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    ささげもの

    黄輪さんお返し趣喜堂!(その4)

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    趣喜堂茶事奇譚・特別編/山猫の夏(その4)

    「うーん、たしかにここらへんやったんやけどなー」

     双月世界でも一二を争う大都市、ゴールドコースト市の裏道で、名高い虎獣人の女格闘家であるシリン・ミーシャは二日酔いに痛む頭を抱えながらその店を探していた。横には狐獣人の娘が、シリンとは別な意味で頭を抱えていた。

    「ここまで探して見つからないんですから、あきらめたほうがいいんじゃないですか、ミーシャさん」

    「せやけど、うち、そこに財布忘れてしもたんや」

    「全財産じゃなかったんでしょ?」

    「全財産やったらうち、日干しになってまうわ。なあ、フォルナはん、あんたの知恵が頼りなんや」

     狐獣人の娘、フォルナ・グラネルはため息をついた。

    「いくら入っていたんです」

    「二千クラム金貨が六枚や。合わせて一万二千クラム。いざというときの備えやったんやけどなあ」

    「いざというときじゃないですか。酒場で寝るなんて」

    「いけずいわんといてえな。そんなに飲んだわけやないで」

    「そうとは思えないんですけどねえ……」

     フォルナは、シリンの身体から立ち上ってくる、酒のにおいに顔をしかめた。

    「で、どんな酒を飲んだんですか?」

    「それがわからんのや。あんな酒も食いもんもこれまで見たことないねん。あの飲み屋、うちの言葉が通じんかったから、そうとうな田舎者の集まる飲み屋やな。そこで初めて飲んだんやが……それが、酒も食いもんもめちゃめちゃいけるねん。しかも酒はきりっと冷えとったしな」

    「言葉が通じない人間が、このゴールドコーストで店なんか出せるわけないでしょ」

    「それもそうやけど、あいつら短耳や。うちが初めて見るような服着てたから、絶対どこかの少数民族やと思うんやけど」

    「で、どれだけ飲んだんです」

    「おなかががぼがぼになるまでや。いや、うまかったで。フォルナはんにも、飲ましてやりたかったなあ」

    「店の名前さえわかればなんとかなるかもしれませんけれど……」

    「ごめん。うち、難しい字はよおわからん」

    「なにか、ほかに、手がかりはないんですか」

    「たしか、なんか、口々に、『ヤマネコ』いう言葉を使うとったな」

    「どんな意味でしょう」

    「うちが知るかいな」

    「だったら、私も知りません」

    「そないなこといわんといてえな。酒代に一万二千クラムは払いすぎやろ、どう考えても。ああ、サービスのええ店やったから、ひいきにしよ、思うてたんやがなあ」

    「あきらめたほうがいいですね」

    「今度の試合で稼ぐしかなさそうや。フォルナはん。それまでの間、なんぼか貸してえな。頼むわ。拝むわ……」

    「やっぱり全財産じゃないですか」

    「いけずぅ……」



     ……………………



     この双月世界の住人がいくら探しても、ふたつの世界が時空を超えて離れている以上、店が見つかるわけがないのであった。

     唯一の救いは……支払いの残金の金貨は『趣喜堂』に「忘れ物」として大事に保管されていることだろう。

     がんばれシリン。

     飲み歩いていれば、いつかきっと見つかるぞ(本当か?)

    (この項終わり)



    ※ ※ ※ ※ ※



     黄輪さんの「双月世界」を舞台として繰り広げられるファンタジー小説、「蒼天剣」から、シリン・ミーシャ嬢をゲストに迎えての「趣喜堂」特別編でありました。

     いただいたショートショートでは、範子と文子が普通に日本語で話してましたが、あれは「範子と文子」だからできたのである、と解釈、こちらでは日本語が通じないことにしました。

     それでもこだわりたいかたは、「趣喜堂」の世界と「双月世界」との間には認識に対する一種のバリアーのようなものがあったと考えてください……って、考えすぎか。

     これを書いている時点では「蒼天剣」第六部の途中までしか読んでないのでわからないのですが、まさか悲劇的な最期とか遂げたりしないよなこの娘……。
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    ~ Comment ~

    Re: limeさん

    そういやそろそろ15000ヒットか……。

    いかん自重しろわたし。それは悪魔のささやきだぞ(笑)。

    でもなあ……。

    というわけでまたやりますキリ番。自分の首を絞めることになるだけかも知れないけど(^^;)

    Re: 黄輪さん

    いや、誰とはいえないけれど某W君のこともあるから、うかつに99.9パーセントは鵜呑みにできない(笑)

    まあそれは冗談としても、マジで「山猫の夏」は日本語で書かれた最も面白い冒険小説のひとつです。えっちな描写がけっこうあることは事実ですが、読み逃すには惜しい作品です。主人公の山猫は、往年の三船敏郎に演じさせたいくらいワイルドでかっこいい男です。機会があったらぜひどうぞ(^^)

    もしシリンちゃんがシリーズ終了まで生き延びたら、またなにかの機会に趣喜堂に逆襲を果たすかもしれません。今度はモールさんか誰か、魔術の達人について来てもらい、言語通訳の魔法でコミュニケートを取れるようにするとか(笑)。

    その前に『蒼天剣』だけでも読み終えなくてはならないのですけど(^^;) 大長編ですねあれ。

    NoTitle

    なるほど、こういうふうに、絶対絡むはずのない人物たちを絡ませるとは。
    あの虎女が黄輪さんのところの・・・。
    小説や小道具や趣喜堂の人たちを上手く使ってますよね。
    たとえ小説や、それぞれの話を深く知ってなくても、楽しめますね、これは。

    ポールさんはコラボものを書かせたらぴか一ですね。
    ううむ。いいな。
    私もまた切り番かなんか踏んで、コラボってもらおう!

    NoTitle

    ポールさん、ありがとうございました(*´∀`)
    シリンとフォルナの登用、感激です。

    「山猫の夏」、あらすじを聞いてもしや……、と思いましたが、やはりそうでしたか。
    一度読んでみたいですね、そちらも。
    「趣喜堂」の話は色々コアな小説やマンガ、ゲームの話、
    そしてそれが分かる人たちが出てくるので、
    いつもニヤニヤして読んでます。
    残念ながら、今のところ聞いたことのないものばかりですが。

    ちなみに範子ちゃんと文子ちゃんが来た際ですが。
    厳密に考えると、ゴールドコーストの人たちと会話してません。
    多分晴奈も、「何かわけの分からぬ言葉をわめいているが、
    色紙と筆を持っているから、署名がほしいのだろうな」
    と判断したのかも。

    シリンの今後ですが、大丈夫とだけ。
    シリンの生存率は、ハリウッド映画における面白黒人並です。
    99.9%死にません。大ケガはしますが。

    しかし、ピンガをほぼ2ダース飲み干すとは。
    吐息に火を近づけたら爆発しちゃいそうですね、シリン。
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