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    趣喜堂茶事奇譚(うんちく小説シリーズ)

    趣喜堂茶事奇譚/セブン・カード・スタッド(その1)

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     ぼくは手に汗をにじませながらバイシクル(世界でいちばん有名なトランプのメーカーだ)のカードを握っていた。

     場には何枚ものカードが出ている。

    「ベット」

     ぼくは三十ドルのチップを押し出した。

     サングラスの男、馬庭さんはぼくの顔色と場の札を見た。

    「コール」

     馬庭さんはぼくと同額を積んだ。

     井森が、ごくりと唾を飲み込んだ。

     ショウダウン……勝負のときだ。

     そもそもこんな事態になったわけは……。



     ……………………



     とある週末、ぼくと井森が、いつものように、大学の帰りに本なり漫画なりを読みながら軽くなにかつまもうと(井森にはほかの理由もあったようだが)趣喜堂の扉を開けようとしたとき、タイミングよく中から舞ちゃんが出てきた。

     手には、「CLOSED」の札が。

    「あれ、今日、休みなんですか。てっきり毎日営業だと」

     ぼくがいうと、舞ちゃんはにっこりと笑った。

    「いえ、今日は、ちょっと濃い面々が揃った集まりになりますので、なじみでないかたをお断りするために、この札を掛けようとしていたんですよ」

    「濃い面々? どんな濃い面々が来るんです? よほどの読書家ですか?」

    「いいえ」

     舞ちゃんは首を振った。

    「あなたと井森さんなら、入ってもいいでしょうね。実は、今日は、ゲーム大会をするんですよ」

    「ゲーム大会?」

     ぼくと井森は、すっとんきょうな声を上げた。

    「ちょっとここではなんですから、中にお入りください」

     ぼくと井森は、うながされるままに『趣喜堂』の中に入っていった。

     表の扉に、「CLOSED」の札をかけた舞ちゃんは、ぼくたちをいつものテーブルに案内した。

     ぼくは目を見張った。いつものゲームテーブルの、天板が取り替えられていたのだ。

    「おい、なんだっけ、これ? 前になにか映画で見たような気がするけど……」

     ぼくはいった。

    「ポーカーテーブルだよ」

     それはたしかに、ポーカーをやるためのテーブルだった。

    「ってことは」

     ぼくはにこにこしている舞ちゃんを見た。

    「今日は、ポーカー大会をするんですか?」

    「ええ」

     舞ちゃんは、ちょっと見るものをぞくっとさせるような凄みを帯びた笑みを浮かべた。

    「ポーカーの真剣勝負を」

    「ダメですよ」

     ぼくは首をぶるんぶるんと振った。

    「日本の法律では、賭博は罪に当たることくらい、浮世に縁がなさそうなツイスト博士でも知っていることでしょう。そんなことをしたら、手が後ろに回ってしまう」

    「でも、あなたたちはわたしの話を聞いてしまった……」

     と、さらに凄みのある笑みを浮かべたあとで、舞ちゃんは、あはは、と笑った。

    「お金なんか賭けませんよ。わたしが、この喫茶店の軽食の新メニューを考えたので、それを食べる権利を巡っての勝負です」

    「なんだびっくりした」

     ぼくが胸を撫で下ろすと、隣で黙っていた井森が鼻息を荒くした。

    「と、いうことは、舞ちゃんの初めてのメニューを率先して食べることができるんですか!」

    「勝ったらですけど」

     舞ちゃんは少し気おされたようだった。

    「おい、やろうぜ、やろうぜ。ポーカーって、面白いゲームなんだろう?」

    「面白いゲームだけど」

     ぼくは舞ちゃんに尋ねた。

    「ポーカーの種目はなんです? 普通にドローポーカーですか? それともスタッドポーカー?」

    「もちろんスタッドですよ。セブンカードスタッド。ハイローはなしです」

    「セブンカードか」

     ぼくと舞ちゃんの顔を交互に見ていた井森が、困惑したような声でいった。

    「さっきから、何語で話しているのかよくわからないんだが。ポーカーって、あれだろ、五枚のトランプで高い手を作ったやつが勝ちなんだろ。ドローとかスタッドって、なんなんだ?」

     やれやれ。

    「そこから説明しなくちゃならんのか」

     ぼくはため息をついた。

    (この項続く)
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    ~ Comment ~

    Re: ねみさん

    楽しいんですけどねカードゲーム。

    趣味丸出し企画なのでどうか呆れずにおつきあいを(^^;)

    NoTitle

    説明お願いします。
    カードゲーム含めまったくこういうの分からないんです。

    ホント、勉強になります。
    ポール兄ちゃんさすがです。

    Re: ぴゆうさん

    明日はめちゃくちゃ暑くなるそうですから豆はもっと元気になるでしょうな。

    人間様はへろへろだけど。

    とほほ(^^;)

    NoTitle

    こんびんはー

    今日はダレダレでお疲れでごザーール。
    晴れたから豆ーーズは元気になった。
    たくましいのぉ。

    でかけるのけ?
    気をつけてな。

    Re: limeさん

    その基本戦術とルールについては、明日の予定更新で!

    それじゃ明日の用意をしなくてはいけないのでこれで!(^^)

    NoTitle

    ポーカーって・・・私も井森君と同じ、あれしか知りません。
    井森君といっしょなんて・・・・。

    あのポーカーって、「運」以外に、何の策略がありえるんだろう・・とか思ってる、無知な私に、いろいろ教えてください。
    (だって、・・・チェンジする枚数決めるしか、手出しできないのになあ)

    でも、カードゲームは、負けると悔しいので、あまりやりません^^
    末っ子は負けず嫌いの我がままなのだ!

    お出かけですか? 
    いってらっしゃーい^^

    覚え書き

    明日から二日ほど留守にします。

    「こんな日本じゃマイナーな趣味を得々と語るんじゃないっ!」

    などというお怒りのお言葉に対するお返事は、また帰ってきてからということで……(^^;)

    覚え書き

    実際にカジノに行ったわけではないので、今回の小説の内容は、昔、トランプの教本を頼りに友人とゲームをしたときの印象で書いています。

    そんなわけで、記述にミスがあったらごめんなさい(汗)
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