになった。えーと……。

    "ところで、文子ちゃん、その手に抱えているもの、なに?"

    "え? 合格祈願のお守りだよ。それよりも、ここ、どこ?"

     蒼はきりきりと胃が痛くなるのを感じた。それを説明したら、うーん……。

     悩んだ末、蒼はとにかく無駄かもしれない、と思ったが、やってみることにした。

    "文子ちゃん、あたし、うちの政府の試験受けるんだけど、自信がないんだ。そのお守り、もらえないかなあ? お返しはするから……"

     範子は文子の手を押さえた。

    "だめよ、文子、せっかく最上等の、一個しかないお守りを買ったんだもの、受験のためには、とても譲れないわよ。それに、蒼ちゃん、頭はすごくいいって話だし、お守りなんかなくても、合格間違いなしじゃないの?"

     範子めよけいなことを。

    "でも、わたし、自信がないのよ。お願い、お願いだから、そのお守りを、わたしにちょうだい!"

    "必死みたいだよ、範ちゃん。きっと、すごく難しい試験があるんだよ"

    "でも、このお守りをあげてしまったら、代わりはないのよ、文子"

     どうするかどうするか。

    "この世界にないお守りだから、価値があるのよ、文子ちゃん。お願い! かわりに、こっちの世界の、お守りをあげるから!"

    "蒼ちゃんの話にも一理あるよ、範ちゃん。もしかしたら、もっと効くかもしれないよ"

     蒼は通信を入れた。

    『艦長。なんでもいいですから、この世界にしかない、と思えるものを、至急わたしのもとへ送ってください。大至急です』



     蒼は、文子が差し出した金属細工をおっかなびっくり受け取ると、カプセルに収め、圧縮スイッチを押した。

    "じゃ、あなたたちを、元の世界へ帰すための宇宙艇を用意するから"

    "宇宙艇?"

     範子は目を丸くした。蒼は心の中で範子と文子に千回詫びた。帰る際に万一の事故があった場合、この地上で爆発されるよりは、大気圏外で爆発されたほうがまだまし、というネメシエルのコンピュータの判断だ、とはとてもいえなかった。

    "サービスよ、サービス。お守りも、そこで渡すわ。さあ、ついてきて!"

     爆発しないように細心の注意を払って蒼は、ふたりを宇宙艇と、その曳航艇のもとへ案内した。運動公園に二つの艇はもう用意されていた。

    "そっちの曳航艇のほうに乗ってくれる? わたしがこちらの艇で引っ張るから。危ないから、あまり中では暴れないでね"

    "うん。あっ、中に箱がある"

    "中身は、内緒よ。無事に自分の世界に帰ってから見てね。それじゃ、いくわよ"

     ふたつの艇は、重力を無視するかのようにふわりと飛び立った。



     ネメシエルの主砲が、蒼たちの乗る宇宙艇にぴたりと狙いを定めた。

    『時空歪曲波投射砲、発射』

     局所的に時空を捻じ曲げ、空間を裂いてしまうこの砲が撃たれたことすら、範子と文子は気がつかなかった。



     蒼は、時空の裂け目を通ってやってきた、自分の世界とは違う宇宙で、曳航艇を切り離した。後は、人工知能システムが、宇奈月邸に下ろしてくれるだろう。

     メッセージボックスを開く。

    「ごくろう、副長。最後の指令だ。残念ながら、その遮蔽カプセルは十時間程度の遮蔽能力しかない……」

     蒼はぎょっとしてカプセルを見た。

    「大至急、宇宙のなにもない場所を目指して光速に近い速度で撃ち出せ。ウラシマ効果で、ある程度の時間的余裕ができる……」

     蒼は大急ぎで艇の後部のミサイルポッドの弾頭に詰めると、大急ぎで撃ち出した。その際に何らかのスイッチが入ったらしく、宇宙艇は蒼の思ってもいないコースを取り始めた……。



     範子と文子が宇奈月邸に戻ってきたときには、陽は暮れかけている、というところだった。

    "あっ、空を見て、文子。蒼い流星が飛んでいるわ"

    "わあ、ほんとだね、範ちゃん"

    "で、あの子がくれたお守りって、なんなの?"

    "今開けてみるよ……なんだ、漫画だよ"

    "だましたのねあの子"

    "間違えただけだと思うよ、範ちゃん"

     その瞬間、範子の耳に、どこからともなく、『こんな任務もういやああああああああ』という声が聞こえてきたような気がした。

    "なにかいった、文子?"

    "ううん、範ちゃん。なにもいってないよ"

     文子は漫画のページを繰っていた。

    "聞いたことのない人だけど、この漫画、面白いよ、範ちゃん"



     三ヶ月後、地球より数光月離れたところで、ごく小さいながらも、超新星のそれを思わせる、謎の爆発が起きたことを地球各国の天文台がとらえた。

     それは奇しくも、人気ゆえに入手困難になっていた栗川みんと先生の単行本を、蒼が本屋で自腹で買いなおしたときと同じ日だったという……。


     ※ ※ ※ ※ ※

     急いで書いたのでむちゃくちゃ疲れた。マラソンというより、全力ダッシュを何回もやった気分。

     これでやせればいいのにな。原稿執筆ダイエット(笑)

     皆さん応援ありがとうございました。今度は20000ヒットをお待ちください。それとも15000ヒットにしようかな。
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    ~ Comment ~

    Re: 蘭さん

    範子と文子の登場は、ねみさんのリクエストですから。

    ほんとうはコウさんのリクエストお題「オーロラ」も話に組み込むつもりで話を書いていたのですが、付け加えると蛇足になってしまうので泣く泣く切りました。無念。

    おはようございます。

    元ネタはわかりませんが、結構面白かったですよ。
    即興で作ったとは思えません。

    てか、やっぱり範子と文子が出て来た所には笑えました。

    Re: ネミエルさん

    A・E・ヴァン・ヴォクトの「イシャーの武器店」。

    わたしのこんな短編を読んでいるよりはるかに面白い作品です。

    たしかこないだ再刊されたと思ったので、本屋かアマゾンにレッツゴーだ。(^^)


    それはそれとして、書き漏らしがあったので改訂しておきました。持って行くならこっちのバージョンを……。

    NoTitle

    うぉぉっ!
    は、はやすぎますよ、ポールさんっ!
    な、なんてスピードでかきあげるんだ、この方はっ!
    あ、ありがとうございました!
    そして、このSFの元ネタを教えてくださいッ(おい
    それ見てもう一回見直します。

    知らなくてもなにかしらなかなかのカオスを感じたので
    ふぉぉっ、と勝手になんかすごい困惑しています。
    時空の歪み・・・もうパラレルに行くには必須のものですよね。

    そして自治区とかの名前のセンス!
    まるで俺が考えたかのような感覚がっ!
    ひしひしと・・・着ました。
    ありがとうございました!

    ぜひお持ち帰りさせていただきたく存じます。
    &お返しは何がよろしいでしょうか?
    何かリクエストがあったら・・・それどうりにいたします。

    え?
    蒼さんVSこの二人?

    決着つくわけないじゃないですか(笑)
    なんだかんだでこのお二人無敵なんですからw
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