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    「紅蓮の街(長編ファンタジー・完結)」
    紅蓮の街覚え書き

    紅蓮の街完結記念打ち上げパーティー

     ←紅蓮の街 あとがき →蛋白石の宝冠
    文子「こんにちは。下川文子です。今日は、範ちゃんとふたりで、『紅蓮の街』完結記念の、打ち上げパーティーに来ちゃいました。小説の内容に触れるので、未読のかたは、本編を読了なさってからお読みください」

    範子「宇奈月範子です。『紅蓮の街』だけ読んでいる人は、だまされたと思って、わたしたちの活躍する『範子と文子の三十分一本勝負』もぜひお読みください」

    文子「宣伝してないで、行くよ、範ちゃん。えーと、あの、もしもし?」

    サシェル・イルミール「……(憑かれたように大皿に盛られたイカスミリゾットを食っている)……」

    範子「この小説に出演するに当たって、なにか演ずるのに苦労された点とか……」

    サシェル「……(憑かれたようにイカスミリゾットを食っている)……」

    文子「あの……」

    サシェル「……(憑かれたようにイカスミリゾットを食っている)……」

    範子「これは……あれね」

    文子「(困惑して)あれ?」

    範子「役作りのため、減量していたのを取り戻そうとしてるのよ、たぶん。あの身体じゃ相当つらかっただろうと思うけど」

    文子「ふうん……ロバート・デ・ニーロみたいだね、範ちゃん」

    範子「他の人のところ行きましょ」

    文子「あ、あそこにいるのは『刻み岩』さんとヴェルク三世じゃないかなあ? すみませーん、インタビューですけど!」

    ヴェルク三世「(とろんとした目を向けて)飲むか?」

    文子「え、わたし、高校生ですし、アルコールは」

    刻み岩「そっちの姉ちゃんも、つきあえよ。ほら、ラムくらい、いいだろ?」

    範子「い、いえ、よくないです、まったくよくないです」

    ヴェルク三世「ちぇっ、つきあいが悪いんだからまったく。主役以上に目立てるって聞いたから出演オーケーしてみたら、まさかあんな狂人役だったとは」

    範子「でも……目立ってましたよ」

    ヴェルク三世「(カクテルをあおって)だけど、諸悪の根源みたいないわれかたしてたもんなあ。悪いのはヴァリアーナだというのに。おい、マスター、ラムコークおかわり!」

    バクソス「はい、ただいまお作りします」

    文子「あっ、バクソス船長!」

    範子「タキシードが決まってますね。カッコいい!」

    バクソス「そういってもらえると嬉しいですね。これでも本職は、バーテンダーなんですから」

    文子「意外ですね!」

    バクソス「本来は、わたしももっと、バルテノーズ家のご意見番として活躍するはずだったんですけどね。はい、ヴェルクさん、ラムコークです」

    範子「活躍が見たかったです」

    バクソス「おせじでもそういっていただけるとうれしいですね。お嬢さんがたにもノンアルコールのカクテルを作ってあげましょう。わたしのオリジナルですが、ライムとオレンジとレモンを絞ってからガムシロップを加えたものです。その加減が難しい……はいどうぞ」

    文子「わー! ありがとうございます!」

    範子「爽やかでおいしいですね!」

    バクソス「そういやさっき、アグリコルス博士が探してましたよ。愚痴を聞いてほしいらしいですね」

    アグリコルス「誰が愚痴じゃ」

    文子「わっ、びっくり!」

    アグリコルス「この作者ときたら、学者を出すといえばわしを出したがる悪癖がある。魔法使いとか賢者とかもな。わしももうちょっと演技の幅を広げたいのじゃが。ガムロスのやつがうらやましいわい」

    文子「そういえば、ガムロスさんは?」

    アグリコルス「ついさっきまで、端役の、イルミール家の女中をやっていた娘の尻を追いかけていたが。ほら、毒薬を飲まされて死ぬ役の。まったく、ああいう性格の持ち主は得じゃな」

