FC2ブログ

    ささげもの

    短期集中連載企画:選ばれなかったものの英雄譚4

     ←ケータイメール →短期集中連載企画:選ばれなかったものの英雄譚5
     「だから8割ウソなんだってば。」のミズマ。さんが「母屋を乗っ取っていい」発言をしたので、短期間に電撃的に母屋を乗っ取ることにしました(笑)。戦争でもなんでも、電撃的に素早いことは、たいていの場合いいことだ(爆)。

     というわけで、短期集中連載企画「選ばれなかったものの英雄譚」を始めます。すでに三作書いているので、今回は第四回となります。

     結末までのストーリーは決めたので、今週中にケリをつけるぞ! そうでもしないと投稿作品が書けないぞ!

     いいのかこんなことで(^^;)

     では以下どーん。



    ※ ※ ※ ※ ※




    「道理で見つからないわけだ……」

     学者志望でありながら、常識人であるというだけで望まぬ冒険に駆りだされた司書見習いのフィロンは船べりを覗き込み、嘆息した。

    「過去の人々を責めてもしかたありません」

     神に仕える踊り手でありながら、聖なる光の剣に選ばれた勇者でもあるターヘレが、諭すようにいう。

    「しゃべったんだから早くこの鎖を解きなさいよ」

     鎖でぐるぐる巻きにされたうえに、額に護符が聖なるにかわで貼り付けられた黒猫が、不快そうにうめいた。猫の姿こそとっているが、この猫は、過去にヴィエラを欺き、魔王復活のきっかけをもたらした、魔物のオンブルなのである。

    「神呪がかけられたこの金剛鎖を使って動きを封じてなければ、お前はすぐにでも逃げ出すでしょう。あきらめてわたしたちの案内をなさい」

     ターヘレは、冷たい声でいった。

     フィロンは相変わらず、ぼんやりとした顔で、そのひとりと一匹の果てしない口げんかを聞き流していたが、

    「ターヘレさん、オンブルの鎖を解けとはいわないけれど、たぶん、鎖を解いても、オンブルは逃げ出さないと思うよ」

    「そんな筋道の通らないことがありますか!」

     ターヘレは柳眉を逆立てた。

    「いや、筋道は通っているよ。だって、現に、この鎖、オンブルを縛る役に立っていないもの」

    「なんですって!」

    「ニャ?」

     ターヘレは愕然とし、オンブルは慌てたようだった。

    「どうして、あなたはそんなことを!」

    「そ、そうニャ、こんなことされて逃げられるわけがないニャ」

     その声に、フィロンは、当たり前のように答えた。

    「結び目」

    「え?」

    「ぼくはなんとなく見ていただけだけど、きのう、おととい、さきおとといと、毎日、オンブルを縛っている鎖の結び目が明らかに違っていたんだ」

    「この鎖は、もがけばもがくほど、きつく縛るようになっているんです」

     ターヘレが叱るようにいった。

    「うん、最初はぼくもそう思った。だけど、日によって、きつくなったはずの縛りがゆるくなったり、ゆるくなったはずの縛りがきつくなったりしているのを見ると、オンブルにこの鎖をなんとかする力があるのは、常識的に考えて、疑いようがないね」

    「船員の中から見張りを……」

    「ヴィエラ様をだました魔物だもの、常識的に考えれば、見張りをだますことくらいわけないさ」

     ターヘレは青ざめた。

     フィロンはどこか、あさってのことを考えている表情で続ける。

    「それでも、ぼくやターヘレさんを含めて誰も死んでいない、ということは、オンブルにとっては、ことを荒立てたくないなにかの理由があるんだろうね」

    「理由って……」

     手を腰の光の剣に添えて、ターヘレは身構えた。その目はオンブルをひたと見つめていた。

     オンブルはというと、こちらはふてくされた顔をしていた。もう、どうにでもなれという表情だった。

    「常識的に考えると」

     フィロンはふたたび船べりから海面を見下ろした。

    「オンブルとしても、ぼくたちに魔王と会ってほしいなにかの理由があるんだろうね。別な理由も考えられるけど」

    「別な理由?」

    「偽の場所を教えて、自分ともども爆死するとか。これから行く場所は、それにはうってつけだからね」

     ターヘレは、はっという表情になった。

     フィロンは、海面を見下ろしたまま首を振った。

    「とはいえ、オンブルの利己的な性格を考えれば、ありそうもない話だ。また、ぼくたちを抹殺して自分だけ逃げるには、光の剣は強すぎる。だから、オンブルがぼくたちを例の場所に連れて行く理由は、常識的に考えれば、たったひとつ」

