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    「エドさんとふしぎな毎日(童話)」
    探偵エドさん(童話掌編シリーズ・完結)

    エドさん探偵物語:20 お願いだから

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    お願いだから



    「そろそろ来るころかな……」

     この街で小さな探偵事務所を開いているエドさんは、読んでいたスーパーヒーローもののコミックブックを机に置くと、壁の時計をちらりと眺めました。

     眺めたとたん、扉が素早く開き、ひとりの男が風のように入ってきました。

    「娘のことについてはなにかわかったかね」

     その男は、エドさんがさっきまで読んでいたコミックブックの主人公のヒーローと、まったく同じ顔をしていました。

     エドさんは、ファイルを開いて静かにいいました。

    「お嬢さんは、品行方正そのものですな。たしかに漫画の世界を抜け出して、こちらにちょくちょく来ていますが、その行動に、なんらも疑うところはありません。だから、安心してください。そもそもですね……」

    「じゃあ、娘はなにをしに五ヶ月もこんな人間界へ来ているというんだ。絶対、悪い仲間とつきあったりしているに違いない」

    「ですからね、お父さん……」

    「すまないが、わたしは漫画の世界に帰らなければならない。宇宙帝王ドラゴンベノムが、わたしの愛する地球を狙っているのだ。先週も、インフィニティガールの助けがなければ、わたしはやられているところだった。それにしても、インフィニティガールの正体は誰だろう?」

    「さあ。それよりもですね……」

     エドさんがいいかけるのを、男、いやヒーローはさえぎりました。

    「わかっている。報酬だな。いつものごとく口座に振り込んでおく。今度来る時までには、必ず、娘についてなにかつかんでおいてくれ。君くらいに誠実で口が堅い探偵は、なかなかこの世知辛い人間界では見つけ出せないのだ。お願いする。それでは!」

     ヒーローは来た時と同様、扉を抜けて風のように去っていきました。

     エドさんはしばらく事務所の扉を見たままぼんやりとしていましたが、やがて首を振ると、漫画の世界にもどりました。

     しばらくすると、事務所の扉にノックの音がしました。

    「どうぞ」

     エドさんが答えると、高校生くらいの女の子が入ってきました。

    「父について、なにかわかりましたか?」

    「お父さんについては、大丈夫ですよ。あなたが考えているようなことは、なにもしておりません。お父さんが人間界に来ているわけは……」

     エドさんが答えようとすると、女の子は首を振り、激しい口調でエドさんにまくしたてました。

    「五ヶ月も、定期的に人間界にやってきている以上、なんの理由もないとは思えないわよ! きっと、人間界の悪いやつらにだまされて、なにかの悪事の手伝いをさせられているに違いないわ」

    「いや、ですから……」

     女の子は立ち上がりました。

    「お父さんって来たら、しっかりしているようで、どこか抜けてるんだから。早く漫画の世界に戻って、わたしがインフィニティガールとして助けないと、お父さん、ドラゴンベノムにやられちゃうわ。やつはお父さんを罠にかけようと、手下のソーサラー博士に開発させた秘密兵器を隠しているのよ」

    「ええ、それでもですね……ひとことその……」

    「お金でしょう? わたしのお小遣いでは足りないかもしれないけれど、口座に振り込んでおいたわ。こんなお金で調査してくれる私立探偵なんて、人間界でもあなたひとりくらいよ。だからお願い、こんど来るときまでに、お父さんを狙っている悪人について、できる限り調べておいて。お願い。それじゃ!」

     女の子はいうだけいうと、扉を抜けてこれまた風のように去っていきました。

     エドさんは、かぶりを振りました。

    「やっぱり親子だねえ……」

     そのとき、電話が鳴りました。

    「はい、こちら……」

    「エドさん? ぼくだ。言われたとおり、君の事務所の前を双眼鏡で見ていたが、ほんとに、ぼくの漫画の主役ふたりじゃないか。お願いだから、なんとか会わせてくれないか。この五ヶ月、漫画がスランプ気味なんだ」

