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    ささげもの

    卯月朔さん挑戦返答!!

     ←青色の悪夢 →逆の感想を持つ人もいるかもしれないが
     卯月朔さんが、そのブログ「レディ・マーガレットとダンスにお茶を。」で、読者に対する挑戦としか思えない企画をやっていた。

     わたしは挑戦されたら受けるクチである。

     かくして手袋は投げ返された。

     以下どーん。



     ※ ※ ※ ※ ※




    そのむかし――。


     そのむかし、レジェンバラの北に竜がおりました。年経た竜でございます。渓谷の深い谷底に棲んでおりまして、あのあたりの者どもには飢餓の王と呼ばれてございましたとか。そのように聞き及んでおりますが、由来からすると、もとはちがう呼び名であったのかもしれません。ある年の飢饉の折、レジェンバラの領主が民の困窮を救わんと竜に嘆願いたしまして、竜はその願うところを叶え、レジェンバラの畑という畑、森という森を豊かに実らせ、家畜はもとより、空を飛ぶもの、地を駆るもの、水をゆくものをことごとく肥え太らせてやりましたので、飢饉を救った飢餓の王と、このように呼ばれたのだそうでございます。なにやらちぐはぐでございましょう?

     ともあれ、他によい呼び名もございませんので、この竜は飢餓の王と呼ぶことにいたしまして、なにを語ろうかといえば、レジェンバラの飢饉から十年ほど経った頃の話でございます。飢餓の王はあいかわらず年経て老いた竜でございました。古今、竜という生き物は己がねぐらに財宝を溜めこんでいるものと決まっております。飢餓の王も例にもれず、谷底のねぐらに莫大な財宝を貯えておりました。金貨に、宝石、うつくしい衣裳、彫刻など。なかでも、かの竜がとりわけ愛した宝物は、生身の乙女でございました。

     この乙女は誰あろう、レジェンバラ領主の末娘でございます。

     いえいえ、誤解なさってはなりません。飢餓の王は乙女を食おうなどとはかけらも考えたことはなく、乙女も飢餓の王のことを慕っておりました。竜と乙女は詩や哲学を語り合い、夜は竜の身体に守られるようにして乙女は眠りにつくのでした。領主はといえば、ほかに娘もいたことであるし、末娘のことは、修道院にやったもの、と思うことにしておりました。

     さて、ある夜のこと。竜のねぐらに、盗賊が入りました。盗賊は、大胆にして不敵な男ではありましたが、盗賊の持つべき細心さというものは持ち合わせておりませんでした。盗賊は、目の前にある宝に目がくらんだのか、立ててはいけないところで足音を立ててしまい、目を覚ました乙女と顔を突き合わせてしまいました。

     無論のこと、乙女は絹を引き裂くような叫び声を上げ、齢を経たとはいってもまだまだ強靭な力を持っていた竜も目を覚まして激怒しました。

     幸運にもというか不運にもというか、盗賊は人並みはずれた足を持っていたため、竜の吐く炎を避けて、雲を霞と逃げ去ってしまいました。そのときに盗賊がどんな捨て台詞を吐いたのか、それとも恐怖のあまり小便を漏らしながら逃げたのかについては、残念ながら伝わっておりません。

     それで、またなにごともない毎日が来るものだと、竜も乙女もレジェンバラの人々も思っておりました。人々は間抜けな盗賊を下品な冗談の種にしたものの、それ以上のことはなにも起こるはずはありませんでした。

     しかし、誰も考えもしておりませんでしたが、事態は、滑稽ではあるものの、深刻なことになりつつあったのです。

     盗賊が次に狙ったのは、遠方にある大きな帝国の宮廷でした。そこの宝物庫には、想像を絶するほどの宝物が貯めこまれているという噂があったからです。

     噂は本当でした。しかし、盗賊にはこの前のような幸運はありませんでした。巧緻を尽くした数々の罠と、次々と押し寄せる衛兵の前に、盗賊は生け捕りにされてしまったのです。

     若き皇帝は面白がって盗賊を尋問しました。盗賊は、命惜しさに、聞かれたことはぺらぺらと答えました。その中には、レジェンバラのことも混じっていました。富んだ国土のこと、老いた竜のこと、その貯めこんだ莫大な財宝のこと、そして竜に守られる、それはそれは美しい乙女のこと……。

     皇帝は興味をそそられました。これまで気にも留めていなかったレジェンバラなる地方について噂を聞いてみると、旅人たちは口々にその肥沃な国土と老いたる竜と、忍び込んだ間抜けな盗賊についての下品な冗談をしゃべりました。

     皇帝は残酷で、私利私欲を満たすためにはなんでもする男でしたが、果断で、天地開闢以来という卓越した戦術家でした。皇帝は軍隊に動員をかけ、大規模な侵略軍を組織しました。目的は、レジェンバラを含む辺境諸国の征服ということになっていましたが、皇帝を知るものは、その興味が竜を狩ることと、財宝を得ることと、そしてその絶世の美女と聞いた娘の顔を見、気に入ったら側室にしてしまおうということに向けられていることのみに絞られていることに気づいていました。