     フィロンは、二人乗り、おまけしてもう一匹が乗れる分厚い鋼製の球に向かって歩くと、その表面をなでた。

    「オンブルは、そのいうところの、水底深く遥か下方にあるという海底神殿までぼくたちを案内し、魔王とぼくたちが、相打ちになるのを狙っているのさ。もし、ぼくに、ヴィエラ様がおっしゃったような、魔王の正体を見抜く常識があるとしたら、ターヘレさんなら魔王を殺せるかもしれない。それで、ぼくたちが疲れきったところでぼくたちを殺せば、自分が魔王のあとがまにすわれる公算が大だ、なんて考えてるんじゃないのかな」

     オンブルは横を向いて、「ニャー」と鳴いた。図星だったらしい。

    「この猫……」

     ターヘレは剣を抜こうとした。

    「道案内を斬るのはよそうよ。神殿の中で迷子になったら、ぼく、脱出はおろか、魔王に遭える自信さえないよ。方向感覚ないからさ」

     ターヘレはぐっとこらえた。フィロンのいうとおりだったからである。

    「さて、ターヘレさん、この鋼球で海底へ行く前に、なにかおいしいものでも食べておこうよ。太陽の下での最後の食事になるかもしれないんだからさ」

     ターヘレは、オンブルに憎々しげな一瞥を送ると、フィロンの後についていった。

     オンブルは、身をひとつよじると、鎖からするりと抜け出し、二人の後を追った。

    「ちょっと。あたしにもなにか食べさせなさいよ。そうでもしないと、道を教えないわよっ!」
    関連記事
    スポンサーサイト






    もくじ  3kaku_s_L.png 風渡涼一退魔行
    もくじ  3kaku_s_L.png 鋼鉄少女伝説
    総もくじ  3kaku_s_L.png ほら吹き大探偵の冒険(児童文学)
    総もくじ  3kaku_s_L.png 夢逐人(オリジナル長編小説)
    総もくじ  3kaku_s_L.png 残念な男(二次創作シリーズ)
    総もくじ  3kaku_s_L.png ショートショート
    総もくじ  3kaku_s_L.png 紅探偵事務所事件ファイル
    総もくじ  3kaku_s_L.png 銀河農耕伝説(リレー小説)
    もくじ  3kaku_s_L.png 未分類
    もくじ  3kaku_s_L.png リンク先紹介
    もくじ  3kaku_s_L.png いただきもの
    もくじ  3kaku_s_L.png ささげもの
    もくじ  3kaku_s_L.png その他いろいろ
    もくじ  3kaku_s_L.png SF狂歌
    総もくじ  3kaku_s_L.png 剣と魔法の国の伝説
    もくじ  3kaku_s_L.png 映画の感想
    もくじ  3kaku_s_L.png 家(
    もくじ  3kaku_s_L.png 懇願
    もくじ  3kaku_s_L.png TRPG奮戦記
    もくじ  3kaku_s_L.png 焼肉屋ジョニィ
    もくじ  3kaku_s_L.png ご意見など
    もくじ  3kaku_s_L.png おすすめ小説
    もくじ  3kaku_s_L.png X氏の日常
    【ケータイメール】へ  【短期集中連載企画:選ばれなかったものの英雄譚5】へ

    ~ Comment ~

    Re: ミズマ。さん

    ひどいやミズマ。さん(笑)

