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    ささげもの

    美姫の勇者

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    「いやあしかし、噂で聞くのと目で見るのとではまったく違うなあ」

     フィロンは何度目かわからぬ感嘆の言葉を述べた。目の前にいる『勇者』は、くすりと笑った。

    「殿方って、みなそうおっしゃいますのね」

     きれいな神聖語だった。フィロンも神殿で神聖語を初等から学んできたが、ここまで美しく発音することはできなかった。

     外の強い日光を避けたこの石造りの宮殿で、正装らしく踊りの衣装を身にまとった、勇者にして神に仕える踊り手、ターヘレは微笑んだ。花が咲いたかのような感じをフィロンは受けた。

    「で、そちらの黒猫さんは」

     微笑みを崩さないまま、視線だけを氷のような冷たさに変え、ターヘレはオンブルを見た。

    「あ、ぼくにくっついている魔物です。オンブルっていいます。ヴィエラ様の命を受けてからというもの、しつこくくっついて離れないんです。殺すことも追い払うこともできないし、ほっといているんですが」

    「殺しますか?」

     ターヘレは微笑みを崩さずにいった。フィロンは頭をかいた。

    「殺しても別にかまわないんですが、特になにをしでかすわけでもなし、そこまでする必要もないんじゃないかと」

    「そんな考えでいると、この猫にわたしたちは殺されるかもしれませんよ」

    「この猫に殺されるくらいの力しかないなら、どのみち魔王と対面したときには、ぼくたちふたりとも殺されるので……」

    「ぼくたち?」

    「ああ、いってませんでしたっけ。ぼくは、ヴィエラ様から、この目で魔王を見て来いという遺命を受けているんです」

    「ヴィエラ様から?」

    「ヴィエラ様も、なんでぼくなんかをこんな旅にやったんでしょうねえ。伝記でも書かせるつもりなのかなあ」

     フィロンの、あまりにものんびりとした調子に、ターヘレはちょっとくらっとしたようだった。

    「面白いおかたですのね」

    「ぼくがですか? オンブルがですか?」

    「あなたです。魔王の手先をおかたなどとは呼びません」

    「そりゃどうも!」

     オンブルは敵意丸出しで叫ぶと、嫌味たっぷりに「ニャー」と鳴いた。

    「で、魔王の居場所について、なにか手がかりは?」

     ターヘレは勢い込んで聞いてきた。

    「なにもありません」

    「えっ! でも、ヴィエラ様のお手紙には……」

    「ヴィエラ様はそこまで書いておられませんよ、まあ、だいいち、ぼくもまったく五里霧中でして」

    「そんな……そんな……」

    「そこなんですがね」

     フィロンは、いつもののんびりした声でいった。

    「オンブルを殺すなといったのはほかにもわけがあるんです」

    「え?」

    「ニャ?」

     ふたり、いや、ひとりと一匹は、同時に理解した。

     オンブルが逃げ出すよりも、ターヘレが光の剣を構えるほうが早かった。

    「ぼくとしてはあまりことを荒立てるのは嫌いなんですが、常識的に考えて、情報源はあるうちに活用したほうが……」

     フィロンはのんびりといった。



    ※ ※ ※ ※ ※


     スマッシュとみせかけてのロブです。どうか打ち返してみてください。

     どんな返球が来るか楽しみ(^^)

     こっちでバシバシ打ってしまってもいいのですが(笑)
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    ~ Comment ~

    Re: ミズマ。さん

    そんなこといわれるとやりたくなってしまう悲しい小説ホリックであった(^^;)

    というわけで、短期集中連載いきます。

    どこまでいくかはわかりませんが……。

    その前に休んでいた間の訪問者まわりと、あめふらし先生の絵をUPしなければ! うむむむ。

    当分こっちにとりかかれそうにないので、母屋を乗っ取られても全く支障がなかったりして^^;

    むしろ、のし付けてお任せしてしまおうかしら、なんて……。

    Re: ミズマ。さん

    たいへんでしたらこっちでさらにバシバシ書いてもいいのですが。

    あまりやりすぎると、「軒を借りて母屋を乗っ取る」みたいになってしまうのでここらへんでとどめとくのがいいかなあ、と……(汗)

    明日の更新のネタがなくて、今日はこれから夜まで外出なので、ネタがないならさらに母屋の座敷に上がりこんでしまえ、という悪魔のささやきが(^^;)

    それにしても、「哲学者」というのには憧れますねえ……。夢想的でいて現実的、一見なんの役にもたたないことを考えているようでいて、それでいてずばりと物事の真実を見抜く。

    もしかしたらわたし、「哲学者」じゃなくて「名探偵」が好きなのかもしれない(笑)

    ここで終わりで『続きはよろしく』って……
    かなりヒドいやいや、なんでもないです、なんでも。

    新勇者さまは月光に咲く一輪の花、みたいな雰囲気がありますね。や、べつに某ニチアサスーパーヒーロータイムは関係ないですが。ん、それより色反転したリズムさんに近いかな。
    融通がききそうにない気がしますね。頑固っぽそう。
    ターヘレちゃんは可憐ですが余裕がなさそうですね。
    そーゆう子を見ると、オンブルちゃんでからかいたくなりますが……下手すると斬られるしなぁ^^;
    そしてフィロンくん。……げ、現実的ッ!まずい、カッコイイ!←

    ターヘレちゃんが茨道を突っ走り、フィロンくんが迂回路に誘導し、それをオンブルちゃんが嘲り笑う。
    そんな三人、もとい二人と一匹なんでしょうかね。

    ……とか、悠長に構えてらんないなぁ。この後考えねば^^;
    いっそまた、『一方そのころ…』にしてしまおうかなぁ←


    まあとりあえず、ニャーってかわいいよ、オンブルちゃん(*^^*)
    猫のオンブルちゃんが大活躍するような返球ができればな、と思います(*^^*)
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