     辺境諸国は大混乱に陥りました。ある国は無血の降伏を選び、またある国は徹底抗戦を主張しました。レジェンバラは抗戦派でした。竜に対する恩義もありましたが、もし皇帝が竜を殺した場合、深刻な飢饉に陥り、国は荒れ地と化してしまうだろうことは火を見るより明らかだったからです。それに、竜が味方についた軍隊に、皇帝といえども人間の軍隊がなにができるでしょう。

     辺境諸国連合軍と、帝国軍との間の戦闘が始まるときが来ました。竜もまた、辺境諸国軍の重要な戦力のひとつとしてその一翼に加わっていました。

     帝国軍の先鋒が、楔形の陣形をとって諸国軍の前に進んできます。それに対して、諸国軍は横に広がり、包囲攻撃を狙いました。

     諸国軍の作戦は、図に当たりました。三方から包囲され、竜の炎の一撃を食らった帝国軍は、陣形を乱すと、ばらばらになって逃げ出し始めました。

     諸国軍は、勝ちどきを上げて、帝国軍の追撃に移りました。竜は、不埒なやからを一掃でもしようかというように悠々と飛んでは、炎を吐いて死体の山を築いていきました。

     帝国軍の残党は、森の中に逃げ込みました。追っていった竜の前に現われたのは……巨大な石弓でした。弩砲です。そしてその矢の先端には、帝国軍の宝物庫でも最大の価値のもの……『竜殺しの槍』がくくりつけられていたのでした。

     弩砲がひょうと放たれ、竜めがけてまっしぐらに飛んでいきました。竜は身をひねり、なんとか急所ははずしたものの、飛ぶのがやっとという瀕死の重傷を負ってしまいました。

     事態の思わぬ展開にとまどう諸国軍の前に、森の中に隠されていた、帝国軍の本隊である精鋭部隊が姿を現しました。皇帝は、竜を単独でここまで誘き寄せるために、わざと先鋒の部隊を逃げ惑わせたのです。

     竜が傷ついたことで、諸国軍の士気は大きく落ち込みました。そこへ、先鋒の敵討ちとばかりに、帝国の精鋭部隊が一丸となって突撃を敢行したのですから、たまりません。深追いをしていた諸国軍は、四分五裂して、文字通りに一蹴されてしまいました。レジェンバラ領主を含む、数多の貴族が死にました。

     竜はよろよろと飛びながら、自分のねぐらを目指しました。傷つき、血は滝のように流れ、『竜殺しの槍』の毒は身体をじわじわと蝕んできます。

     やがて、竜は蒼ざめて言葉もない、乙女のそばに舞い降りました。そのそばには、万一のときに備えて、このねぐらに身を隠していた、高貴なものから民衆に至るまでの女たちが控えていました。

    『わたしは死ぬ……この土地は荒れ、生けとし生けるものは皆死ぬ……最後の竜はその血を絶やし、人間の時代がやってくるのだ……すまぬ、もうなにも、そなたに授けられるものはない……』

    『心残りがございます』

     乙女は竜のうろこをなでながら、涙を流していいました。

    『わたくしは、あのような無法な皇帝のものになるくらいなら、この場であなた様と死ぬことを選びましょう。しかし、わたくしは……ああわたくしは、あなた様が望んでも与えられないものが欲しくてたまらなかったのです……わたくしは、子供が欲しかったのです』

    『死んでくれるというのか、このわたしと』

     竜は絶え絶えになりつつある息の下からいいました。

    『女たちは逃げよ。ここは宝物とともに炎に包まれる。そして、何年か、何十年か……』

     竜は目を閉じました。乙女は涙を流しながらも、女たちに告げました。

    『あなたたちは逃げなさい。わたしは自分のしなければならないことをします』

     その言葉に、わけもわからず女たちは竜のねぐらを逃げ出しました。最後の一人が這い出したときに、大きな爆発音がしたかと思うと、つい先ほどまで竜のねぐらだった谷底の洞窟は、無数の岩でつぶれていました。

     女たちがはっと気がつくと、うっそうと茂っていた森は枯れ木の林と化し、草原は砂だらけの荒れ地に、鳥や動物や魚は死体へと変わっていました。

     その、今や征服する価値もなくなった荒れ地を前にした皇帝は、竜のねぐらといわれていた谷底に兵士たちをやらせ、うず高く積み上がった岩をどけて、その底にある、竜の死体や宝物を探し出そうとしましたが、それは人間の力の及ぶところではありませんでした。

     時が流れ、いくつもの年月が過ぎ、皇帝も死に、この土地がかつてレジェンバラと呼ばれていたことすらも忘れられていったある日のこと、奇妙な服を着た若い娘と青年とが谷底から登ってくる道を歩いてきたのを、村人が見つけました。

    「どこから来なさったのかね」

    「過去からさ」

     青年は答えました。

     村人は目をぱちくりさせました。

    「どこへ行きなさるのかね」

    「未来へよ」

     娘は答えました。

    「見ないなりだが、どこの人なのかね」

     二人は声を揃えて叫びました。

    「レジェンバラ!」

     これが、われわれの暮らすレジェンバラ千年帝国の始祖、「竜鱗帝」とそのお后について、われわれが知っていることの全てでございます。爾来続いている平和については、今さらながらことさらに述べることもあるまいかと存じます……。