    ヴィエラちゃんが荒れ地でローグくんと逢うことは、おばあさんになったベベさんが呆然とつぶやいていたように、「予言されていたことの成就」のつもりだったから、ヴィエラちゃんが神殿の警戒網を突破するのも「神託の予言だからはじめから阻止できないこと」というつもりであのショートを書いたわけであります(^^;)

    まあわたし基本的に文明社会が好きですから、神殿の人間もそこまで悪いやつらじゃないだろう、と。(笑)

    見解の相違ですね~。

    といいつつ今日はまだ更新ぶんの原稿が上がっていない(^^;)

    へろへろなもので……(^^;)

    オンブルちゃんがナミ嬢に似てるかなぁ、というのは私の心の悪女フィルターがそうさせるのです!←フォロー?
    愛嬌のある悪女、という点で似てるなぁ、と。


    ローグくんが全ての元凶ですか^^;
    彼はあの話の後、ヴィエラのいる神殿に引き取られ、武芸やら学問やらを習うんですね。でもあの神殿には立派な人材はほぼ皆無なんです。そんなひとがいたら、そもそもヴィエラちゃんが神殿抜け出して荒れ地に行ったりしませんし。
    と、いうわけで嘘と利権にまみれた神殿が嫌になってそこを飛び出したローグくんは、流れ者として世界をさすらうわけです。ヴィエラちゃんは一転、真面目に巫女として励みますが、自分のせいでローグがひとりきりになってしまったという負い目があるので、彼を避けるようになってしまっておりました。
    ひとりきりで旅を続けるうち、純真だった彼の心も荒んでいき……。

    という設定があるんですが、書くとなると長丁場になりそうなので手を出しておりません!←

    まあなんにせよ、ローグくんが荒んだお陰でフィロンくんの話が読めるのですよね♪ヽ(´▽`)/
    荒ませてよかった!(酷)

    Re: ミズマ。さん

    フィロンくんは、剣も知らなければ魔法も知らず、盗賊の技術も、心とろかす歌声も持っていないので、変に重武装しても無駄、と割り切っているのであります。彼のモットーは、「生兵法は大怪我のもと」ですから。

    しかし、そう考えると、常に死を覚悟しているわけで、けっこう大物かもしれんこいつ(笑)。

    オンブルさんがナミに見える……そ、それって、「わたしがキャラクターを書き分けられない」ということですか(^^;) 修行します修行します(^^;)

    勇者さんとフィロンくん、どっちが年上だかわかりませんなこりゃ(^^) でも負わされた責任からいえば、完全にフィロンくんのほうが気楽ですからなあ(笑)

    ローグくんが普通に勇者として魔王を討って、荒んだ生活の末相打ち、などと書かれていなければ、こんな苦労はしなかったものを(笑)。

    母屋が乗っ取られました♪ヽ(´▽`)/

    ラストダンジョンは海底ですかぁ。ちょっと予想外でした。今まで、荒れ地、洞窟、砂漠、海の上、ときてましたからね。あとは火山の火口か海底かってなもんですが。


    それにしても、鎖でぐるぐるオンブルさんがかわいいよ!彼女についてはそれしか感想を述べてない気がするなぁ^^;
    でもこのオンブルさん、なんとなく「かわいらしくなったナミ嬢」みたいだなぁ、と密かに思っているのは私だけでしょうか。外見は某プリキュアのセイレーンさんで←

    フィロンくんの名探偵振りに頼もしさを感じつつ、ゲームだったらまだレベル初期の紙装甲なのにいきなりラスボスの面前に立つ彼が心配ですが……本人は至って平気そうですね^^;
    これはフィロンくんがなにかの答えを手にしているということでしょうか。
    それに比べて勇者さまの方が緊張してそうだなぁ。彼女の舞うように剣を振るう勇姿は拝めるのでしょうか!

    ……など、母屋を乗っ取られた側はポップコーン片手に完全に観戦モードなのでした^^;
    管理者のみ表示。 | 非公開コメン卜投稿可能です。

    ~ Trackback ~

    卜ラックバックURL


    この記事にトラックバックする(FC2ブログユーザー)

    • 【ケータイメール】へ
    • 【短期集中連載企画:選ばれなかったものの英雄譚5】へ