    範子「あの人、目が見えるんですか!」

    アグリコルス「目が見えないのは小説の中だけじゃよ。わしだってこう見えても……いたたた神経痛が」

    文子「しっかりしてください。休憩はあちらでできますから。じゃ、ガムロスさんはどうする?」

    範子「女子高生としては、近づかないほうが賢明みたいね。あそこで飲んでいる三人にいってみましょうか」

    ゴグ「呼んだか?」

    ツァイ「やあ、お嬢ちゃん」

    トイス「やってるねえ。若いのに酒か」

    文子「いえ、これは、バクソスさんが作ってくださったノンアルコールカクテルです。そういえば、ツァイさんたち、ガレーリョス家の戦士は、それほど見せ場がなかったですね」

    ゴグ「最初に渡されたシナリオ草稿では、おれたちは激しい剣戟の末に全員倒れるはずだったんだがなあ。そのために身体も作ったんだけども」

    ツァイ「本稿は、この作者が、少しずつ書いていたから、おれたちの見せ場はだいぶ修正されちまった。ちょっと、おれもゴグもトイスも不本意だったな」

    トイス「だいたい、こういう話を六百枚でする、ということ自体がどうか、だったんだ。九百枚だったら、もっと剣戟シーンが増えたんじゃないかと思うぜ」

    ゴグ「いや、さっきから三人でそのことを話していたんだが、おれは、九百枚になったらなったで、陰謀シーンと密談シーンばかり増えて、結局おれたちの活躍はないままだったんじゃないかと思うんだが」

    ツァイ「それについてだが……」

    文子「うわー、また議論が始まっちゃったよ。逃げたほうがいいみたい。ゴグさん、ツァイさん、トイスさん、ありがとうございました。次は誰にする、範ちゃん?」

    範子「あそこに座って、本を読んでいる人にしましょう。どこかで見たことある顔だけど……すみません」

    アクバ「なにかな?」

    文子「アクバさんですか! 眼鏡なんてかけていたので気がつきませんでした。なにを読んでらっしゃるんです?」

    アクバ「安部公房」

    範子「渋っ! いや、通なご趣味ですね」

    アクバ「いや、面白いんだよ、『第四間氷期』」

    文子「SFファンなんですか?」

    アクバ「SFだけじゃないけどね」

    ボルール「アクバ、この前貸してくれた本は面白かったぞい。続きも貸してくれんかな」

    文子「あっ、ボルールさん」

    範子「なにを借りたんですか?」

    ボルール「埴谷雄高の『死霊』」

    範子「これまた渋っ! あんな本を読んでいると、頭がおかゆになってしまいませんか?」

    ボルール「わしは面白いと思ったが……」

    女「あなた、テリーヌ取って来てあげたわよ」

    文子「どこかで見たような……」

    範子「サシェルに針を刺されていた人だ!」

    アクバ「家内です」

    文子「手……だいじょうぶですか?」

    アクバ「あれはCGによる特殊効果」

    範子「はあ」

    女「わたしはほんとうに刺してもいいっていったんだけど、サシェルさんがCGにこだわって」

    文子「役作りにかける情熱といい、もしかしてあの人いい人なの?」

    ボルール「少なくとも女の尻を追いかけないだけガムロスよりはましじゃな」

    範子「へええ。意外ですね。ところで、ヴァリアーナ夫人は?」

    アクバ「あっちでケルナーと談笑してる人がそうだよ。女優としてのキャリアでは、この世界ではトップじゃないかなあ」

    文子「ありがとうございます。ヴァリアーナさあん」

    ヴァリアーナ「あら、かわいい子。どこかでお会いしたかしら?」

    ケルナー「インタビュアーですよ」

    範子「あの、ぶしつけですみませんが、役作りのうえで苦労したところとかありますか?」

    ヴァリアーナ「悪の威厳を出しながら、中盤まではヴェルクの後ろで地味に控えているのは難しかったわね。出すぎてもいけないし、引っ込みすぎてもだめだから、気を遣ったわ」