    「先生、それはいいですから、なんとか、あのふたりの、それぞれの誤解を解くようなストーリーの漫画を描いていただけませんか。もしくは、ふたりとももうちょっと人の話を聞くような性格にするとか。あのふたりからいただいたお金、今のままでは怖くて、手をつけるなんてことできませんよ。お願いします。お願いしますよ先生……」

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    ~ Comment ~

    NoTitle

    親子が似すぎていて笑ってしまいました。
    そして作者さんも性格が似ていそうな。
    間に挟まれたエドさん、大変ですね。いい人だなあ。

    Re: 風波 涼音さん

    天然ですよね~(^_^;)

    でも少し天然だからこそ、この世の中の潤滑剤になれるのではと思います。

    みんながみんな現世利益にばかり走っていたら、この世は闇です……。

    今晩は

    とってもエドさんらしいお話ですね。
    ホントに人の良い^^

    親子愛も感じられ、何処かほっこりです。
    エドさんってある意味天然なのではないかと思います^^

    Re: 西幻響子さん

    このヒーロー親娘、自分で生み出したというよりは、むしろ雨松先生の漫画に性格などの多くを負っているのですが、それにしてはよく動いてくれました。

    雨松先生の短編集出ないかな。「ヒーローの娘」、傑作なんだけどなあ……。

    ああ、またもや「にやり」とさせられました。
    いいなあ、この親子。

    西幻も漫画の登場人物を現代に出す、というネタを小説にしようかと考えたことがありましたが、こんなふうに小気味のきいたものにはならないだろう・・・ ^^;

    Re: マーサさん

    人には頼られるけど見返りは少ない(笑)

    見返りを気にするような人は人に頼られない、というのもありますけど(笑)

    ヒーローにここまで言わせるとは…!

    エドさんの人望の厚さがよくわかるお話ですねえ!
    これくらい人に頼られる人間になりたいものです。
    いや、この二人みたいな人達に頼られたら困りますけど(苦笑

    Re: ダメ子さん

    ま、まさかダメ子さん、ダメ子さんを××して(赤面)

    いかんそれは倫理的にいかんっ(何か勘違いしている)

    私のところもキャラ出て来ないものか…

    Re: fateさん

    人物が勝手に動いて勝手に話を進めてくれても、

    「ほのぼの人情童話」が「血まみれバイオレンスアクションノベル」になっては困るのであります(^^;)

    それもそれで、某「行け!! 南国アイスホッケー部」クラスにまで達してしまったらいいのですが、登場人物が中途半端に勝手なことをしだしたときのコントロールの難しさはfateさんもご存じだろうと思います(^^;)

    人物が勝手に動いてくれるなら、それを物語にしちゃえば…

    とかって、いつもfateがやっていることをぽつりと呟いてしまった。

    そんなお人好したちが戦っている相手って…

    「エドさんどこか中東アフリカその他紛争地域へ行って、なにかいってやってくださいしくしく。」

    ↑本当にその通りだす~~~

    Re: YUKAさん

    高校生の小遣い程度で雇えるくらいと思っていただければ……(^^)

    エドさん仕事えらんだほうがいいのではないかな(笑)

    こんばんは^^

    今回は、親子話^^

    本当にいい人ですね~^^
    人間界でも他にいないと言われるほどの金額ってどれだけなんだろう~~

    Re: 有村司さん

    アフタヌーンで四季賞を獲られた、雨松先生の「ヒーローの娘」という短編マンガです。

    今読むとなったら入手が難しいのではないかなあ。

    オチよりも…

    こんばんは!
    今回は、オチがどうこうより、エドさんの相変わらずの人の好さに、くすっと笑顔になりました。

    元ネタは…もしかして…(笑)

    Re: あめふらし先生

    先生に喜んでいただけて光栄です(笑)

    「ヒーローの娘」をもとにしたネタで一本ショートショートが書けたことを感謝いたしますm(_ _)m

    さて次はなにをパクるか……(おい)

    NoTitle

    エドさんに幸あれ!!!(T◇T)

    …いや、なんとも親子愛に満ちたいいお話ではありませんか!(笑
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