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    ささげもの

    ミズマ。さんお返しショートショート!

     ←ぴゆうさんお返し落語! →矢端想さんイラスト!!
     ミズマ。さんのブログ「だから8割ウソなんだってば。」で、わたしのサーブに対してフォアハンドのものすごいレシーブを返してこられたミズマ。さんに対して、これではゲームが決まってしまう、とこちらもバックハンドでさらに球を打ち返してみました。

     半分意地みたいなもんです。つきあわされるミズマ。さんには気の毒ですが(笑)。

     では以下どーん。



    ※ ※ ※ ※ ※



    選ばれなかったものの英雄譚


    「……それが、わたしの知ることのすべてです」

     聖なる巫女、ヴィエラはそう少年に語った。

    「巫女様の話は、ぼくには難しくてよくわかりませんけれど」

     少年は居心地悪そうに肩を揺すった。

    「つまり、こういうことですか。勇者バルカは魔王を封印しようとして失敗した。勇者ローグは魔王を討滅しようとして失敗した……」

    「正確には違います、フィロン」

     ヴィエラは少年の思い込みを修正した。

    「バルカは一時的な封印に成功し、束の間の……百年を束の間というならばですが、その間のこの世の平和を保った。ローグは魔王と戦い、熾烈な勝負の末手傷を負わせ、百五十年の間にもわたってこの世の平和を守りました」

    「巫女様はおいくつになるのですか」

     少年は頭がくらくらしてくるのを覚えた。目の前にいる気品ある女性は、にこやかにほほえんだ。

    「女性は、三十からは歳を取らないものと相場が決まっています」

    「す、すみません」

     頭をかいた少年を見て、巫女は面白そうに笑った。

    「わたしは神から恩寵を与えられ、百八十年を生きています。しかし、わたしも、あと少ししたら、天上の神のもとへ召されるでしょう」

    「はあ……」

     フィロンはなぜ自分がこうして聖なる巫女の前に呼び出されたのかまったく見当がつかなかった。

    「あの、勇者たちがこの世を救った話と、そのおりに巫女様が実際に見た話は聞きましたが、それがいったい、ぼくと……」

    「ここにあなたを呼んだ理由はひとつです」

    「へ?」

    「あなたに、旅をしてほしいのです」

     フィロンはますます混乱するのを覚えた。旅? ぼくが……?

    「巫女様のお言葉ですから、旅をしろといわれたらしますが、いったいなんのために」

     巫女は少し眉をひそめた。

    「これまでの話で、わかっていると思ったのですがね」

    「これまでの……」

     フィロンは、ヴィエラがなにをいわんとしているのかを理解した。

     理解したとたん飛び上がった。

    「ま、まさか、巫女様、巫女様は、ぼくに、魔王を討つために旅立てと……!」

    「誰も討てとはいっていません」

    「そうですよね」

    「魔王を見てきてもらいたいのです」

     こともなげに巫女はいった。フィロンは、さっと顔から血が引いていくのを覚えた。

    「あの、巫女さま、ぼく、剣はできませんけれど」

    「知っています」

    「魔法も使えませんけど」

    「もちろん知っています」

    「聖なる力も使えませんし、壁登りとか錠開けとか、いかがわしいことに使うような技術もありませんけれど」

    「知っています。誰もあなたに、そういったことを求めてはいません」

    「もしかしたら……」

     フィロンは、少年らしい一抹の期待を持って尋ねた。

    「ぼくは実は、光の剣に選ばれた勇者とか……」

    「あなたはあの剣とはなんの縁もゆかりもありません」

     フィロンは、少年らしくがっかりした。がっかりした後で、巫女にまくしたてた。

    「じゃあ、ぼくになにをしろっていうんですか。ぼくはただの、人よりちょっと本や詩について知っていて、人から話を聞くことが好きなだけの、なんの役にも立たない司書見習いですが」

     フィロンは頭がぐるぐるしてくるのを覚えた。

    「フィロン、これまでわたしが語ってきた人々は皆、人には持っていない力を持っていた人たちでした。光の剣に選ばれた勇者バルカ、ローグはもちろん、夜の聖女ベベ、そしてわたし、黄金の巫女ヴィエラ。だがしかし、勇者バルカは愛妻ベベや子孫を愛するがゆえに魔王を封じるのみにとどまり、わたしヴィエラは自分の力を過信するがあまり魔王復活の危機を招き、勇者ローグはよき導き手にめぐり合わなかったため、すさんだ心の持ち主となって魔王に無謀な戦いを挑んで相打ちとなって果てました。しかし、重い傷を負ったものの魔王はまだ生きており、今、あやつがどこで傷を癒しているかは誰も知りません」