    文子「ははあ、なるほど……」

    ヴァリアーナ「次に出るときは、女神とか女政治家とかをやってみたいわね。いいこと、かっこよく美しく齢をとることは、難しいけれどできないことじゃないわ」

    範子「ありがとうございます」

    ケルナー「おれには?」

    ヴァリアーナ「あなたなんにもしなかったじゃない。こんなやつより、娘とガスとナミをインタビューすることね」

    文子「娘?」

    ケルナー「エリカだよ」

    範子「そういえばどこか似てる……」

    ヴァリアーナ「あの娘は前にも『虚栄のルビー』で『紅の女王』をやっていたわね。あのときは実年齢よりも老けたメイクがたいへんだったそうだから。今回はちょっと若作りしてたけど」

    文子「あのう……」

    ヴァリアーナ「なにかしら?」

    文子「お時間があったらメイク教えてください」

    範子「あるわけないでしょっ! 行くわよ文子!」

    文子「でも、あの人たち、どこにいるの?」

    範子「あそこでかたまっている三人みたいだけど」

    文子「でも、あそこ、デザートのコーナーだよ。ケーキやババロアがいっぱい並んでるけど……うわ、ほんとだ」

    範子「えーと……ガスさんですか? インタビューに……」

    ガス「(アイスクリームのスプーンを口に突っ込みながら)ふぁんだひ?(なんだい?)」

    文子「甘党……なんですか?」

    ガス「失敬な!」

    範子「わわっ、す、すみません」

    ナミ「こいつは甘いのも辛いのもしょっぱいのも苦いのもなんでも食べるのよ。あたしもそうだけどね」

    文子「ははあ、それで、その身体を……」

    ガス「偏食は健康の大敵だぞ」

    範子「説得力ありますね」

    ナミ「エリカのほうはただの甘いもの好きだけどね」

    エリカ「貴族の家の当主ということで出るのをオーケーしたのに、食べるシーンと来たら麦粥ばかり……ダイエットにはなったけど。終わったんだから甘いものでも食べなくちゃ」

    文子「そこにあるグラスとタンブラーはなんですか?」

    ナミ「エリカはアレキサンダー。あの甘いカクテルよ。あたしは百パーセントのオレンジジュース。ガスはバーボン。バーボン飲みながらアイスやケーキを食べるなんて、どう贔屓目に見ても糖尿病一直線ね」

    ガス「(ビターチョコレートをばりばり噛みながら)人のこといえた義理じゃないだろお前も」

    文子「えー……あの……ガスさんの彫っておられた木彫りは……」

    ガス「おれの趣味だよ。印象的だってんで作者が採用したんだ」

    範子「ナミさんの……その……ご趣味は?」

    ナミ「もってまわったいいかたしなくていいから。女を恋人にする趣味はないわよ」

    範子「エリカさんは?」

    エリカ「常識的に考えて、そういう趣味の人を探すほうが難しいんじゃないのかしら。それをわかっていてわたしたちにああいうシーンやらせるんだから、この作者もひどいやつよね。そう思わない?」