    ※ ※ ※ ※ ※



    「わたしが考えていた展開と違う!」とかいわれても、こっちは一切関知しませんのでそのつもりで(^^)
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    ~ Comment ~

    Re: 卯月 朔さん

    どうぞどうぞお持ちください(^^)

    もともと半分は卯月朔さんのものですし(^^)

    齢を重ねて人に恵みをもたらす竜が清らかな乙女を食らうはずがない、というのがわたしの勝手な思いでした。むしろ、老竜にとって、種族も違えば年齢も違う若い娘は、われわれにとっての、「ペット」みたいなものではないかと。わたしもmixiのアプリでふにゃもらけなる異星人を飼っておりますが、頭の悪いパソコンソフトなのにかわいいですもんね。それと同様かと(笑)

    盗賊は昔から頭が悪くて自信過剰と相場が(笑)。そうでもなければ盗賊なんかになるわけがない(^^;)

    皇帝陛下がカッコイイというのは……うーむ……たしかに、イメージとしてはルドルフ・フォン・ゴールデンバウムの性格をしたラインハルトですけど。よく考えるとこいつ、これまで設定した中でも最悪の人間だなあ(笑)。えーと卯月朔さんは金と権力と暴力に弱い、と。φ(。。 )メモメモ

    最後のふたりは、いったい誰なんでしょうね。わたしのイメージとしては、竜と乙女の生まれ変わりなんですけどね。竜の宝の中に、そのような、クローンを作れる卵のようなマジックアイテムがあった、みたいな感じで。(ファンタジーに理屈を持ってくるのはどうかであるけど……)

    卯月朔さんの考えていた本来のストーリーも読みたいですので、ぜひどうか、書けるときがきたらお書きいただけると嬉しいです。このままではわたし小説の簒奪者だ(笑)。

    わたしはいつでもどこでも誰の挑戦でも受ける! 書きあがるのはいつになるかわからないけど!(じゃダメじゃん)

    NoTitle

    うわあこれもう本当に卯月がつづきを書く必要なんか寸分もない気がする……っ!! というのが、読後、しょっぱなの感想でした。

    竜と乙女が、詩や哲学を語りあうとか! まぬけな泥棒とか! 人間性はどうだろうって感じだけど天才的な皇帝とかっ!! うわあああ皇帝陛下カッコイイ(*ノωノ) でもお近づきにはなりたいくない!←

    そして、卯月はたとえば青年が老人でも全然OKです。年の差萌えbbb(←自重。

    ミズマ。さまもおっしゃってますが、ラストの締めで救われました。悲恋もいいけれど。幸福感がただよってるほうが、やっぱり、心に優しいです。

    卯月のゆるい企画を受けてたってくださってありがとうございます! 卯月も一念発起してつづきを書きたく、なった、のですが……卯月がレシーブした手袋は、自分の足元にへにゃっと落ちそうなので、どうしようかと;;;(ここで思考が最初の感想に戻る、と。)

    もし、よろしければなのですが……この素敵お話を、卯月んチに持ち帰らせていただいてもOKでしょうか!? お嫌でしたら、せめてリンクを貼らせていただきたく。よろしくお願いしますっ<(_ _*)>

    Re: ミズマ。さん

    お褒めいただいてありがとうございます。

    うーむ、勝手なこと書いて、卯月朔さんに怒られてしまうのではないかと戦々恐々でしたが、ミズマ。さんが喜んでくれたということは、卯月朔さんもそれなりに喜んでくれるのはと思っております。

    個人的には、わたしのこの手袋に、卯月朔さんが反応してくれて、「この生意気なポール・ブリッツとかいうやつをねじ伏せてくれるっ!」と、もっと面白い続きを書いてくれるといちばん嬉しいのですが、あまり調子に乗って書くと矢端想さんあたりから「コワいです……」などといわれてしまうので自重いたします(どこが自重だ(笑))

    まあ童話的語り口については、「探偵エドさん」と「昔話シリーズ」で練習していたというのもありますが。

    それにしても、卯月朔さんが考えていた「ラストまでの展開」って、どんなものだったんだろう……。

    ……卯月さまより先にコメント残すのは僭越ですが……。



    大変素晴らしいのではないでしょうかッ!щ(゜▽゜щ)
    最初、卯月さまが書かれた前の部分とポールさまが書かれた部分の区別がつきませんでした。
    するりと卯月さまが作られた童話説話的な世界観にするりと入られるあたり、さすがだなぁ、と。
    やっぱり強欲な皇帝は出てこないといかんですよねー。『竜殺し』も出さないとですよねー。

    悲しいラストと見せかけて、最後の青年と少女が嬉しいですね。
    青年が老人じゃなくって良かったなぁ、と思いました。←

    さて、私もポールさんから叩きつけられてる手袋をどうにかしないとなぁ^^;
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