     フィロンは呆然と巫女の語りを聞いていた。

    「そして、これについて考え抜いた末、わたしは悟ったのです。『このような方法では、人間は魔王をどうすることもできない』と」

    「そ、そんな」

     フィロンは悲鳴のような声を上げた。

    「じゃあ、ぼくたち人間はどうしろというんですか」

    「それをあなたに見つけてきてほしいのです」

    「え?」

     巫女は真剣なまなざしでフィロンを見つめた。

    「わたしは、この事実に気づいた後で、自分の驕りを捨て、一心に神に祈り、啓示を待ちました。三十三日の祈りの末、啓示は訪れました。『曇りなき人の眼で魔王を見よ』と」

    「はあ……」

     フィロンは、そうなっても事態がよく飲み込めなかった。

    「その人を探すんですか?」

    「その人はもう見つかっています。あなたです。あなたは、この神殿に仕え、この街に住むものの中で、もっとも常識人です。剣もできず、魔法も使えず、聖なる力も盗賊たちの技能ともまったく縁がありませんが、あなたには健全な常識と、それでいて集団の狂信に惑わされない良識とがあります。あなたの常識と良識のほかに、わたしたちには頼るものがなにもないのです」

    「は……はあ」

     フィロンは断る方法を探したが、巫女様を翻意させることはできそうにないことがわかっただけだった。

    「わかったようですね」

     巫女はほっと力を抜いて微笑むと、フィロンに命じた。

    「旅の道具はすべてそろっています。受け取ったらすぐに行きなさい」

    「すぐにって……どこへ?」

    「足の向くまま気の向くまま……あなたの良識と常識が導くままです」

    「いいんですか? ぼく、なにもできないと思うんですけど」

    「それならばそれでかまいません。いいですか、この言葉は神からの啓示です。あなたは行かなければなりません」

    「はあ……」

    「しっかり返事なさい!」

    「は、はい!」

     あまりのことに頭がぼおっとしているフィロンが部屋を下がるのを見送ったヴィエラは、ひとりでそっとつぶやいた。

    「フィロン、あなたは半信半疑、いや、ほとんど信じていないでしょうけれど、あなたの常識と良識、もっといってしまえば『知恵』は、わたしたち人間にとっての、『最後の希望』でもあるのです。頼みましたよ、フィロン……」

     『黄金の巫女』ヴィエラが天に召されたのはそれから七日後のことだった。旅に出て、船上の人となったフィロンには、巫女なき今、自分がなにをすればいいのかすらわからなかった。

     船は進む……。
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    ~ Comment ~

    Re: ねみさん

    なんかわたしのほうが盛り上がっちゃって(^^)

    ミズマ。さんにはいい迷惑かもしれません(^^;)

    うぉぉ。
    なんかすごいことになってるではないですか。

    凄まじい

    Re: ミズマ。さん

    ローグくんが「荒む」なんて書いてなかったらわたしも返球しなかったかもしれません。あんな純朴な子がどうして道を踏み外してしまったんだ、と(^^;)

    フィロンくんの語源は、「フィロソファー」です。光の剣による暴力ではなく、「知恵」でなんとかしないと魔王はどうにもならないんじゃないかと思いましたので……。

    わたしにはわたしでエンディングのビジョンがないこともないんですが、ミズマ。さんのビジョンが知りたいので口には出さず(笑)

    健闘を祈る(なんて無責任なー!!(^^;))

    NoTitle

    バックハンドきたーッΣ(゚∀゚*)

    拙いレシーブに対する返球、ありがとうございました<(_ _*)>
    ……が、これを更に返球せにゃならないですよね、私。
    いままさにフィロンくんと同じような心境なのですが^^;

    ヴィエラちゃんの
    >「女性は、三十からは歳を取らないものと相場が決まっています」
    は至言ですね。真理です。えぇ、真理ですともッ!
    しかし、立派になりましたね、この子。いい歳の取り方をしたのだろーなぁ、と思いました。ローグくんは…荒んじゃったなぁ。うん、「荒む」って言ったのは私なんですけれどね。

    「この続きはどうなるんだ!」と、ページをめくりたくなるようなお話ありがとうございました<(_ _*)>
    フィロンくんが大活躍するような続きを私が思いつけるように、ポールさんも祈ってて下さい←
    いまんとこ、彼は船の上でゲーゲー吐いてますけどね^^;
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