    範子「え……はあ。まったくです。とほほ」

    文子「ガスさんは大活躍でしたね」

    ガス「おれの演技の賜物だぜ」

    ナミ「シナリオの都合上だったって、作者がいってたでしょ、あの抜擢は。まあ、この人ががんばってくれたからあたしは楽だったけど」

    ガス「だよなあ」

    文子「出演中にロマンスとかはなかったんですか?」

    ナミ「普通に考えたら、そんなことしている暇はないわね。一部の例外を除いてだけど」

    範子「例外?」

    ナミ「この男、メアにコナかけたのよ」

    ガス「おい……」

    文子「うわーっ、それは聞きたいですね。それで、メアさんは?」

    ガス「…………」

    エリカ「さっき、ゲイロさんに送られてタクシーで帰るのを見ました」

    ナミ「ふられてやんのこいつ」

    ガス「……(無言のままで苺ムースをがつがつと食う)」

    文子「じゃ、ナミさんとエリカさんは?」

    ガス「……(無言のままで苺ムースをがつがつと食う)」

    範子「もしかして、ふたりしてそれをネタにガスさんをいびっていたとか?」

    ガス「……(無言のままで苺ムースをがつがつと食う)」

    文子「し、失礼しました」

    エリカ「気にしなくていいですよ」

    ナミ「あたしたちはあたしたちで楽しくやってるから。ねっ、ガス!」

    ガス「バーボンおかわり取って来る……」

    文子「いいんですかあれで。ショックがひどかったみたいですよ」

    ナミ「ここで待ってりゃ戻って来るわよ」

    範子「なぜわかるんですか?」

    男「ラムレーズンアイスクリームお待たせしました」

    エリカ「ご苦労さま」

    文子「えーと、あなたは? どこかで見た顔ですけど」

    男「あの小説にはエキストラで出てました。今日はここのバイトも兼ねてまして。食事は、余ったのをちょこちょこといただいています」

    ナミ「さっきの話に戻るけど、あの男がいつまでもラムレーズンの誘惑に耐え切れると思う?」

    エリカ「どう考えても無理ですよね、ナミ」

    範子「おふたりともやっぱり息も気も合うんですね……」

    文子「範ちゃん、いけないよ、もう時間だよ、帰らないとまずいよ」

    範子「ああ、エリカさん、ナミさん、その他のみなさん、お答えくださってありがとうございました。それでは、パーティーをお楽しみください」

    ナミ「じゃあねえ~」


    ……………………


    ツザ「で、誰も、ぼくをインタビューしてくれる人はおろか、言及してくれる人もいないの? どうして? どうして? いちおう重要な登場人物だし、それなりにセリフもあったのに。いいんだ。ぼくなんか。ぼくなんか……(ジンをあおる)」

    バル「お前だけじゃないぞ。助演は、つらいな……(テキーラをあおる)」



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    Re: 椿さん

    凄惨な話を半年200回もやったので、バカな話が書きたくて書きたくて(笑)

    この話の登場人物、みんなノリがいいのう(笑)

    NoTitle

    映画みたい。こんな打ち上げ会も楽しいですね(^o^)

    Re: ねみさん

    次回って……「外伝」を書けってことですか?(^^;)

    あの世界でのナミやエリカちゃんの死は確定事項で動かないからなあ。

    ナミやエリカは、「別な配役」でどこかで出てくるかもしれません。別の作品かどこかで……。

    NoTitle

    なんだみんな生きてた。
    よかった。
    本当によかったです。
    ナミ、エリカさん。

    生きてた。
    次回の彼女達の奮闘に期待いたします。

    Re: limeさん

    小説が過酷すぎましたからね。

    全て終わった以上は、みんなでバカ話をやって盛り上がってもらいたいと思いまして(^^)

    そのくらいのことをしてもバチは当たらないかと。

    サシェル・イルミールをやるには減量たいへんだったろうな、とか、ガスって意外と私生活ではもてないんじゃないか、とか、いろいろ遊びながら書きました(^^)

    エリカちゃんとナミは、「気の合う女友達」以上の存在ではないでしょうね、プライベートでは。

    「男」はただのエキストラです。群集シーンとかに出ています(笑)。ヒッチコック的顔見せではありません(^^;)

    NoTitle

    なんか、面白いことしてるじゃないですかあ~。
    映画じゃなく、小説の完成披露パーティに登場人物。
    なんて2次元なんだ~。

    ガス、・・・けっこうやさぐれてかわいそうですね。
    小説の中ではあんなにカッコよかったのに~。
    反面、悪役達はけっこう、楽しそうにやってるじゃないですか。

    それにしても、登場人物多いですね^^
    最期の二人は・・・いや、覚えてますよ~~汗

    そうか、エリカちゃんも、ナミも、役作りかあ。
    まあ、そうでしょうね。
    なかなか百合は・・・難しいですよね。探すのは。
    (探さなくてもいいんだけど)

    あの・・・「男」って、あれですか?ヒッチコック的な?
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